終わらない夏祭り③
「待っていたわ。茉莉花ちゃん。」
「貴方は……。」
桜色の長髪。鮮やかな美しい着物。そして、おでこの中央には1本の角。
まさに桜が似合う、美しい鬼だった。
「話は……後にした方がよさそうね。」
女の鬼は御堂理斗を見て言った。
「何とかなりますか!?」
「ええ。……たぶんね。呪いを解くのは得意だから。」
そう言うと、近くの桜の枝を折り、彼の近くへ寄った。
そして、前髪をあげ、マスクを取り、その枝を彼のおでこへと近づけた。
「な、なにこれ!?」
枝からメキメキと根がはえ、御堂くんの顔に寄生するように張り付いていくという、衝撃的な様子に茉莉花は汗を流した。
「この桜はね、普通の桜を私が少し改造したものなの。普通の桜は人間と同じで陽の気を循環させて生きているのだけれど、この桜は陰の気をもとに成長するの。呪いは全て陰の気の力を応用して生まれたものだから、この桜は呪いごと養分として吸収するという仕組みよ。」
確かに、枝が少しずつ成長している代わりに、彼の腫れがひいていっている気がする。
「だ、大丈夫そうか、な?」
ひとまず茉莉花は胸を撫で下ろした。
「ふふっ。ほんと鬼門院らしくないわね。」
鬼はクスクスと笑った。
「……?そうですか。」
「……あ、ごめんなさいね。自己紹介がまだだったわね。私はヤマト。アマネ様から貴方のことは聞いているわ。疑問に思っていること、なんでも聞いて。」
「それなら話は早いです。ではさっそく本題に入るんですが、……鬼門院家っていったい何なんですか。」
分からないことばっかりだけど、まずは色々な場面で名が上がる鬼門院について知っておきたい。きっと彼らは色々なことに関わっている。この前のみやびの件や、…お父さんの死についても。
「鬼門院家、……そうねぇ。まず、彼らが妖魔師の中で最強の家系であることは知っているのよね?」
「はい。」
「じゃあ、なんで最強と呼ばれると思う?」
鬼門院は陰の気を溜め込める上限が普通の人より高いし…。
「それは…他の人より強い妖怪と契約できるからですよね?」
「そう。でも、あと2つ大きな理由があるの。1つ目は陰除の印の付け外しが鬼門院にのみできるという点。」
ああ。私の身体にも元々ついていたものだ。
……天音輪道鬼に外されたけど。
「その印って、死後の妖怪化を防ぐためのものですよね。妖魔師は妖怪になりやすいから。」
「ええ。全ての妖魔師は、この印を体のどこかに刻んでいるわ。逆に言えば、この印がないと、妖魔師になる人なんていない。そして補足の説明なのだけど、この印を持つ人が子を作れば、その子にも印が表れるの。」
「なるほど。…この印の付け外しが、鬼門院にのみできる、とは?」
「鬼門院には陰除の指輪という家宝があってね、その指輪の力を使えば、陰除の印を与えることも、剥奪することも出来るわ。もちろん、鬼門院の人間しか扱えない。」
「……つまり、全ての妖魔師は鬼門院に逆らえないってことか。」
「……その通り。そして、2つ目の最強の理由は、、、」
ヤマトが茉莉花の目をのぞく。
「青く光る神秘の目、«瑠璃の目»を持っているからよ。」




