終わらない夏祭り②
……呪い。鬼門院はそんな事にまで手を出しているのか。自分の身内が、まだ高校生の子どもに酷いことをしているという事実に茉莉花は申し訳のなさを感じた。
「何も知らなくてごめん…。以前会った時は、こんなに口元まで腫れていなかったよね?呪いは悪化しているってこと?」
御堂理斗は前髪をおろし、マスクをつけ直した。
「そうですよ。2年前から少しづつ進行しているんです。身体的にも、もう限界に近くなって……………………ゔっ!!!!!ゔぅぅぅぅ…くそっ……なん、で…い、まっ……!」
「!?」
急に御堂くんが苦しみだした。
「ぐっ…、はぁ、はぁ……。」
「ど、、どうしたの!?」
あまりの苦しさで地面に手をついた彼に、茉莉花は慌てて背中をさすった。
「さわ、ん……な……、はぁ、はぁ、はぁ……。」
御堂くんは嫌な素振りは見せるものの、全然抵抗できていない。
こ、呼吸困難…!?あと、腫れも首の方まで広がっているような。
「もしかして、気管も腫れてきているの…?」
だとしたら、呼吸が止まるのも時間の問題だ。
救急車を呼ぶか?
いや、この腫れが呪いからくるものなら、薬とか医療でどうにかなるものじゃないだろう。
しかも、救急車を今呼んだとして、ここまで来るのに何分かかるか…。
御堂くんの家がどこにあるのかもわからないし。
「……!」
木桜神社…。
そこには重要な情報を握る妖怪がいる。
信用している訳ではないが、天音輪道鬼の紹介だから、敵ではないはずだ。
その妖怪なら、何か知っているかも?
「御堂くん、5分だけ頑張って歩いて。肩を貸すから。」
「はぁ、はぁ…………。」
彼の意識はすでに朦朧としており、茉莉花に体重を半分預ける形になっても、何も言わなくなっていた。
か、軽い。…もしかして、私より体重軽いんじゃないか。呪いの影響で、きっと食事や運動をまともにできていなかったのだろう。
少し同情をしてしまうな。
茉莉花はほとんど彼を引きずる形で、木桜神社へと向かった。
結局、御堂理斗を支えながら歩いたため、到着したのは10分後のことだった。
彼の呼吸はどんどん頻度が少なく、弱々しくなっている。
木桜神社は、本殿と鳥居があるだけの小さな神社だった。もちろん、神主さんや巫女さんなんておらず、また、参拝客もいない。
はやく、例の妖怪に会わなくては。
茉莉花は鳥居をくぐり、彼を地面の上で横にさせた後、本殿へと走った。
「……私は鬼門院茉莉花。天音輪道鬼に言われてここへ来ました。誰かいませんか!」
茉莉花がそう叫ぶと、神社の周りを囲む木々がザワザワザワ……と風もないのに揺れだした。
すると、木から青葉が全て落ち、桜の蕾がうまれ、一瞬で開花した。
辺り一面の桜が満開となり、ハラハラと美しく花びらが散る。
「す、すごい……。」
茉莉花は素晴らしい景色に目が釘付けになる。
「気に入ってもらえて嬉しいな。待っていたわ。茉莉花ちゃん。」
背後から声が聞こえ、茉莉花がバッ、と後ろを見ると、鮮やかな十二単を着た、1本角の女の鬼が微笑みをうかべて立っていた。




