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大提督は引き篭もる。  作者: ティム
災禍の討滅者編
104/140

有人船団の奮闘3

ギリギリになりましたが間に合いました。

次はボス戦とフラグ回収の予定です。

楽しんで頂けると幸いです。


 立ち塞がる海賊戦艦ブランシュ・ネージュ号を避けるように散開して浸透突破を試みる敵Evil高速駆逐艦級を、そのさらに外側に展開したグレイトパール泊地艦隊が攻撃している。


 新型軽巡と旧型軽巡の2隻は、主に転移直後の敵艦隊群に狙いを定め、15隻まで増強されたハウンド級高速要撃駆逐艦は、まるで戦果を競い合うように、敵艦を絡めとり撃墜していく。

 被弾、損傷を受ける味方艦よりも、撃破、撃沈に追いやる敵艦の方が明らかに多い。

 有人船団と敵Evil高速駆逐艦隊との艦隊戦は、参戦したグレイパール泊地軍からの増援によって、優勢に推移しつつあった。


『α50群、α52群、α53群、友軍無人艦隊と交戦開始。ブランシュ・ネージュ号への敵艦隊の攻勢圧力低下しています。』


 それは、待ちに待った戦闘管制オペレーターからの報告だった。


「やっと来てくれた。」

『うんうん、やったねマイヤ♪』


 援軍の到達による戦局の変化を受けて、マイア嬢がほっと胸をなでおろす。


 元々搭載数が少なかった艦対艦ミサイルを、早々に撃ち尽した武装調査船ビーナ号だったが、ネージュ大提督の艦隊統制下に入った護衛駆逐船団の奮闘と、なにより正面から敵の主力を受け止めてくれていた海賊戦艦ブランシュ・ネージュ号の活躍により、幸いにして此処まで無傷で済んでいた。


 しかし、護衛駆逐船団はそういう訳にもいかず、退艦命令の下ったヴァールハイト号を筆頭に、大なり小なり損傷を積み重ねている。

 現にビーナ号の近接防衛にあたってくれていたストーム号も艦首上の主砲ひとつを破壊されていた。


『お前たち、よく頑張った。敵艦隊の出現間隔も低下している。もう少しの辛抱だ、このまま押し切る。』


 モニター越しに届く力強いネージュ大提督の声に―――。


『了解っ!』


―――という兵士たちの声が続く。


 こういうのをカリスマ性というのだろうか、率先して敵艦隊と向き合い、凛々しく指揮を執るネージュ大提督の姿に、誰もが自然と従ってしまうのだ。


「ヴァールハイト号の乗員救出はどうなってますか?」


 マイヤ嬢が、思い出したように問いかける。

 決して忘れていた訳ではないのだが、刻一刻と変化する戦況に追われて、自分たちのことだけで精一杯だったのだ。

 増援が到着してようやく、マイヤ嬢たちにも周囲を見渡す余裕が生まれていた。


 ヴァールハイト号の総員退艦命令後、ファーネ級有人武装船への移乗に成功という交信があった後、艦長以下4名がとり残されているという続報があって以降、まるで情報が上がってこなくなっていた。


『大丈夫、だってムツハちゃんが向かってくれてるから。ほら、この娘。飲み友?じゃないけど友達?かな。』


 デイジーが微妙な表現をしつつ、少しずつ船団から離れ落伍していくヴァールハイト号に向かう人型兵器5騎の編隊をモニターに映す。

 そして僚騎を従え、その先頭を往く特別仕様の重機動戦騎を指し示した。



「えーと、これであってる? こちらムツハです、生存者さん、こんにちわ、聞こえてますか?生きてますか?死んでなかったら応答ください。」


 ムツハ隊長が、かなり大雑把な内容の対応マニュアルに従い、明らかにイントネーションの可笑しい片言のアリゼ連邦共通語で、呼びかける。


『こちら、アンドレ。怪物に追われてるっ救援を求むっ!』


 しかしアンドレには、おかしな言葉に突っ込みを入れる余裕もないらしい。


「そちらの状況を教えてください?」

『生存者1名を救出。2名は食われた。今は隔壁を下ろしつつ、中央連絡通路を艦尾方向に向けて逃走中だ。やつはかなり凶暴だ、隔壁がいつまでもつかも分からん。』


 アンドレの情報を受け取ったムツハが、ダウンロードしたヴァールハイト号の船内見取り図をモニターに開き、人間ふたりとEvil1体を捉えた生態センサーが告げる内容と接続する。


「えと、中央連絡通路と・・・了解です。脱出手段はありますか?」

『この先にある駐機場に向かっているところだ。艦尾に損害はない、連絡艇が使えれば、それで脱出できるはずだ。』

「状況は理解しました。これよりEvilをビームソードで強制排除します。早く避難してください。」


 ムツハがクリムゾン・タージェムツハスペシャルの手首を返し、腕内に格納されていた円筒形の柄を装備する。

 近接専用粒子兵器であるビームソードは、柄の部分しかない兵器本体内に内封された圧縮粒子を用いて稼働する、使い捨ての高エネルギー粒子の刃を発生させる武器である。

 携帯に便利な反面、刃を形成時は、加熱噴出させた圧縮粒子を垂れ流しにしているような状態であり、短期間しか稼働できないといった欠点を持つ。

 そして、刃の長さはある程度調整が出来る為、最大延長で刃を伸ばせば、100メートルサイズの船を真っ二つにする等という事も出来てしまうのだ。


「目標との距離設定完了。ビームソード起動。いきます。」


 ムツハの操るクリムゾン・タージェムツハスペシャルが、展開したエネルギーの刃を船体外殻に向けて押し込む。

 ヴァールハイト号を護る電磁シールドと激しく干渉しあい、貫き通したエネルギーの刃が船体外殻に接触、融解させつつめり込んでいき、鍔元深くまで押し込んだ刃をムツハが一気に振りぬいた。


 ムツハの繰りだしたその一撃は、隔壁を閉鎖して逃走するふたりの後ろで外壁を貫通して出現し、余波だけでその隔壁を焼き溶かしていく灼熱の奔流が、隔壁に衝突する怪物をも巻き込み、連絡通路を焼き払って蹂躙した。


 燃えて、溶けて、焼け落ちる。


 ヴァールハイト号を襲った暴虐から逃げ伸びたふたりが、運良く残っていた連絡艇に飛び乗り脱出したのだが、待ち構えていたクリムゾン・タージェに捕まった。

 そして、僚騎から連絡艇を受け取り、小脇に抱えた重機動戦騎クリムゾン・タージェムツハスペシャルが腕を突き上げてガッツポーズをし―――。


「ミッションコンプリートです。ムツハ頑張りました。」


―――とそう報告する。


 その後方では、ゆっくりと離れていくムツハの暴虐を受けたヴァールハイト号が、ビームソードで破壊された船体外殻から、空気とともに様々な物体を噴き出し、派手に外殻を吹き飛ばして爆発した。


「頑張りました?」


 コテリと首を傾けたムツハが、失敗を無かった事にして離れていった。


『こちらソウジ提督だ。こっちの準備は完了している。いつでも始められるぜ。』

『こちらアオイだよん、ヴィオラ提督にお任せで、始めちゃっていいよ。』


 出撃準備中だったヴィオラ提督の元に、ふたりから出撃準備完了の報告が入った。


「ふたりともありがとう。付き合わせてごめんなさい。」

『なにいいってことさ、後で一杯付き合えよ。』

「喜んで。」

『おっしゃーナンパ成功っ!』

『なら、今度バーラウンジで、ゆっくりふたりで飲み明かそうね。ソウジはひとりで飲んでなさい。』

『ひでぇ、なんだよ、それっ、俺も一緒でいいだろう。』

『ふーん、女子トークについてこれるなら、許してあげる。』

 ニマニマと意地の悪い笑みを浮かべるアオイ艦隊長に気圧されたのか、ソウジ提督が言葉を呑み込んだ。


「ではこの続きは戦場で、先に行って待ってるわ。全艦隊、出撃。」


 GP6衛星軌道上に集結した艦隊が動き出す。

 恒星から遠く凍てついた惑星を背景にして、次々と各艦が離脱軌道に移り、最後に扶桑級重戦艦が、僚艦であるミスリル級戦艦を伴って出航する。

 目標座標で待ち受ける敵を打ち砕くために―――。




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