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大提督は引き篭もる。  作者: ティム
災禍の討滅者編
103/140

戦闘の合間に、不機嫌なフェザー。

状況もいい感じで整ってきました。

そろそろボス戦、やれそうな感じです。

読んで頂き感謝です。

 ガーベラ隊長の自称手料理という暗黒鍋で、出汁代わりに煮込まれていたフェザーを発見した一件から時間も経ち、メデカルケースに収められていた彼女の、メデカルケアがようやく終わったのだが―――。


「フェザーお嬢様、モンブランとガトーショコラをお持ちしました。」


 私怒ってますって雰囲気を、全身から発生させた天使フィギア姿のフェザーが、ウルに注文したケーキに、八つ当たり気味にかじりつく。


「フェザーお嬢様、紅茶でございます。」


 そっと音もなく置かれた人形用のソーサ―&テーカップを、彼女がキッと睨みつけ一息にあおり飲む。


「小さい、もっと大きいのでくださいっ」

「はい、わかりましたフェザーお嬢様。少々お待ちください。」


 超絶不機嫌状態の天使フィギア、フェザーを宥める、完璧執事ウルの接待が続く。

 

 貴官もいい加減、機嫌を直したらどうであるか?

「ご主人様、ご主人様は全然フェザーちゃんを助けてくれませんでした。酷いです、あり得ませんっ、こんなに可愛いフェザーちゃんの大ピンチに気づかなかったご主人様なんか嫌いですっ!」


 うーむ、これは厄介なものであるな。

「厄介って酷いっ!ご主人様のバカ―――っ!」


 ぐぬぬ、俺にはご機嫌取りプログラムは実装されていないのであるな。

 こんな時の最適解が分からないのである。

 しかし、フェザーに恐い思いをさせてしまったのは、泊地の主たる俺の落ち度である。


「ほんとに怖かったんです―――っ!」


 俺に張り付いたフェザーが小さな拳でガンガン叩くが、サイズの都合でコツコツ程度の音も鳴らない。


「ふぁー、あ、司令官、おはようございます。んー完全復活です。気持ちよく眠れました。あ、フェザーもおはよう。」

「おはようじゃないですよっ聞いてください、ご主人さまが酷いんですっ」


 フェザーが、今度はリーフ艦長に泣きついた。


「司令官、いくら影が薄いからって、ちゃんとかまってあげないと駄目ですよ。ちゃんとフェザーも見てやってください。」

「酷い、リーフも酷いっ、影が薄いってなんですかーっ!」

「リーフお嬢様、いまフェザーお嬢様は大変情緒不安定になっております。言葉遣いには、充分お気を付け下さいませ。」

 完璧執事ウルからの忠告は、一歩も二歩も遅かった。


 おはようである、リーフ艦長。起きてそうそう貴官も災難であるが、戦闘準備を急くがよい。戦闘は既に始まっているのであるな。

 貴官の見せ場が無くなるであるぞ。


「・・・司令官、まったく状況が分からないですが、何があったらこうなるんですか?やつら、あんなに消極的だったのに、何とち狂ったように仕掛けてきてるんですか?」


 うむ、いい質問であるが、この件に関しては、情報不足により不明であるな。

 その答えは俺が聞きたいくらいである。

 ただ、状況が大きく動いた事だけはたしかであるな。


「おはよう、リーフ。やる気があるなら準備なさい。すぐにでますわ。」


 そうルル大提督が、起きたばかりのリーフ艦長に告げ―――。


「貴方、要撃艦隊から2個艦隊だしますわね。」


―――俺には出撃許可を求めてきた。


 ルル大提督、温存するのではないのか?


「貴方、状況がかわりました。出撃させてもよろしいかしら?」


 俺の疑問に答えず、ルル大提督がニコリと笑った。


「出撃、いいかしら?」


 ・・・・うむ、貴官の判断を尊重するのである。

 決して、ルル大提督の笑顔の圧力に屈した訳ではないのである。


「珠ちゃん、ホロリ。」


 タマゴ、微妙に傷つく感情表現はやめるのである。


「棟梁、尻に敷かれてるぜ。」


 余計な事を言ったチャンプが、ルル大提督に踏まれている。


「ルル大提督、すぐに仕度します。」

「お早くなさい。置いていきますわよ。」


 リーフ艦長が、手早く身支度を整えていく。


「司令官、ファイネルⅡ級強襲軽巡航艦は置いていきます。丁度いい機会ですから、完全同調化での実戦テストをやってみます。1隻づつ試しますから、ファイネルⅡ級強襲軽巡航艦の出撃準備だけは、整えておいてください。」

 了解である。テスト内容は貴官に一任しているのであるな。

「みてなさいっ絶対不合格にしてあげますからねっ!」

 リーフ艦長。

「なんですか?」

 髪型を変えたのであるか?

「イメチェンです。じゃあ行ってきます。」


 リーフ艦長が踵を揃えた、ビシッとした敬礼をして―――。


--------------------

【退出】リーフ艦長が退出しました。


【報告】ベローナ級戦艦の修理が完了しました。(24/40)

--------------------


 ―――退出した。


 さて、そろそろ俺も決断せねばなるまい。

 敵が此処まで激しく動くとは予測外であったが、おかげで大量の観測データを入手できたのである。


 俺は宙域マップに観測した超空間交信波を重ねていく。

 グレイトパール星系外縁部を超えた先に、追跡に成功した交信波の交信座標がマップ上に現れる。

 いくつもの交信座標点を線で繋ぎ、時間経過ともに移動していくルートを描き出していく。


 そして、見つけたのである。

 しかし、いままで尻尾を掴ませなかった敵の首魁が、こうも容易く居場所を特定させる愚を犯すものであろうか?

 あまりにも、出来すぎではないか?

 これが敵の誘いであり、罠の可能性も低くはなかろう。

 しかしであるな、罠である可能性を踏まえても、女王種がこの座標にいるのならば、攻撃を躊躇する意味がないのである。


 俺は攻撃を決断する。


 ならば、最初に罠に踏み込む、全滅覚悟の艦隊を誰に担当させるのが妥当であろうか?


 ルル大提督、やれるであるか?


 俺はもっとも信頼を寄せる女性に問いかける。


「此処からだと、遠すぎますわ。私の指揮範囲を超えますわね。」


 ルル大提督が首を振って、否と答えた。


「司令官、ルル大提督、意見具申します。その任務ヴィオラ艦隊が勤めましょう。敵の罠を食い破れるのは重戦艦をおいて他にありません。」


 モニターに映るヴィオラ提督は、危険に飛び込む覚悟を決めていた。


 ヴィオラ提督の意見具申、泊地の主たる俺が受領したのである。

 貴官が危険を承知で志願するとあれば、無為にするわけにもいかないであろう。


 それでも俺は、その成功率を高める為に、彼女の艦隊に周辺を警戒していた哨戒艦隊ひとつを支援艦隊としてつける事にした。

 同時に水資源輸送艦隊の護衛にあたっているソウジ提督を主力として第1護衛艦隊を編入し、増援艦隊を作り上げる。

 このソウジ提督の増援艦隊には、さらにルル大提督のケルベロス級高速重巡航艦を臨時編入したアオイ艦隊を編入することにした。


「それでは水資源輸送艦隊から護衛艦隊がいなくなりますわよ。」


 まだ1個護衛艦隊が残っているのであるな。

 それに準備が整う頃には、水資源輸送艦隊も泊地からの機動兵器群の展開範囲にはいるのである。

 組み合わせれば、ある程度戦力はカバーできるであろう。

 後は、この動きに対して、敵がどう反応するかであるな―――。


 俺は注意深く戦況を見守った。




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