第八話 首脳会議3
「では次の報告にいきましょう。これがセラムにとっての本題よ」
「はい、では私から。ゼイウン公国のメルベルク砦が陥落した。これでゼイウン公国の主要都市の一つ、ゲルスベルクの喉元を押さえられたことになる」
「それは本当ですか!?」
ガイウスの言葉にセラムは驚愕する。というのもゲームで援軍に向かった防衛目標がメルベルク砦だったのだ。しかも二度にわたって防衛任務をこなした激戦区である。それが何の関わりを持たぬまま陥落した。本格的にゲームとずれてきてしまっている。
(とうとうこの時が来たか!)
セラムの心中は荒波のようにうねっている。そんなセラムの様子にガイウスは少々不思議そうに声をかけた。
「大丈夫かい? ほら、水を飲んで落ち着きなさい」
「え、ええ、すみません。続けて下さい」
「うむ。じゃあ続けるよ。そこでその地方の名家、マトゥシュカ家からセラムに縁談の申し出があった」
「ぶぅぅぅぅぅっ!」
口に含んだ水を盛大に噴き出した。咄嗟に横を向いたため隣にいたアドルフォが思いっきり噴霧を引っ被った。
「ほら、慌てて水を飲むから」
「げほっ、げふ……はっ、わかってて……やってるでしょ……」
アドルフォが無言で被った水を拭いている。
「ふっ……冗談はよして下さいよ……」
「冗談じゃないのよ」
アルテアが不機嫌を隠しもせず言う。
「向こうがあなたを指名してきたのよ。……あいつ、私の可愛いセラムに……ロリコン野郎が」
リカルドが咳払いをアルテアの発言に割りこませる。アドルフォは無言で水を拭いている。
「最初から説明しようか。まずはゼイウン公国と我が国の関係から」
ガイウスが場を手で制して仕切りなおす。




