第六話 首脳会議1
「忙しい中すまんな。だが非常事態だ」
セラムが呼ばれた会議室で待っていたのはアドルフォだけではなかった。アルテア、ガイウス、リカルド。国の代表と大将と宰相と公爵、国家の中枢を担う四人であった。
これだけで深刻な事態なのは嫌というほど分かる。しかも他の人物がいないという事は余程の機密事項なのだろう。そんな中自分が呼ばれるというのは場違いというか、嫌な予感しかしない。
「悪い報告と最悪な報告があるけどどちらから聞く?」
「うわあ聞きたくねー」
こういうのは良いニュースと悪いニュースどちらからというのが定番だと思うのだが。
「ゼイウン公国から援軍要請でも来たのですか?」
「いいえ、違うわ。けどどうしてそう思うの?」
あら、とセラムは拍子抜けした。ゲームの次の展開を考えるとそれしかないと思っていたのだが。しかし違うとすると先が読めなくなるという、セラムとしては最悪な状況になりかねない。
「いえ、単純に未だ交戦中の筈だからという当て推量です。……では悪い報告の方から」
「では私から話そうか」
ガイウスが口を開く。
「ノワール共和国の議長、言ってみればこの国で言う国王に当たる人で、フラウメルという女性なんじゃが……、彼女がグラーフ王国との講和を影で進めているらしい」
「最悪じゃないですか……」
むしろこれで最悪じゃないなんてもう一つの報告はどれ程のものなのか、聞くのが空恐ろしくなる心地である。
「もっともこれははっきりと形になったわけじゃない。ノワール共和国は今抗戦派と講和派に分かれていてね、これはその抗戦派の議員の一人からの情報じゃ。今から手を打てばまだ間に合う案件。むしろそんな重要機密が国の幹部から流れてくる程に内部が割れている事のほうが重大かもしれん」
とはいえ楽観視はしていられない。彼の国は魔法大国という側面の他に商業、薬学といった分野も抜きん出ている。また南北に広い土地を持つ為豊富な動植物資源を持ち、交易相手として非常に重要な国である。決して敵に回すわけにはいかない。
アルテア : ヴァイス王国の王女。王が病に倒れている今、実質国のトップである。
アドルフォ : ヴァイス王国常備軍の大将。セラムの良き上司である。
ガイウス : ヴァイス王国の宰相。政治面で国を取り仕切る最重要人物。セラムの良き理解者である。




