44.歓楽と秘密の融合
豪華客船の旅を終え、アードとリーナがアークへ帰還した。
佐々木は二人の帰りを温かく迎え、旅の話に耳を傾けた。
「佐々木さんのおかげで、とっても楽しかったよ!ありがとう。アヴァロンもあんな場所にできたら最高だね」
リーナは目を輝かせながら感想を述べた。
リーナの感想を聞き終え、アードの表情は以前にも増して真剣に変わった。
アードは、リベラと佐々木に言った。
「佐々木、リベラ。旅の間、ワシはリベラに言われた『休暇の裏にある意味』について、ずっと考えていた。その答えとなるかはわからないが、アヴァロンの建設について、一つの提案がある。」
リベラは無言で、佐々木は優しく先を促した。
「アヴァロンを造る根本的な目的は膨大な資源を隠すことだろう。だったら、アヴァロンは軍事要塞として造るよりも、リゾート施設にすることを提案する」
その突飛な発言に佐々木は驚きを隠せなかった。
アードは熱意を込めて続けた。
「アヴァロンの攻防機能は隠し、豪華なカジノを併設した巨大な観光施設として公開するんだ。誰が、こんなにも派手で享楽的な場所に、秘密の軍事施設や膨大な資源が隠されていると思う?」
アードはさらに続けた。
「また、カジノの資金源として、アークが持つ換金性の高い希少金属は利用できる。資本が十分にあるカジノは最終的に決して負けない。巨大な富が、さらに多くの人間と欲望を集め、それがアヴァロンの本当の力の目くらましになる。それに、現金もあつまるメリットがある。」
「しかし、それは佐々木様のためになるのでしょうか?」
リベラはアードの考えが自分の最適解となるかを問いただした。
アードはリベラの問いに答えた。
「アヴァロンはあまりにも広大だ。リゾートとして一般に開放しても、佐々木のプライベートな居住区や、資源エリアを確保するには十分すぎる。これなら誰もココが軍事施設だとは思わない。それに、巨大な観光収入が入れば、資源を売る必要すらなくなるかもしれない。」
アードの提案を聞き終えたリベラは、自分の考えを示した。
「アードさんの提案に同意いたします。これはアークの裏稼業である資材収集の目的をうまく隠すことができ、さらに現金化のプロセスも容易になる。また、アヴァロンの広大さを活かせば、カジノ以外にも多種多様な娯楽施設を併設でき、隠れ蓑としての有効性をさらに高めることができます。大勢で楽しむ娯楽施設も人が集まるのであれば、作る価値があると判断します。」
佐々木はしばらく考え込んだ後、顔を上げ、静かに微笑んだ。
「アードさん。ありがとうございます。アヴァロンはとても面白そうな場所になりそうですね。アヴァロンの計画は、リゾート要塞として検討を進めましょう」




