27.親切な口論
佐々木とリベラは先に今夜のホテルの予約に向かった。
リリィはその間、ひとりで小型船を購入した中古販売店『ジャンク・ポット』に訪れた。
リリィはカウンターのザックに、弾んだ声で話しかけた。
「店長!ご無沙汰してます!」
ザックは顔を上げ、驚いたように言った。
「リリィ!お前、遭難したと聞いたが、無事だったのか?」
リリィは胸を張って答えた。
「はい、ある方たちに助けてもらいまして」
「そうか、そりゃよかったな。…でも、あの船はどうなったんだ?」
ザックは少し気になる事を聞いた。
「実は今修理中なんです」
借金をして船を買い、さらに修理費が必要になるとはコイツも運のないやつだとザックは思った。
「そうか、ならこっちの支払いは待ってやってもいいぞ」
リリィが今一番聞きたいであろう言葉をかけてやったつもりだが、リリィの返答は違っていた。
「いえ、今日は残りの400万クレジットを支払いに来ました」
リリィの言葉に、ザックは驚きのあまり目を見開いた。
「なんだって?お前なら、そのうち稼げるようになるとは思っていたが、いくらなんでも早すぎだろ。おい、リリィ。その金はどういう筋から出たんだ?まさか、悪い仕事でも始めたんじゃないだろうな!」
リリィは慌てて否定した。
「違います!私を助けてくれた方
がお給料の前払いをしてくれるそうで。もうしばらくしたらこの店に来てくれます」
ザックはリリィが世間知らずで甘い話に騙されていると直感した。
「馬鹿野郎!見ず知らずのガキに大金をポンと出すだと?それは罠に決まってる!いいか、リリィ。そいつとは、俺が直接話をさせてもらうぞ」
しばらくして、佐々木とリベラが店にやってきた。
ザックはリリィを背後に隠すようにかばい、佐々木に対峙した。
ザックは切り出した。
「あんたか?小娘に大金を渡して、一体何を企んでいるんだ?」
佐々木が戸惑うと、リベラが無表情なまま、口を開いた。
「私たちは悪意があって大金を渡しているのではありません。現在、私たちは特殊な事情から信頼できる仲間を必要としています。そこで、リリィさんを整備士として雇い入れることを検討しているだけです」
「なるほど。リリィさんを大切に思ってくれてるんですね」
佐々木は、ザックのリリィへの気遣いを感じ、感動して目を潤ませた。
しかし、リベラは感情を排した声でそんなザックに真実を突きつけた。
「その大切なリリィさんは、船が故障し、我々が助けなければ、宇宙で確実に死んでいたでしょう。リリィさんの命の危機は、無謀な資源探査の結果です。なぜ、あなたは彼女に、命を危険に晒すような事を許したのですか?」
リベラの追及に、ザックは顔面蒼白になった。
リリィが、死にかけていたとまでは思っていなかった。
「...死んでた、だと?くそっ...俺は、やっぱりもっと強く止めるべきだった...」
ザックは深い後悔の念に打ちひしがれ、カウンターに額を押し付けた。
夕方、佐々木はリベラ、リリィ、そしてザックを誘い、宇宙港近くの定食屋で夕食を共にした。
リリィが佐々木とリベラの出会いからこれまでの船での生活を話すうちに、ザックは佐々木が本当に善意のキャプテンだとわかってきた。
食事を終え、佐々木とリベラがホテルへ戻るため店を出ようとしたとき、ザックが2人を呼び止めた。
「おい、キャプテン。俺は、あんたたちを信用してみようと思う。リリィをどうかよろしく頼む。それとすまないが、アイツの借金は当分、俺にかたがわりさせてくれ。」
ザックはリリィの方を見た。
「リリィ。また今度、顔を見せに来い。その時まで、お前の借金は俺が預かっておく」
その言葉に佐々木は深く頭を下げ、リベラも静かに会釈した。




