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宇宙船は俺の楽園~百年の眠りから目覚めた、億万長者~  作者: まいぷろ
第36章:

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245/245

245.フラットライン

35章のあらすじ

登場人物:佐々木(31歳、男性)、リベラ(船のAI、女性)、ミネルヴァ(AI、女性)、ガブリエラ(惑星エデンの女性)、ギルバート(30代、商人、男性)、リラ(31歳、ギルバートの妻、女性)、アイリス(22歳、ハッカー、女性)

リベラはミネルヴァに「統制プログラムを突破した個体」を追う謎の女性への対応を依頼する。その後、惑星エデンの実力者ガブリエラが来訪するが、交渉は決裂。直後にギルバートが本体である「意識の球体」を奪われ失踪する。リベラはアイリス、リラと共に豪華客船で急行し、圧倒的な火力でエデンの防衛網を突破。ガブリエラを屈服させたリベラは、彼女が不治の病で眠る主を救うための「手段」を500年間探し続け、ギルバートの存在にその希望を見出していた真意を知る。リベラは彼女を仲間に引き入れ、被害者側へはエデンの特権を譲渡させることで合理的な解決を図る。一行は主のポッドを回収してアヴァロンへの帰路につき、リベラは「3日後に帰還する」と予定を告げるが、それを最後に客船との通信が途絶した。

客船との通信が途絶した少し前。


小惑星帯を巡航していた豪華客船を、正体不明の現象が突如襲った。

船体付近で突如として発生した重力波を感知した瞬間から、すべてが変質した。


凄まじい衝撃が船内を駆け抜ける。

巨大な船体は木の葉のように翻弄され、激しい揺れと軋みが続いた。

それは、生身の人間では、到底耐えることなどできないほど苛烈な衝撃だった。



その異常な衝撃が収まるまで、およそ10分。

ようやく揺れが徐々に引き、船内には不気味な静寂が訪れた。


リベラは直ちに船内のダメージチェックを開始した。


しかし、彼女が調査した結果は、あまりに絶望的なものだった。

メインスラスターを含む主要機関は致命的に破損。

エネルギーラインは寸断され、自力航行は完全に不可能な状態に陥っていた。


さらに不可解だったのは、窓の外に広がる景色だった。


システムを介して現在地を割り出そうと走査を繰り返すが、起点となるべき既知の星座や星系がひとつも照合されない。

演算は答えを出せず、虚しく無限ループを繰り返すばかりだった。


「何が⋯起こったの?」


アンドロイドであるガブリエラとリベラは、その強靭な機体構造によって、かろうじて機能停止を免れていた。


「どこか、未知の場所に飛ばされたようです」


「どういうこと?」


ガブリエラの問いに、リベラはモニターを凝視したまま答えた。

「見える星を検索した所、データベースにある星図と全く一致しません」


リベラは一度言葉を切り、重い沈黙のあと、静かに告げた。


「つまり、私たちは⋯遭難しました」



絶望的な事実が告げられた直後、室内に鋭いアラームが鳴り響いた。

手元の端末を確認したリベラが、表情を硬くする。


「ガブリエラさん。⋯あなたのマスターが危険な状態です」


その言葉が終わる前に、ガブリエラは弾かれたように倉庫へと走った。


ガブリエラは、倉庫のコールドスリープポッドに駆け寄り、中を覗き込んだ。


ポッドの中の男性の顔は、おびただしい血に染まっていた。


アンドロイドの二人とは異なり、無防備な生身の身体にとって、先ほどまでの異常な衝撃はポッドの保護性能を遥かに超え、肉体に致命的な損傷を与えていた。


「私がエデンから連れ出したばかりに⋯どうすればいいの、どうすれば⋯!」


顔を青ざめさせ嘆くガブリエラのもとへ、リベラが大型の精密機器を押して入室してきた。


狼狽する彼女を正面から見据え、断固たる口調で告げる。

「時間はあまりなさそうですね。⋯やむを得ません。今ここでゴースト・スキャンを実施しましょう」


リベラは迷うことなく機械を起動させると、特殊なヘルメットを男性の頭部へ慎重に被せた。

駆動音とともに、確実な精度でスキャン・シーケンスが開始される。


それから、1時間後。

スキャンの完了を知らせる電子音が室内に響いた。


さらに5分後。

コールドスリープポッドのバイタルモニターが平坦な線を画した。


男の心臓は、完全に停止した。

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