第一話 プロローグ
「危ない!」
私は不意に手を引かれ尻もちを着いた。
いや、正確にはイケメンの上に尻もちを着いていた。
「おばさん、ボーッとしてんなよ! ほら、前」
速度を出した車が行き交っていた。
「……あ、ありがとう……ございます」
私はイケメンの膝から下り、頭を深々と下げ、丁寧に挨拶をした。
「ホント、ふざけんなだし! 俺が一瞬遅れてたら、あんたぐちゃぐちゃだったよ!」
整った鼻筋、黒目がちで潤んだ瞳、さらさらの髪……怒鳴られても、その美しさの前では、まるで小鳥のさえずりのよう。
ボーッとしたまま、そのよく動く口を見ていた。形の良い、引き締まった口元……。
こんなに美しい人間が、この世に存在していたなんて……。
「……それとも、死ぬ気だったとか?」
ハッと現実に戻される。
私は割れた眼鏡のフレームを直すふりをして頭を振る。
「……だよな! 今日は俺の17歳の誕生日なんだ。寝覚めのわりーことは止めてくれよ!」
頭の上にぽんと手を乗せて、くしゃくしゃに撫でられた。
(……え!?)
頭を撫でられるなんて……こんなこと、子供のとき以来だ……。
思わず涙が出てしまう。
「……あ、わりぃ。つい癖で。……ごめんな!」
私は頭をふりながら、気付かれないように顔を下げ、袖先で拭った。
「俺、黒崎ひらり。いわゆるキラキラネームだな。あはは!」
真っ黒な瞳でじっと見つめられ、ドキドキしてしまう。
「わ、私は……野薔薇。……同じくキラキラネームです……」
はじめまして。
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