第2話:再燃する虎魂
―34年目・阪神の誇りと共に―
『傑、そして白球は遥かなる未来へ』
⸻
【序章:黄色と黒の帰還】
2026年春、甲子園球場。
ビジョンに映し出された名が、スタジアム全体をどよめかせた。
「34年目・安川傑、阪神タイガース復帰」
その瞬間、スタンドは揺れんばかりの歓声に包まれた。
2000年代後半、“豪腕リリーバー”として名を馳せた男が、先発投手として再び虎の陣営に戻ってきたのだ。
「戻ってきたか……スグルさん」
静かに呟いたのは、ベンチにいた岩崎優。
今やチームの屋台骨を支える存在となった彼は、かつて傑と共にブルペンで肩を並べていた。
⸻
【家族の決断:大阪移住】
仙台から大阪へ、傑の復帰に合わせて家族も動いた。
妻・成旼と娘・祐美子は、吹田に仮住まいを構える。
「この1年だけでいい。あなたが“最後まで燃える姿”を、ちゃんと見届けたいから」
「私もホルン、続けるよ。パパの応援歌、もう出来てるから」
窓から大阪湾が見えるその部屋で、家族の再出発が始まっていた。
⸻
【シーズン開幕:復活の一勝】
開幕投手は村上頌樹。
だが第3戦、甲子園に“伝説の背番号18”が登板する。
「51歳で先発とか……おとん、バケモンやな」
そう呟いたのは若き4番・佐藤輝明。
1回、初球。
インローへ沈むスライダー――
相手バッターは完全に泳がされて空振り。
2回にはカーブで併殺打を打たせ、
3回には147キロの直球で空振り三振。
「まだこんな球、投げるのかよ……!」
敵軍のベンチからは驚嘆の声が上がる。
6回2失点の好投で勝利投手となった傑は、試合後こう言った。
「このチームなら、日本一を狙える。だから、もう一度だけ、本気のシーズンを戦う」
⸻
【9月、優勝争いの渦中】
阪神は混戦を勝ち抜き、セ・リーグ優勝を決める。
安川は9勝4敗、防御率2.86という驚異の成績で“最多勝”にも名を連ねた。
OBの糸井嘉男が語る。
「若手の活力に、ベテランの魂が重なったんや。これぞ“ほんまもんの阪神や”」
⸻
【クライマックスシリーズと再会】
CSファイナルステージ初戦、対戦相手はDeNA。
ベンチでは西勇輝、岩貞祐太、才木浩人らが緊張した面持ちで座っていた。
そこに、韓国から駆けつけた呉昇桓の姿。
「スグル、最後まで走れ。タイガースにとって、お前の魂が必要なんだ」
傑は力強く頷いた。
「日本一。取りに行く。虎として、そして父として」
⸻
【日本シリーズ:運命の最終戦】
相手は、パ・リーグ覇者――福岡ソフトバンクホークス。
第6戦までで両軍3勝3敗。
第7戦、東京ドーム。
先発は、安川傑。
緊張が極限に達する中、傑は初回から落ち着いたピッチングを見せた。
3回、ピンチで登場した佐藤輝明のダイビングキャッチにより失点を防ぎ、
5回裏、自らの送りバントが決勝点を呼び込む。
8回まで投げ抜き、後を湯浅京己が引き継ぐ。
そして――
9回裏、最後のバッターを三振で打ち取り、阪神タイガース、日本一の栄光が決まった。
⸻
【試合後:家族と語る夜】
傑は、東京ドームのロッカーで一人静かにスパイクを脱いだ。
そこに成旼と祐美子が駆け込んでくる。
「……勝ったよ」
「すごいよパパ。ホントに、有言実行だ」
「じゃあ、これで……?」
傑は微笑む。
「うん。次は、世界で終わる。最後は、ドジャースで」
家族3人で見上げる東京の夜空に、チャンピオンフラッグが誇らしくなびいていた。




