第1話:還る場所
仮想未来編全3話を… まず1話目は楽天の地
―33年目・楽天の赤い魂―
『傑、そして白球は遥かなる未来へ』
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【序章:そして、33年目が始まる】
2025年春、仙台。
楽天生命パーク宮城のブルペンで、ひときわ長身の男が軽くキャッチボールをしていた。
髪には白髪が交じり、腕の筋肉にも年輪が刻まれている。
だが、そのフォームは未だ美しく、捕手が構えたミットには「シュンッ」と音を立ててボールが吸い込まれた。
安川傑、51歳。
常総学院での甲子園優勝から始まり、楽天・阪神・メジャー・KBOと世界を股にかけた名投手が――
ついに、プロ33年目のシーズンに突入したのだった。
「安川さん、今日も……145km出てました」
そう呟いたのは、楽天の若手捕手・太田光。
同じ背番号「18」を背負う彼は、かつて傑の全盛期を見て育った“傑信者”でもあった。
「まだ球速で勝負するつもりはない。けど……“勝てる投球”は、今の俺にもある」
傑はそう言って、誰よりも静かに、しかし確かに闘志を燃やしていた。
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【家族:妻と娘、そして春の仙台】
仙台市青葉区の住宅街――
そこに、傑の自宅があった。
妻・成旼は現在も韓国と日本を行き来する人気アナウンサー。
そして娘・祐美子は高校生になり、吹奏楽部でホルンを担当していた。
この春から、3人は再び“3人暮らし”を始めていた。
「ねえ、パパ。高校生にもなって、また野球選手になるってどうなの?」
夕食のテーブルで、祐美子がからかうように言った。
「やれるって言ったら、“やれない理由”を探す奴が多い。でも俺は、やりたいって思ったら、やるんだ」
「……でも、心配だよ。だって、もう51歳でしょ?」
「そうだよ。だから“引退までの1年”じゃない。“最後に勝つための1年”なんだ」
成旼は笑って言った。
「その言葉、どこかで聞いたことある。“最後の1球まで全力”って、あの頃のインタビュー」
「変わってないな、俺」
「ううん。変わらないからこそ、応援したいのよ」
夕飯の鍋から立ち上る湯気の中、家族の会話はどこまでも穏やかだった。
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【シーズン開幕:重ねた年輪で挑む舞台】
開幕戦の先発ではなかった。
それでも傑は、4月中旬の日本ハム戦で登板を任される。
かつての楽天の盟友、田中将大や則本昂大も引退を控えた中、
「最後のサムライ」と称された傑の登板に、球場は満員となった。
――先発、安川傑。背番号18。
マウンドに上がるその背中に、観客は歓声と祈りを込めるように拍手を送る。
対するバッターは、今やリーグトップの打率を誇る日本ハムの新星・村井翔太(※架空選手)。
初球――
「ストライクッ!」
鋭く沈むスライダーが決まり、客席がどよめく。
「くっそ……あの年で、まだ打てないのかよ……!」
村井の独白が、傑に聞こえていたかのように、
続くカットボールで空振り三振。
ベンチでは監督の三木肇が静かに頷いた。
「……やっぱり、“安川”の名前は伊達じゃないな」
この試合、傑は5回を無失点に抑えた。
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【記者会見:次の目標】
「安川さん、51歳での勝利投手、NPB新記録ですね。何を思いましたか?」
「記録より、記憶に残りたい。“あの人、51歳でも勝ったんだ”って、誰かが挑戦するときの背中になればそれでいい」
「では、今後の目標は?」
「全ての古巣で、勝って引退すること。そのためには……次は、甲子園で勝つ」
記者たちがどよめく。
それは、すなわち――来季(34年目)、阪神復帰を示唆する発言だった。
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【ラスト:帰宅と約束】
その夜。
「パパ、おかえりー! 見たよ、テレビ!」
祐美子が飛びつく。成旼も満面の笑みで迎えた。
「やったな、スグル」
「……うん。けど、これが“終わり”じゃない。“繋ぐ”ための始まりだ」
成旼は少し照れながら、こう言った。
「じゃあ、来年は甲子園で……“阪神のエースとして”?」
「そのつもりだ。もう一度、虎のユニフォームを着て」
「パパ、じゃあその時は、わたしが甲子園でホルン吹くからね!」
笑い声が弾けるリビング。
傑はグラスを掲げた。
「じゃあ――“次の1勝”に乾杯」




