第69話 幼女、竜退治
『アトキン、あれやべーな!』
『先生、ムチャしないでくださいね!』
懲りもせず、またカニエが二台目のドローンを飛ばしてきた。メフティのゴーレムもいっしょである。
「ふたりとも、それ以上近づいたらアカン。来るで!」
大穴から、影が這い上がってきた。生き物というが、テネブライの思念が生き物の形を取っている。
「なんやあれは? あれといっても、どこにおるんや?」
眼の前にいるはずなのに、大きすぎて存在が捉えきれなかった。
【ドラゴン】という、ファンタジックな生命体ではない。【竜】といった、概念的な不気味さを感じさせる。
顔や体型を、どう描写していいものやら。
「ヤマタノオロチの正体は、溶岩でした」という説があるが、それが一番近いかも。
全体的に赤黒く、個体なのかどうかもわからない。あれが魔物なのかさえ、掴めなかった。
「脳が、存在を認識してくれへんぞ。アイツを見てても」
ゴースト系のような、おぼろげさではない。気配自体はハッキリしているのに、目が実体を捉えるのを拒否する。
伝承に出てくる魔物とか、不思議存在というより、災害と描写すべきだと思う。
「ゾクゾクしてきましたよ、アトキン」
クゥハも、久々の大物に身を震わせていた。
「ああいうのを、人は【神様】っていうんやろうな。たしかに人間では、太刀打ちできんわ」
これが、テネブライの本気か。
ようやく、テネブライの魔物どもがなにと戦ってきたのか、わかった気がした。
テネブライが、外界とのコンタクトを避けていたのかさえも。
コイツを、抑え込むためだったのだと。
コミュニケーションが、一切取れなさそうであるが……。
「いちかばちかや。【邪神コンタクト】!」
ダメ元で話し合いを試みようと、魔力電波を発してみた。
口がないとか、思念波で会話する魔物もいるため、こういうスキルも取ってみたのである。
「さあ来いや、災害。どんなクソスレで煽られても、こっちもクソリプで返したる。ガールズ掲示板を一夜で封鎖させた、ウチの実力をナメんなよ~」
しかし、相手は秒で拒絶。というか、ただのノイズとしか捉えていない気がする。
「門前払いかいっ! ATフィールドが分厚すぎるんちゃうけっ!?」
「アトキンって、たまに意味がわからないワードが飛んできますね」
「ほっとけや」
ボオオオオオオオ! っと、災害が吠えた。
咆哮というより、ノイズに近い。ASMR中にマイクの音量に気づかず、フル音量で吹き出し笑いが入っちゃったみたいな。
久々に見た。こんな理性のないラスボスは。
「アトキン、これはえげつないですね。ウチの母より強い敵を、ワタシは初めて見た気がします」
「たしかに、相手にしたらアカンタイプや」
天狗が、コイツを封印していたのが、うなずける。
「……アトキン。お先に相手をさせてもらって、いいですか?」
クゥハが、剣を振り回す。




