第68話 幼女にケンカを売った、イキリドラゴンの末路
「ドラゴン族としても、調子に乗った個体は処するようにと言われていますので」
「ホンマに間引きやんけ!」
「そうやって、ドラゴンは慎重に生きているんですよ」
クゥハが、しれっととんでもないことを言う。
「アトキンなら、うまいこと間引いてくれるでしょう」
「同族をシバいても、なんもいうてけえへんとか」
「人間にも善人悪人がいるでしょ? そんなものです」
そんな、大層な。
「ドラゴンのほうも、あなたをヤる気満々なので、目一杯ぶちのめしちゃってください」
クゥハとの話に夢中で、ドラゴンと戦闘中だと忘れていた。
「よっしゃ」
種族公認でシバいていいのなら。
レッドドラゴンの尻尾がしなり、ウチに攻撃を仕掛けてくる。
このボディの強度を試す意味合いで、ウチはあえて食らう。
だが、片手だけで受け止めてしまった。手が勝手に反応したのである。
「おおぅ。さすが。そんなに頑丈なバイオジャケットや、ないはずやのに」
数々の戦闘を経て、バイオジャケットの素材も良質になった。ドラゴンの攻撃すら、防げるほどになっていたとは。
ドラゴンも、冷や汗をかいている。
こちらも反撃……と思っていたときだった。
一筋の光が、大穴から吹き出す。その様は、間欠泉を思わせた。
「おっとぉ!?」
ウチは触手で、ドラゴンを足首を掴む。穴からドラゴンを引き離した。
しかし、ドラゴンの尻尾が焼け焦げてしまう。再生すら不可能なほど、ドラゴンの尾はキレイに蒸発していた。
あれだけブチギレていたドラゴンの表情が、怯えたものになる。
「すっかり、戦意喪失しちゃってますねえ」
「せやな。これに懲りたら、もう自分の住処でイキらんこっちゃな」
ウチはドラゴンの足首から、触手を放す。
ドラゴンは、脱兎のごとく逃げ出した。
ただのヘタレとはいえ、最強種族であるはずのドラゴンすら怯えさせるとは。
「相当ヤバい奴やと、思ってたほうがええな」
「でもアトキンは、そういうヤツが欲しいんですよね?」
「せやな」
ウチにとって、強敵の存在は大歓迎だ。
村のためなら、開拓を優先すべきなのだろうけれど。
ウチはどこまでいっても、研究職なのだろう。
『今の光はなんですか、アトキン先生!』
『すっごい魔力の波動を、感じたぞ! オイラもそっちいっちゃダメ?』
カニエがドローンで、メフティがゴーレムで、遠くから様子を伺いに来た。
「来るな! 顔も出したらアカン!」
二人は『え?』と、間の抜けた声を発する。
同時に、ドローンとゴーレムは赤い光によって蒸発した。
「ホンマにあかんヤツや」
もしあれが本物のカニエとメフティだったら、と思うと。
「あれは、ホンマにシバかんとアカン」
ウチのヤル気に、火がついた。




