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悪役令嬢の妹ですけどなにか?  作者: トマッティ
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音楽の授業

とある日の午後の授業中。

世間一般的にいうお高い身分の私たちは全力で「ふううううううーーーー!!!はぁあああああーーーーー!!!!!!」と腹式呼吸をしていた。




・・・・・・いや、わけわかんないよ、と仰る方がいらっしゃると思いますが、当事者である私たちもわけわかんないと思っております・・・。



♢♢♢



午後の初めの授業は音楽だった。

ここで、音楽の先生についてお話しておこうと思う。


音楽について教えてくださる先生の名前は「ミュラ・ジーカル」。

黄土色の髪と焦げ茶の目をしている。

髪はストレートに伸ばしていて、愛嬌のある顔立ちだ。

初めての授業では「皆さん、こんにちは。音楽を教えるミュラ・ジーカルです。これから3年間、よろしくお願いしますね?」そう言ってとんでもなく美しい微笑みを浮かべて挨拶してくれた。まるで女神のように可憐だった。

名前が「ミュージカル」みたい・・・と思わず思ってしまったが・・・まぁ、偶然だろう。と納得したことを記憶している。


初回の授業は先生の自己紹介と質問応答で終わったので特に特筆すべきことは無かったのだが・・・問題は2回目の授業だった。




「中学1年生の音楽の授業では、主に歌について学び実践します。音楽の評価のつけ方は実際に歌ってもらって、私がそれを聴き評価するというやり方になります。

ですから皆さん、頑張って歌ってくださいね!」


と告げられ、


「歌を歌うにはまず、腹式呼吸が大事なんです!!」


と言われて、腹式呼吸がどれほど大事かを長々と説明された。

その後すぐに「・・・とまぁ、そういう訳で・・・じゃあ、実践してみましょう!実践あるのみです!」とニコニコしながらそう言い、Aクラスの男女を教室に並べて腹式呼吸の練習をさせられたのだ。




「こう、鼻から吸って〜〜〜すうううううううううううううう口からはぁぁぁぁぁぁあく!!!!!!!!」








先程の美しい女神は、どこへ行ったのだろうか。

顔がどえらいことになっている。

女神よ、帰ってきてくれ。







Aクラスのミュラ先生に一目惚れしたと言っていた男子生徒が今にも泣きそうな顔をしていた。

きっと夢を壊されたのだろう。可哀想に。

同情を禁じ得ない・・・。



それからみんな仲良く並んで腹式呼吸である。

先生は腹式呼吸をしている私達を見てちゃんと腹式呼吸をしているかを1人1人確認し、出来てない子にはハリセンで腹を叩いて「腹式よ♡今貴方は胸式呼吸になってます♡もっとお腹に力を入れて?」と言った。

お姉様曰く、これは音楽の授業の通過儀礼であるそうだ。

女子も男子もハリセンで叩かれる。男子陣は更に容赦なくハリセンでぶっ叩かれていた。

先生曰く、「男子は鍛えているでしょう?だから、少し強めにしないとお腹に力が入らないのよ。」との事だった。

他国の第1王子であろうが我が国の第2王子であろうが関係なくぶっ叩いていた。

無慈悲である。



始終笑顔でポンポンとハリセンを手遊びしながら私たちの前を歩くミュラ先生はマジで怖い。恐ろしい。下手なホラー映画より怖かった。

だからみんな必死で腹式呼吸をする。




そうすると、みんな凄まじい顔で「ふううううううーーーー!!!はぁぁぁぁぁぁああああああー!!!!!!!」とやるので混沌(カオス)がそこに生まれるわけである。








あまりの混沌(カオス)なので私は心の中で大爆笑をしてしまった。

あのプライドが高いオーガと常にすまし顔をしているウォールがで「ふううううううーーーー!!!」とやっているのである。



「(んふ、2人の顔やば、おもしr...)グハッッッ!!」



ニヤニヤしていたら、突如として私の腹に凄まじい衝撃が襲いかかった。

...恐る恐る前を見ると、目が笑っていないミュラ先生。


「ライネさん?集中できてないようね」


「すみませんっっ!!!!!!」



オーガ、その小馬鹿にしたような顔ばっちり見えてるからな。



♢♢♢


それから腹式呼吸は毎回授業の初めにやることになったのだが、この通過儀礼のおかげで私含めクラス全員腹式呼吸ができるようになった。

いやー、腹式呼吸だと吐き出す息の量と吸う息の量が多くなるから声量が太くなるね。





みんなが完璧にできるようになった頃、やっと私達は歌に入れた。

「皆さん、よく頑張りましたね!」といつも通り美しい微笑みを浮かべるミュラ先生に、「これで毎日の地獄のような腹式呼吸が終わる・・・」と喜んだら、「ふふふ、残念ですが、毎日の日課である腹式呼吸は終わりませんよ♡」と言い、上げて落としてきたのである。先生はドSだったのかもしれない。



授業で扱う歌は聖歌隊の歌や民歌が多い。

「・・・ん?聖歌隊?」と思う方がいらっしゃると思うが、ファルナー王国では様々な行事で聖歌隊が歌う。

なんでも、ファルナー王国を創った偉大なる「ソルダ」に対して歌を捧げてるのだとか。


少年少女が奏でる美しいハーモニーは、1回お父さんと共に聴いたことがある。

少女や少年特有のソプラノとアルトがそれはもうとんでもなく美しかった。

耳が幸せでしたね、はい。



そんな彼らの曲を歌うのでこれまた大変なのだ。どちらかと言えば、民歌の方が誰でも歌えるような音程で作成されているので歌いやすい。




そんな音楽の第1回のテストは「腹式呼吸」と「自分でセレクトした歌1曲」らしい。

セレクトするにも「聖歌隊の歌」or「民歌」なので私は断然歌いやすい「民歌」を歌います・・・。

ちなみにお姉様は「聖歌隊の歌」の方を選んだらしい。さすがお姉様である。


・・・テスト、来月行われるらしいので精一杯頑張りたいと思います。



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