どしゃ降りの雷雨
ーーーーードンガラガッシャーン!!!
雨音と雷が鳴り響き、雫が窓に激しく打ち付ける。
今夜は、何かが起こりそうだ。
♢♢♢
今日は朝から酷い雷雨が続いていた。
「ファルナー王国には珍しいお天気ね。」
ポツリ、とお姉様がそう仰ったので、私も同意するように頷く。
「・・・なんだか、こんなに天気が悪いと気分まで落ち込みますね。」
「まぁでも、こんな天気は今日1日で終わるでしょうし。ちょっとの我慢ね。」
よしよし、とお姉様が頭を撫でてくださったので私は元気になった。ライネは意外と単純なのだ。お姉様大好き。
その後、私は特にやることがないのでお部屋でクッキーを食べながら本を読んでいた。
バタバタといつも以上に廊下が騒がしいのでどうしたのかと聞いてみると、雷が庭に落ちて木々が焼けたらしい。
なんでもその木がお父さんが大切にしていた木らしいのだ。
「・・・それは、大変だ。」
「ええ。先代から大切にしておられる木ですので・・・。」
失礼します。と頭を下げ、教えてくれた侍女は忙しい集団の中に入っていった。
ーーーゴロゴロゴロ・・・
ピカッと光って闇雲を切り裂く雷は、不謹慎だがとても美しく思える。
一瞬で消え去る一筋の光のようで素敵だ、と見惚れてしまう。
・・・こんなポエマーみたいなことを思うなんて、私もどうかしてるな。
気でも紛らわせるために腹筋でもすっかな。
そうして私は日課の筋力トレーニングを始めたのだった。
♢♢♢
夜、お父さんはびしょ濡れで帰ってきた。
夕食時にお城での話をしてくれたのだが、お城でも雷の被害が出ていたらしい。
ちなみにだが、今日の夕飯はホワイトシチューでした。美味。
夕食後はいつも通りお風呂に入り、侍女を退出させてベットに横になった。
外では朝からずっと衰えずにどしゃ降りの雷雨が続いている。
なんだか、目が冴えてしまって眠れない。
(でも、寝るしかない・・・)そう思って目を閉じようとした時、
ガッシャーン!!!!!!と一際大きい雷が落ちた。
・・・落ちるのと同時に、「ヒィッッ!!!!!」というか細い悲鳴が扉の方から聞こえた。
ガチャッと扉を開けて見てみると、そこには蹲って目と耳を塞ぐウォールがいた。
「・・・ウォール。どうしたの、大丈夫?」
ウォールの前にしゃがみこんで優しく肩を叩き、そう声をかける。
ガチガチと歯を鳴らして「ひ、ひ、」と引きつった呼吸をするウォールを放っておけるほど冷徹ではない。
「ラ、ライネ、お嬢、様・・・ぅ、あ、」
「うんうん、ライネだよ。だいじょーぶだいじょうぶ。ゆっくり息を吸ってね~、はい、吐いて~、うん、上手上手。」
異常な呼吸から正常な呼吸にするよう促すと、目がどこか虚ろなウォールは私の言葉通りに深呼吸を始めた。
「・・・大丈夫、じゃなさそうだけど・・・ちょっとはマシになったね。
私の部屋、近いし入れたげる。
お茶飲んで一息ついてから私室に戻りな。」
よっこいしょ、とウォールの膝裏と背中に手を差し込み、お姫様抱っこをする。
(あ、ウォール思ったより軽い。)と感想を抱いてウォールを部屋に運び入れる。
ウォールは目をぱちくりさせ、事態を確信したのか、顔を真っ赤にした。
「な、あ!お嬢様!?!?やめてください!!
私は男です!!!」
「はいはい。暴れない暴れない。
天使の羽みたいに軽いから気にしないで。」
「は、はぁっ!?!?!?!?」
軽いと言われてショックを受けたのか両手で顔を隠して「軽い・・・男の私が、軽い・・・」と細々と言い始めたウォールにクスリと笑ってしまった。これは不可抗力です。
・・・まぁ、もちろんのことウォールに怒られたが。
トス、と柔らかいソファーにウォールを降ろし、私はお茶の準備に向かう。
「ライネお嬢様!?お茶なら私がやります!!」
「駄目駄目。今はウォールが私のお客さんでしょ。お茶ぐらい入れさせて。」
慌てたようにウォールがソファーから立ち上がるが、一蹴して再度ソファーに座らせた。
紅茶を二人分カップに注いでポットと一緒にテーブルに持っていく。
素早くテーブルにセットし、ウォールの前にカップを置くと、ウォールは恐縮したようにペコリと頭を少し下げた。
反対側に私の分のカップも置いて、私も席に座る。
「どうぞ、飲んで。」
私がそう告げると、彼は1口飲んでほぅ、と息を着いた。
私も1口飲んでみると、馨しい紅茶の香りが口いっぱいに広がった。
うん、成功したらしい。よかった。
「・・・落ち着いたかしら。」
「ええ。・・・ありがとう、ございます。」
窓にはまだ雨が叩きつけられて雷が鳴っているが、ウォールはひとまず落ち着いたっぽい。
何を話すことも無く、沈黙が2人を包んだ。
「・・・あの。」
「・・・なに?」
ウォールが、ポツリと話し始めた。
「私の事、気にならないんですか?」
「・・・は?
いや、ウォールは確かにイケメンだけど好きになったりはしないかなぁ、うん。」
「いや、そういうことではなく!!
・・・その、だから、私がああなっていたことについて、とか・・・。」
「あぁ、そういうことね・・・。
・・・うん。別に話さなくていいよ。」
「・・・何故?」
「だって別に話したくないでしょそういうの。」
(私も特別知りたいと思ってるわけじゃないし。)と思いながら、ぼんやりしているウォールに笑いかける。
「私自身、自分の過去詮索されるの嫌だと思う人だからさ。
ウォールも無理して話さなくていいよ。
・・・まぁとりあえずお茶して、いい感じに眠くなって各々解散して寝ようよ。」
そこまで言って紅茶を飲むと、ウォールもそれに習うように紅茶を1口飲み、カップを机に置くと私の方を真っ直ぐに見た。
「・・・僕が、いえ、私が話したいと、貴女に聞いてもらいたいと言うのは・・・迷惑ですか?」
嘘など許さない、というようにこちらを真っ直ぐに見つめるウォールに驚いてしまう。
彼がこんなに真っ直ぐ私を見ることなんて久しぶりだ。
「・・・いや、迷惑なんて思わない。
もし私に話して貰えるのなら、聞かせてもらうよ。」
「・・・では、聞いていただけますか。私の過去を。」
「うん。是非とも、聞かせて。」
ウォールは小さく頷いてから自身のことを話し始めた。




