亡者の怨み
エンディングは近い? ガンガン行きますんで、最後までお付き合い下さい。
マデュラの自爆をきっかけに、イシュケルは『感謝』という強い感情を抱き始めていた。
本来人間だったイシュケルが、持ち合わせていた感情に違いはないのだが。
ガルラ牢獄はひっそりと静まり返る。
怖いくらいの静けさだ。
密室とも言えるこの空間の先に、何が待ち受けているのだろうか?
イシュケル達が、先に進むと錆び付いた鉄格子の向こうに、おぞましい声を上げながら眼光を光らせる物体がいた。
その物体は、両手足に繋がれた鎖を引きずりながらにじり寄る。
「待て! ここを素通りするつもりか?」
肋から、内臓が飛び出し掛けながら、その物体は言った。
変わり果てた姿だが、その物体は紛れもなくアルザスだった。
イシュケルは言う。
「貴様もか? 死に損ないが!」
「この怨み、晴らさずには死ねない……お前らを今度こそ、葬ってやる」
アルザスは、鎖を引きちぎり鉄格子を破壊した。
「ウォーミングアップは終わりだ。どいつから死にたい?」
アルザスは、飛び出た目玉をギラつかせ、イシュケル達に睨みをきかせる。
「イシュケル、こいつは俺にやらせてくれ」
名乗りを挙げたのはウッディだった。
「良かろう。ここはお前に任せた」
イシュケルは、後退し腕組みをしながらその様子を伺う。
不安そうな面持ちで、イセリナ達は立ち尽くす。
そんな様子を見て、イシュケルは声を掛けた。
「ウッディなら大丈夫だ。仲間なら信じてやるんだ。男にはやらなきゃいけない時があるんだ。ただ単にウッディは、今がその時だと言うことだ。サハンよ、お前も男なら、ウッディの生きざまをしかと胸に刻むんだな」
イシュケルの言葉に、イセリナ達は安心し頷いた。
アルザスは、大剣を構えイシュケル達を見据える。
「おっと、お前の相手はこの俺だ!」
「お前が相手だと? 冗談も甚だしい。お前ごときに、我が倒せるか?」
ウッディは、ニヤリと白い歯を見せると、次から次へとあらゆる属性の魔法を繰り出す。
「くっ、少しは出来るようになったようだな?」
あれほどの魔法を喰らいながらも、アルザスは涼しい顔をしている。
だが、それはウッディも同じこと。
息一つ切らさず、ただ威嚇した程度の態度を見せる。
「次はこっちから行くぞ!」
アルザスは、肉片を引きずりながら大剣を振り上げる。
「そんな隙だらけの攻撃、避けろと言っているようなもんだ」
ウッディは、軽い足取りで大剣を回避しながら、アルザスの懐に魔法をぶちこむ。
よろめいたアルザスに、ウッディは更に追撃をするかのように炎の魔法を撃ち込んだ。
巨大な火の塊は、アルザスを火だるまにした。
「グォォォ、舐めるな!」
火だるまになったアルザスは、危険を省みず全身で覆うようにウッディを襲った。
「頭の悪い奴だ。一度お前に苦戦した自分に腹がたつぜ!」
ウッディは、両足を踏ん張りその場から動こうともしない。
「馬鹿な、避けようともしないのか?」
「馬鹿はお前だ」
十分過ぎるほど、詠唱に時間を取り、襲い掛かるアルザスに、目が覚めるような魔法をぶちこむ。
「二度と、その汚い面を見せるな」
一瞬何が起きたか分からないほどのスピード。
瞬時にゼロ至近距離から、何十もの魔法を撃ち込んでいたのだ。
火だるまになったアルザスは、断末魔をあげ黒い炭に変わっていった。
「ま、こんなところか? さ、先に進もうぜ!」
呆気に取られるイセリナ達を横目に、ウッディは笑顔でそう言った。




