↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

血湧く月輪

「弱い者は喰われ貪られる。それが世の常だ。誰が天下を収めようがそれは変わらん」


 炎が燃え盛っている。

 こちらとあちらを隔てる吊り橋の下では、煮立った湯釜のごとく、血の河がごぼごぼと煮えたぎり、黒く墨を固めたような天には、やはり血肉の如き月輪《がちりん》が脈打つように燃えている。

 吊り橋の向こう側では、骸の軍勢を率いる赤い妖狐がこちらを睨んでいた。顔には笑みとも、悲哀ともつかぬ、凄絶な覚悟が湛えられている。


「ならばせめて、誰もが生きているという真《まこと》の充足の得られる天下戦乱、戦獄の世を、この俺が築いてやろう」

 邪悪な笑みを浮かべる男が、太刀造りの二尺七寸を振るった。吊り橋の縄がばさりと落とされて、こちらとあちらを断ち切る。

 必死に声をかけようとするが、喉は糊を詰めたように固まって、まるで動かない。体を動かそうにも、金縛りにあったように、指一本たりとも曲げることもまかり通らなかった。


「そこで見ていろ、燈真《とうま》。貴様に俺は止められん」

 そう言って、かつて兄のように、友のように慕った東雲嶺慈《しののめれいじ》は、勁烈《けいれつ》な覚悟を背負い踵《きびす》を返した。

 赤い陣羽織には、狐の牙を模した紋所が黒く染められ、炎に照らされて翻っている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。