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引きこもりのお飾り妻は悪妻になって離婚したい  作者: 赤城ハルナ/アサマ


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5/15

見かけ上は普通の夫婦みたいです(兄妹かな?)

 ライリー家の朝は遅い。


 起床時フィンはモーニングティーを持ってわたしの寝室に入り、おはようの挨拶をする。寝姿を襲うということは決してないから安心です。今のところいい夫です。


 何品もの料理が並ぶ朝食後、フィンはわたしを散歩に誘う。散歩用ドレスに着替え、レースの手袋とフラワーアレンジメントがお洒落な帽子を身に付け、日傘を差し、フィンにエスコートされ近くの公園へ。

 行きかう人に挨拶しながら優雅に散歩。会話はほとんどフィンからなので、わたしは微笑んでいるだけ。なんたって『お飾り妻』ですからね。

 フィン・ライリーは夫ではなく、兄もしくは社交界でのお師匠様と考えればどうだろう。そうすれば自然体で付き合えるのでは。


 散歩から帰るとフィンは外出する。

 王宮での仕事だったり、なじみのクラブだったり、ダービー、時には狩猟ツアーなどいろいろ。

 ホントに社交家なんだな。男女年齢分け隔てなく色々な人と楽しくおしゃべりするのが好きみたい。わたしとは正反対。


「ライリー家では散歩が日課なんですね」

「首都の知り合いはたいてい散歩をしているかな。健康にいいし、気晴らしにもなるだろう」

「お屋敷の裏に森がありますけど、そこで散歩はしないんですか?」

「いや、あそこは立ち入り禁止だから入らないように」

「はい……?」


 立ち入り禁止とは?





 今日は結婚後フィンと初めて出席するパーティー。

 慈善事業のための催し物らしく、参加費は慈善活動資金になるとのこと。というわけで、装いは少々大人しめに。


 フィンにエスコートされて会場に入った途端、令嬢方からの視線が刺さった。

 それもそう、今までフィンはたくさんのご令嬢に囲まれていたのに、どこの誰なのか謎な女が独占しているわけだから。しかもブルネット・グリーンアイのきわめて地味で(表向き)気弱そうな小娘。そんなご令嬢たちの思惑をまったく気にせず、フィンはわたしを『ぼくの可愛い奥様』と言って紹介する。

 天然タラシ。


 フフン、あなた方にこの座を明け渡すことなんてしないわよ、フィンの側を離れないんだから。だって今の生活は居心地がいいんだもの。しゅうとのいない夫婦だけの生活、買い物に便利な都会住み、しかも子供を産まなくていい。


 何だか都合よすぎない?


 ただし、フィンが令嬢たちに愛想を振りまいて親密になる浮気旦那になったら目も当てられないし、その可能性を否定できないから、心の中にもやもやが。

 それに……後継者は『考えてあるから心配することはないよ』というのは、どういうことなんだろう。掘り下げて聞きたいけれど、それ以上聞かれたくないみたいだし、答えてもくれない。





「アイネはもう少し体力を付けた方がいいかな」


 その意図は?


「お義父様みたいなことを言うんですね」

「父は子供を産む嫁としかあなたを見ていない。あの人は自分以外を人間として見ることはない。ぼくに対してもそうだ。そういうことではなく、部屋に籠もってばかりでは不健康だろう。妻には健康でいてほしいからね」

「そ、そうなんですか(親切心)? どうやって体力を?」

「朝の散歩に加え、週二日ほど乗馬の練習をしよう」

「経験がありませんけど」

「ぼくが教えるから大丈夫だよ」


 ということで、乗馬の練習を始めることになった。奥様の健康を気遣う気の利く夫だわ。こういうところも女心をくすぐるのよね。


 首都のライリー屋敷の厩舎には、狭いけれど乗馬コースがある。わたしはフィンに用意してもらった女性用の乗馬服を着て厩舎へ向かった。

 女性は横乗りです。運動音痴なので無理です。馬が大きくて怖いです。乗れる自信がありません。振り落とされる自信ならありますけど。


「フィン、怖いわ……」

「大丈夫、ぼくが横でサポートするから」

「でも……落ちたら……」

「大丈夫だ、ぼくが落とさないから。さあ!」

 よいしょっとフィンに乗せてもらったとたんにぶわ~っと視界が広がる。今まで見えていなかったものまで見えるようになったみたい。

「す、すごい、景色が全然違う!」

「だろう?」


 馬に乗って走るわけではなく、並足で歩くだけ。フィンが隣にいたから初めての乗馬でも安心して挑戦できた。フィン・ライリーって……お兄さんみたい。

 それからは午前中の散歩に加え週二回の乗馬で、心なしか筋肉が付いて体幹も鍛えられた(?)ような気がする。気がするだけかもしれないけれど。


 晩餐が終わり就寝時間になると、フィンは必ずわたしの部屋へ温かい飲み物を持って来て、額にキスしてお休みを言う。それだけなのに何だか嬉しい。至福の時間。王子様にキスされるお姫様みたい。フィン・ライリーが夫というのが奇跡に思える。


 ただのプレイボーイモテ男かと思ってたけれど、モテるのにはそれなりの理由――マメ男――というのがあるのね。





 ライリー家タウンハウスの庭園は低木の小道が迷路のようになっていて、所々に花壇がある。その中に東屋があるので、ティータイムに使っている。

 日中暇なわたしは、午後の空き時間になると絵を描くようになった。部屋から見た庭園なら角度や季節によって景色が変わるから、いくらでも描けそう。

 さらに、ライリー家で眠っていたピアノを調律してもらった。楽譜は実家から持ってきたもの。単なる暇つぶしだとしても、ピアノを弾けるのは嬉しい。この世界の曲に飽きると前世で弾いたポピュラー音楽を弾いている。


 結婚生活の始まりはそんなに忙しくはなく、どちらかといえばのんびりお気楽だった。フィンは優しいジェントルマンだしね。理想の結婚生活ではなくて?


「それじゃあアイネ、行ってくるよ。夕刻には帰るから。大人しく待っているんだよ」

「子供じゃないんですから大丈夫です。行ってらっしゃいませ、フィン」


 このあとモテ男フィン・ライリーが原因で、予想もしない、いや、予想通りの試練が待ち構えることになる。



×××××××××××××××××××

「ぼくを天国へ導いてくれるかな、ダフネ」

「もちろんよ、ライリー様。あなたの欲望をすべて受け止めるわ」

×××××××××××××××××××

※理想の結婚生活には罠がありました……。

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