悪妻作戦その二【浮気妻を演出】/まずは外見からだぜ
散財がダメなら次はお色気作戦。堂々と浮気をしてやるわ!
あっちだって浮気してるんだもの、わたしがしてはいけない理由はない。
悪女や悪妻というと妖艶なお姉様を想像する(二人の愛人は論外)。
露出の多いドレス姿で殿方を誘惑するわけ。
フフフ、これでいくわ。
浮気して離婚なら慰謝料を払わなければならないかな。分割払いでいいのかな。十年ローンくらいで払えれば問題ないわ、生活はだいぶ質素になるけれど。
そもそも引きこもりのわたしがどこで殿方に会えるのか。
パーティーではフィンと一緒だからほかの男性と接触できないし、フィンがわたしと離れるときは強制的に婦人方の中に入れられるし。
(自分は愛人とよろしくやってるくせに、お飾り妻には男を寄せ付けないという姑息な策略ね! 無駄に頭が回る男はやっかいだわ)
とりあえず形から入ることにして、大胆露出多めドレスを買おう。
※
疲れが取れた頃合いでアンと再び街へ。
高級商店街のショーウインドーを眺め、キラキラで派手なドレスが飾られている洋品店に入る。
こ、これは。
前世のキャバ嬢が着るような雰囲気だわ、ここはどういったお店なんだろう?
「アイネ様、本当にこんなドレスを買うんですか? これは……イブニングドレスというよりは、どう見ても夜のお仕事……」
「アンがそう思うのならこれでいいのよ、なるべく真っ赤で露出の多いドレスが欲しいわ」
「えぇぇ……」
何着か試着後、わたしは胸と背中がぱっくり開いた深紅のドレスを購入した。ノースリーブで背中はウエストまで開いているカルメンドレス。
まさしく悪妻。
もちろんライリー家のツケですよ、なんたって婚家の財産を食いつぶす『悪妻』だからね。
ヲ~ッホホホホ!
ちょ~っと胸がスース―するけどね!
今までこういった大胆ドレスを着たことがなかったわ、マケナニー家でもライリー家でも。わたしのために用意されたパーティードレスはどれも淡い色で、胸や背中はもちろん、首や手首までレースでしっかり覆われていた。
特にフィンは肌の露出を嫌うから。
あんなボンキュッボンなお姉様を愛人にしてるくせに、妻には貞淑を求めるなんて。
許せるもんか!
不平等!
男尊女卑粉砕!
粉々になって散ってしまえ!
※
ともあれ勝負ドレスを用意した。あとは適当なパーティーへGO!
「ねえアン、わたしにパーティーのお誘いはないかしら?」
「え~と、いくつかお茶会の招待状はあります。ですがパーティー関係はすべてご主人様のところで止まりますので分かりません」
そうだった、わたしへの手紙はフィンによって必ずチェックされるのだ。実家からの手紙でさえも。
まるで『妻』という名の囚人みたいだ。
これではひとりでパーティーなんて夢のまた夢、殿方を誘惑なんて不可能。
それならどうする? というか、お茶会へ行くしか選択肢はない。
「お茶会へ出席してみようと思うの。招待状を渡してもらえる?」
二通来ていた。どれも来週開催。
近い方の屋敷でいいかな。
今までお茶会の招待状は内容を見ずにそのまま執事に返していたけれど、フィンがお断りの返事をしていたのだとしたら、ちょっと反省。
それはアハーン子爵家の若奥様、オーラ様主催のお茶会だった。ライリー家の若奥様にご挨拶したいと一筆したためてあった――聞いたことのある家名。
「フィンに知られたくないから、アンが先方に直接届けてくれる?」
「かしこまりました」
※
お茶会当日。
「アイネ様、こんな姿でお茶会へ行くんですか!? もう秋になりますよ。せめてストールを……」
「いいのよアン、これでいいの(だってわたし、もうすぐ離婚するんだもの)」
先日購入した大胆ドレスで人生初めてのお茶会。胸と背中がス~ス~するけれど、気合で乗り切るつもり。
にしても、さ、寒い……今日は霧が出て気温が低い。この世界には天気予報なんてないから、前もって服装の調節ができない……ストールを羽織るべきだったかも……馬車は出発したからもう遅い。
大丈夫、お茶会のあいだ我慢するだけよ。
今日はとびきりの賄賂を御者に用意したから、フィンに告げ口なんてしないはず。
「アン、御者に迎えの時刻を伝えたら、しばらくアハーン家で控えていて」
「かしこまりました、アイネ様。楽しいお茶会を」
★ちょっと恥ずかしい、だいぶ恥ずかしい、世間知らずなアイネでした。次回フィンがお茶会に乱入します、ヤバいです、アイネがバカっぽくて見てられません。




