カラオケ Part3
「ほらー、二人ともいつまでイチャイチャしてるのー?」
翠が顔をニヤニヤしながらあきれたような言葉を漏らす。
「そっ、そうだよね!」
今まで俺に膝枕をされていたのが急に恥ずかしくなったのか香織は頬を赤らめながら俺から離れる。
ロシアンルーレットの外れ
「そういうのは二人っきりのときにゆっくりしなよー」
「二人っきりのとき……」
香織の頬がさらに赤くなる。頭から湯気が出てきそうだ。かわいい。
「香織ちゃんがそんな状態じゃ歌えないだろうから、次は大地が歌ったらどうかな?」
夜叉神さんと翠は最初に歌ったし、大地も歌った。残るは俺と香織になるわけだが、香織の状況的にも歌えなさそうだ。
「……歌うのか」
「ではどうぞ」
夜叉神さんからタブレット端末を受け取る。
何を歌おうかとタブレット端末をスクロールしていると、ちょうど俺たちが小学生の頃に流行った曲が目に入った。他によさそうな曲もなかったしこれでいいだろう。
“予約”の一覧にその曲を入れる。
「ずいぶん懐かしい曲を選んだね」
「まーちょうど私たちが小学生の頃の歌だからねー」
「そうですね。私の小学校では運動会の時に学年全体で踊ったりもしました」
そういえば、俺の通っていた小学校でもそんなことがあった。その時流行っている曲を踊るのだ。
なぜか六年生だけは毎年ソーラン節を踊っていたが。
「っと、そんなことよりも和樹、早く歌ってー」
「あれっ? でもこの曲……」
香織が何かを言おうとしていたが、それを遮るように曲がスタートする。
まあ言おうとしていることは大方予想できるが。
◇ ◇ ◇
その後、俺が歌い終わると香織が感嘆の声を漏らす。
「和くんすごいね! あの歌すごく高音が多いのに上手だった」
「和樹は中学の合唱祭でも男声パートが出なかったから一人だけ女声パートにいたんだよー」
「その話は結構な黒歴史なんだけど……」
今はさほど気にしていないが、当時はかなり悩んだ。一人だけ女声パートに入るのも恥ずかしかったし、何よりもよくいじられた。
中学の友達曰く、「一人だけハーレムはずるい、神は不平等だ!」と言ってキレていた。俺はそこまでポジティブに考えることができなかったので、割とマジで変わってほしかった。
「最後は私が歌うよー」
香織がマイクを手に取り立ち上がる。
「がんばれーかおりん! ほらっ、和樹もなんか言いなよ」
「がんばれ、楽しみにしてる」
「……うん」
◇ ◇ ◇
「いやー、かおりんすごかったねー」
「そうですね、まさか香織ちゃんが満点をたたき出すとは思いもしませんでしたが……」
そう、香織はあの後に満点をたたき出した。一度目に歌ったときに惜しくも満点を取ることができなかったことが悔しかったのか何回かやり直した。俺は点数など気にせず、純粋に香織の歌が好きになってしまい聞き入っていた。
そして、何度目の挑戦かわからなくなったころに香織の声が裏返った。なんと満点を取ったのだ。
「今日はたくさん歌えて満足だよ」
言葉に嘘はないのだろう、いつもよりも声のトーンが高い。
「うんうん、私も昨日の物足りなさが解消したような気がするよー」
「それならよかった!」
それから、駅前まで移動したところで解散という流れになった。
「それでは私はこれで失礼しますね、あまり帰るのが遅いと心配をかけてしまいそうなので」
「うん、またねー」
夜叉神さんはペコリとお辞儀をして帰っていった。
「それじゃあ私は大地と二人で行く場所があるからー」
翠はいきなり大地の腕に抱きつき、意味ありげな視線を大地に送った。
「えっ? そんな約束……まあいいか、それじゃあ二人ともそういうことだから」
それから大地は翠に半ば引きずられるような形で帰っていった。
「……俺たちも帰ろう」
「うん」
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