カラオケ
「ここがカラオケと言うところですか」
駅近のカラオケの六人用部屋に入ると、夜叉神さんはキラキラした目でカラオケマシーンやマイクをさわりはじめた。
「わぁっ、ご飯も食べられるんですか?」
夜叉神さんは机におかれていたメニューを見てさらに目をキラキラさせる。
「うん。歌えるしご飯も食べられて、漫画なんかも置いてある」
「漫画もあるんですか!? カラオケってすごいですね!」
「おーい、ちーちゃん。今日は歌いに来たんだからまずは歌おー?」
「そ、そうでした。すっかりテンションが上がってしまって……」
「カラオケに来たのなんて前に和くんと一緒に来たとき以来だよ」
いつの間にか、香織が横に立っていた。
「前に? こっちに戻ってきてからカラオケになんて行ったか?」
「ううん。引っ越す前に和パパママと私のお父さんとお母さんで来たとき以来。覚えてない?」
……たしか小学校一年生の頃に、俺と香織が「どっちが歌が上手いか勝負」をしていたときに、なかなか決着がつかなかったから、カラオケに行った気がする。結果は香織が一点差ぐらいで勝った気がする。
「あのとき和くんが私に負けて大泣き……うひゃっ!? もうっ、和くん! いきなり口を押さえないでよ!」
「頼むから翠がいる前でだけはそういうことをしゃべ……っ!?」
「……?」
俺がいきなり口をつぐんだ理由がわからなかったのか、香織が一瞬疑問に思ったようだが、すぐに理由がわかったのか顔をカアッと赤くした。
簡単に状況を説明すると、俺が香織を壁に押し付けて、口を押さえつけている。加えて、翠に聞こえないように香織の耳元に顔を近づけていたから香織との距離がさらに近くなっている。
「「…………」」
「おーい、お二人さんはいつまでいちゃいちゃしてるのかなー?」
振り返ると翠がニヤニヤしながら立っていた。その後ろで大地は微笑ましいものを見るように、夜叉神さんにいたっては顔を両手でおおっていた。
「和くん」
「ん?」
香織は俺の耳に顔を近づけると、
「そういうことは二人っきりの時ね」
香織はとろんと甘えるような声で言った。
まさかそんなことを言われると思っていたかったから、しばらく動けなくなってしまう。
「わーお、和樹が固まっちゃった。かおりんなんて言ったの?」
「ふふっ、ないしょ♪」
「ほらっ、和くん、歌おう!」
「おぉ」
誤字・用法の誤りなどありましたら気軽に報告してくれると嬉しいです。




