11・どこで読み間違えた?
意識を手放し損ねた身体は、テオに支えられてソファに座らされた。
テオが王位に就くには、フリーリアを王妃に据えなければならない。
そう宣言されたボンクラ共は、もはや蒼白だった。
このボンクラ共は、自身の娘たちをテオに差し出す算段だったのだろう。
前国王の時代では、第二貴族の地位だったボンクラ共。
第一貴族亡き今、その地位は空位。
自分可愛さでサッサと逃げたコイツ等は、もちろんその地位を狙っている。
その足掛かりの為に、テオを誑し込みたいハズだ。
―――が。
テオの宣言に同意を示したのは、オーストリッチと北の兵士たち。
テオとフリーリアに向かって膝を折る。
そして。
「我が祖国ホージュは、新国王マテオ陛下と新王妃フリーリア陛下に変わらぬ親愛を誓おう。
これは、我が弟であるホージュ国王ニトジムの意思である」
ジニムの宣言に、ますますボンクラ共の顔色が無くなった。
南の大国ホージュがフリーリア領主と和議を結んだのは周知。
そして、ジニムがフリーリアの騎士であるのも周知。
そのジニムが、ホージュ国王の姉であると宣言した。
それだけでも、このボンクラ共はフリーリアを無視できないのに、そのうえ大国ホージュがフリーリアを王妃と認めた。
北はすでにフリーリアにのみ忠誠を誓っている。
フリーリアが王妃に就くならば、北はオーストリッチの属国となるだろう。
―――やられた!! 甘かった!!!
まさか、テオがフリーリアを王妃に望むとは思わなかった。
テオに、その気があるとは思わなかった!!
「すぐに民たちに知らせを!!
この国をお救い下さった英雄マテオ様が国王として即位されると。豊穣の女神が王妃として立ってくださると。
マテオ様が父としてこの国をお導き下さり、豊穣の女神が母として繁栄の祝福を与えてくださると!!」
バタバタと忙しなく動き出す周りの者たち。
気づけば、部屋にはテオとフリーリア、ジニムとポトスの4人だけになっていた。
「嵌めたわね・・・」
このメンツで遠慮はいらない。
「人聞きの悪い。これが最良だろう?」
いつかと同じ、嫌な笑いのテオ。
「それとも、女神の塔に閉じ込めてほしかったか?」
父王はそのつもりだったぞ、と言われて口を噤む。
「まぁ、諦めろ。自由は制限されるが、平和は約束されてんだ」
くつくつと笑うテオは本当にムカつく!!
「・・・テオが、わたしを王妃に望むとは思わなかったわ」
「あぁ? フリーリア以外の女、妻にする気はないぞ?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
―――どうも、何かが噛み合わない。
「嫌がらせ、よね?」
「何がだ?」
「わたしを王妃に据えるの」
「国王の妻は王妃だろう? だったら、俺の妻は王妃になるだろ? 何で嫌がらせなんだ?」
「・・・・・」
「・・・・・」
これ以上は突っ込んではいけない気がする。
気がするけど!!
ジニムとポトスからの視線が痛いのはナゼだ・・・。
「どうして、わたしを王妃に望むの?」
「俺が国王になるのが逃げれないなら、これしか手は無いだろう?」
このまま離れたら、二度と会えないだろう? と言われる。
「別に、会わなくても・・・」
そう言ったとたんに向けられた2組の驚愕の眸。
「フリーリア様、まさか、お気づきになっていらっしゃらないのですか?」
「隊長、ちゃんと伝えましたか?」
恐る恐ると聞いてくるジニムとポトス。
はて、何のことだ?
「フリーリア。俺は、オマエが好きだと言わなかったか?」
今度こそ、ブラックアウトしてイイデスカ・・・?
―――――って、しないけど!!
「わたしが好きならそっとしておいて」
面倒事は嫌なの、と可愛らしくお願いしてみる。
「俺が、この好機を逃すと思うか?」
惚れた女を妻にする絶好の機会だぞ? と言われる。
「好きな女の幸せ望みなさいよ!!」
「好きな女だから妻にするんだろうが!!」
「それが嫌だって言ってるの!! 王妃なんて幸せになれるはず無いでしょう?!」
「世間一般から見れば王妃は女の最高の幸せだ!!」
「ンなハズあるか!! 政治なんて面倒事まっぴらよ!!」
ヒートアップしていく私たちに、二人は口を挟めない。
―――なんだろう、この既視感・・・
「甘くならないのはナゼでしょう?」
「さぁ・・・」
などと言うポトスとジニムの声が聞こえたが、無視。
「俺はフリーリア以外の女はいらないんだよ!! 黙って愛されとけ!!」
「―――っっ!」
真正面から、強く抱きしめられた。
―――やばいなぁ。流される・・・。
落ち着くために、深呼吸をひとつ。
ここで、こうして言い合っていても仕方が無い。
「フリーリア領から物資の手配を。戦火に巻き込まれた民たちに当座の食事だけでも配給して。
大部分を事前にフリーリア領に受け入れていたから難民は居ないと思うけど、大至急確認して。特に、子供たちや女たちが奴隷に落とされていないかの確認を急がせて。
平行して、戦場になった村々の復旧も指示しておいて。人員が足りなければ北の兵たちに協力要請を。資金は、あのボンクラ共から出させればいいわ。どうせ、私服を肥やしているんでしょうし。逃亡の後ろめたさがあるでしょうから、上手く巻き上げていきましょう」
冷静さを取り戻すために、最優先事項の指示を出す。
フリーリア領は平穏だが、戦地になった所は悲惨な状況だ。
早く復旧しないと、国内治安は悪くなる。
―――まだテオの腕の中なのは気にしてはいけない!!
それに、テオの目を上手く逸らす事ができれば逃走ルートも見つかるだろう。
フリーリアを王妃に、などと言っていたが、テオが国王になることは決定したのだ。
国王として忙しく動き回っていれば、テオの注意もフリーリアから外れる。
うまくそのタイミングをつけば、ここから脱出することも可能だろう。
―――えぇ、諦めていませんよ。
王妃になんてなるつもりは欠片も無い。
求めるのは、平穏無事な生活です!!




