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第2話

「隠家の子を入れて、かくれんぼをするんですか。うーん、何か嫌な感じがするな」

「どうしてそんなことを」

 定年間近なのに、未だにヒラ教師を続けている(本人に言わせれば管理職等は真っ平御免なだけ)同僚の男性教師は、私がクラス全体でかくれんぼを自由活動の時間にすると聞くとそう言った。


「いや、それなりの曰くがあるらしいんですよ」

 その男性教師は、そう前置きをして話をしてくれた。

 それこそ1000年余り昔、この地を開拓しようと武士団が来た。

 するとそこには鬼がいた。

 武士団は鬼と戦って鬼を追い払ったが、鬼はその際に武士団の長を呪詛した。

「お前やその子孫が隠れたら、その時は仲間ごとさらってやる」

 それを聞いた武士団の長は、そのことを忘れないように隠という名字を名乗ることにし、又、子々孫々かくれんぼをしないと決めたという。

 男性教師は、ざっとだがこういった話をしてくれた。


 話を聞き終えた私は首を傾げた。

「今一つ、趣旨が分からない話ですね」

「ええ、私もそう思います。唯、そう言った事情から隠家の人間はずっとかくれんぼをしていないそうです。私が30年程前、貴方くらいの歳の時に、この土地に教師として私はいたのですが。その際に私が聞いた話です。もっとも私の教え子に隠家の子はいなかったので面白い話があるな、と小耳に挟んだだけなのですが」

 その男性教師は補足した。


 21世紀の令和の時代に、平安時代の鬼が出る話か。

 私はそう考えた。

 それこそ前任の小学校時代に聞かされた話よりも古い、どう考えても迷信としか考えられない話が出てくるとは思わなかったな。

 それなら尚更、かくれんぼを隠としよう。

 そして、皆に迷信なのを分からせよう。

 私はそう決めた。


「明日の自由活動時間は何をやるの」

 子どもが1歳にもならないことから、妻は専業主婦をしているが、子どもを託児所に預けられるようになったら、非正規の教員として現場復帰を妻は考えていることから、私の職場で何があったのかの会話を妻は欠かさない。


「ああ、かくれんぼをクラス全体でするんだ」

「かくれんぼ?クラス全体でやるものではない気がするけど」

「勿論、実際には班単位でやるけど。ちょっと考えることがあってね。21世紀の令和の時代に、かくれんぼをしたらいけない、何て言う迷信を無くしたいんだ」

 私と妻はそうやり取りをした。


「迷信ねえ。本当に迷信なのかしら」

 妻は妙にそういうこと、幽霊とかのオカルト系のことを信じる性質だ。

 そうしたこともあり、僕がかくれんぼをクラス全体でやることに顔を曇らせた。


「おいおい、山の中とかでかくれんぼをするのなら危険だろうけど、学校の敷地内で昼間の授業時間の1つを使って、かくれんぼをするんだ。人が消えるとか、そんなことが起こる訳が無い」

 僕が笑いながら言うと、妻も

「そう言われればそうか」

 と気を取り直した。


 そして、自由活動の時間が終わった後。


「3年生の1クラスの児童全員が、担任教師と共に消えた?」

「ええ、次の授業時間になっても、担任教師も児童も教室内に誰一人戻ってきません」

 隣のクラスの担任教師が真っ青になって、校長に報告した。

 隣のクラスの担任教師は、件のクラスが次の授業時間が近づいても人の気配が戻らず、静まり返ったままなことから異変に気付き、校長に慌てて報告したのだ。


「手空きの教師は全員で消えた児童を探せ」

 校長は慌てて指示を出すと共に、担任教師のスマホに電話した。

 だが、その呼び出し音すらしない。

 事ここに至って、校長は完全に異常事態が起こっていることを認識した。

「すぐ警察に連絡だ。それから市の教育委員会にも一報を入れるんだ」

 校長は顔面を蒼白にして、自らに言い聞かせた。

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