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第1話

 夏のホラー2021参加作品になります。

 尚、3話で完結予定です。

 小学校の正規の教員になった私が2番目の小学校として異動した土地は、私の目から見れば普通の地方の都市だった。

 都市といっても、車で10分も走ればそれなりの山道に入ってしまう山間を流れる川のほとりにある江戸時代以来の歴史のある小さな都市だ。

 その一方で鉄道が通っており、首都圏の枢要部ならほぼ2時間以内で通勤可能という利便性もあって、首都圏に通う人が住むマンションや住宅が、それなりに立っている新しい街でもある


 大学卒業後、正規の小学校教員として採用された私が最初に赴任させられたのは、文字通りの田舎の小学校(平成の大合併により市立小学校になってはいたが、1学年1クラスしかなく、一部の児童の通学にバスが必要な小学校等、私としては偏見と言われようとも田舎の小学校としか言いようがない)で、未だに昔ながらの色々な人のしがらみがある土地だった。

 そして、何かというと昔の話(それこそ昭和の話)が持ち出される土地で、私としてはうんざりしていたこともあり、この新しい赴任先に私は喜んで赴任した。


 尚、この異動直前に私は初子の娘にも恵まれていた。

 大学の頃から付き合っていた同級生の恋人、妻(もっとも彼女は正規採用に中々至らず、非正規の教員として大卒後は働き続けていた。だが、そのことが却って良かったのかもしれない。私からのプロポーズに彼女はすぐに応じてくれ、更にハネムーンベイビーにも恵まれたのだ)や娘と共に、幸せな想いで私は異動先に赴任することになった。


 そして、赴任先で私は小学3年生の担任になった。

 赴任早々に入学したての小学1年生や中学受験を控えた小学6年生の担任を避けたいと考えていた私にとって、小学3年生というのは理想に近い担任だった。

 何しろ中学受験はまだまだ先だし、2年間の小学生生活で児童らも1年間の学校生活の流れが、それなりには身についている。

 私は有難いと考えて、担任の仕事を頑張った。

 

 そして、ゴールデンウィークが終わり、春の運動会も終わった頃、私は担任のクラス内であることに気付いた。

 隠という珍しい名字の男の子が、かくれんぼになると仲間外れにされているのだ。

「かくれんぼするか。隠は入ったらダメだよ」

 そんな声が直に私の耳にまで届いたので、私はそう言った子を別の用事で呼び出したついで、という形で事情を問いただした。


「隠を何でかくれんぼに入れないんだ」

「隠は昔からこの土地にある名字なんだけど、親に言われたんだ。隠とかくれんぼをしたら、人が消えてしまう。隠されてしまうんだ。だから、かくれんぼに隠を入れたらダメだと」

「えっ、親に言われたのか」

「うん」


 その子は元からこの土地に住んでいた家の出身で、そういった地元の話に通じている、というのは前任の担任教師からの引き継ぎ書に書いてあったが、隠家のことは書いていなかった。

「同級生の隠は、隠の家に連れ子で入った子なんだ。名字が隠になったら、途端に親からもうかくれんぼをあの子としてはダメだ、と言われた。本当は僕も隠とかくれんぼをしたいけど、親に逆らうのも嫌で、隠をかくれんぼに入れないんだ」

 その子の言葉は続いており、本音では隠とかくれんぼをしたいのが私には分かった。


「そうか。それなら、今度のクラスの自由活動の時間の時に、クラス全体でかくれんぼをやることにしようか。そうすれば、先生に言われたからだ、と親に言い訳ができるだろう」

「えっ、隠とかくれんぼをしていいの」

 その子の顔がほころんで、喜んだ声を挙げた。

「ああ、今度のクラスの自由活動の時間にな」

「ありがとう。ずっと隠を仲間外れにしていることが、自分でも嫌だったんだ」

 私はその子とかくれんぼをする約束をした。

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