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第五章 弐(過去)

弐 大城貴文・新畑謙介(過去)


 ひどく目付きの悪い少年が、そこにいた。


「――神谷(りく)くん、だね?」

 こちらの問い掛けに、少年はビクリと肩を震わせる。かと思うと、小学生のそれとは思えないほどの三白眼で、ギロリとこちらを睨みつけた――かのように見えたのだけど、恐らくは怯えているだけなのだろう。これでも、職業柄人を見る目はあるつもりだ。この少年は、ただ単に目付きが悪いだけ。緊張したり怯えたりすると、その三白眼が威圧になってしまうのだ。

「……そうですけど……」

 案の定、少年の声は緊張している。当たり前だ。葬式の場で、見知らぬスーツ姿の男に話しかけられて、緊張しない小学生がいる訳がない。

「ああ、ごめんね。怪しい者じゃないんだ――」

 見知らぬ大人にそんな風に話しかけられて、警戒しない小学生がどこにいるだろう。自分の芸のなさに、思わず笑い出しそうになる。

「私は、潮見(しおみ)交番に勤務している、新畑という者だ」

「…………ッ!」

 刹那、少年の目が泳ぐ。どうやら自分の恩人の職業ぐらいは認識していたらしい。

「そう――君の命を助けた、大城巡査長の後輩だ――」


 その知らせを初めて聞いた時は、正直、何かの間違いだと思った。先輩の大城貴文が海で溺れて死亡――

 そんな、馬鹿な。

 信じられなくて、何度も聞き直した。人間違いではないかと、何度も確認した。だけど事故を担当した所轄署がそんな間違いを犯す訳もなく、その場には彼の家族もいたということで、皮肉にも彼の死を証明することになってしまったのだった。

 あの、大城先輩が――。

 頭が真っ白になった。

 確かに――確かに、彼は向こう見ずの単細胞で、考えなしに突っ走るところが多々あり、後輩である自分がフォローに回るのなんて日常茶飯事だったのだけど――だけど、それでも警官としては優秀だったのだ。面倒見がよく、人情家で責任感が強く、周りからの信頼も厚くて。確かに軽率な行動も多かったが、どれも些細なことばかりだった。命を落とすような馬鹿な真似など、決してするような人間ではなかったのだ。この辺の海域は離岸流が頻繁に発生するために遊泳禁止となっていて、そんなことは地元の警官である大城だって重々承知していることの筈なのに……。よりによって、家族と遊びに行った海で、溺れ死ぬだなんて。あまりにも、大城らしくない。

 だけど、詳しい事情を聞いて、少しだけ見解が変わった。


 彼は、溺れた小学生を救出しようとしていたのだ。


 幸いにも、その小学生は一命を取り留めたらしい。

 と言うか、今自分の目の前にいる少年がそうだ。

 大城の死から二日――今日は、彼の自宅で葬儀が行われている。ひろみさんが喪主を務めるその葬儀には、親類や警察関係者、友人は勿論、普段親しくしている人々が多く駆け付け――大城が生前、いかに人望を集めていたかを、改めて思い知らされた。

 参列者の中には、大城が救出した少年も混じっていた。

 先程までは母親らしき女性にべったりとくっついて――と言うか、周囲の視線から逃れるため、母親の影に隠れてばかりいて――なかなか一人になることがなかった。しかし、不意に彼女がその場を離れたことで、ようやく話しかけるチャンスが出来た。軒下に身を潜め、自分のつま先を見つめる少年に近付いて――冒頭の場面へと戻る。


「体は、もう大丈夫なの?」

 意識して、優しい声で、柔らかい言葉で、彼に語りかける。

「……あ、はい……」

 顔を俯けたまま、小さい声で答える。

「そうか、よかった。君に元気を出してもらわないと、助けた先輩も浮かばれないもんね」

「…………」

 一瞬、視線がこちらに向くが、慌てて逸らされる。何だか、異常にオドオドしている。最初は、単に警戒して緊張しているだけなのだと思っていたが――少し、様子がおかしい。明らかに何かに怯えている。考えるまでもなく、怯えさせているのは自分自身なのだろうけど……。

「――えに、きたんですか……」

 陸少年が口元だけで、何かをモゴモゴと呟いている。

「ん? 何かな? よく聞き取れなかったんだけど」


「僕を……捕まえに、来たんですか……」


 少年の唐突な発言に、思わず吹き出してしまう。いくら自分が警察官だからって、その発想は安直すぎるだろう。そもそも、何故そんな言葉が出てきたのかが、分からない。

「……なんで笑うんですか……」

 こちらが笑ったのが不服だったらしい。露骨にムッとした顔をしている。相変わらず、その視線はこちらを捉えることはないのだけど。

「いやいや、ゴメンね。あまりにも突飛なことを言うものだからさ」

 笑いを噛み殺しながら、言葉を重ねた。

「何で、私が君のことを捕まえなきゃいけないんだい? 確かに私は警察官だけど、罪を犯してない人間を捕まえることなんてできないんだよ?」

「……だって、僕なんかを助けたから、あの人は死んじゃったんですよ……」

 陸少年の俯き角度が、ぐっ、と深くなる。


「僕が――あの人を殺したんです……」


 呻くような声色で告げられたその言葉に、思わずハッとなる。

 この少年は、苦しんでいるのだ。

 後悔に、罪悪感に、自責の念に、押し潰されようとしている。まだ十年少ししか生きていないというのに、何て重い十字架を背負ってしまったことか。 

「僕なんか……僕なんかを助けて、死んじゃうなんて……僕には、そんな価値、なんか、ないのに……」

 声が震えている。

 躰も震えている。

 この子は、大城に命を助けてもらって、それでもまだ――苦しみ続けている。

 話しかけて正解だった。神谷陸は、救いを求めている。自分にできることなど高が知れているが――それでも、何もできない訳ではない。いつだったか、大城に言われた台詞を思い出す。どれだけ気持ちがあっても、どれだけ心配していても、何もしないのでは何も変わらない。できることがあるのなら、すぐにやるべきだ――と。


「……君は、価値のない人間なの?」

 わざと、キツい質問を選択した。びくり、と陸の肩が反応する。

「……僕、なんて……」

 声の、躰の震えが大きくなる。ほとんど泣きそうな声で、少年は言葉を紡ごうとしている。

「僕、なんて……みんなにバカにされて、みんなに仲間はずれにされて、みんなに嫌われてて……僕なんか、いなくなった方がいいのに……」

「なるほど。それで、あんな馬鹿な真似をしたんだ?」

「――――ッ!」

 ここに来て、ようやく陸少年の顔がこちらを向いた。だけど、その目は大きく見開かれている。瞳の奥に浮かぶのは、驚愕か、恐怖か、困惑か――恐らくは、その全て。


「自殺――だったんだね?」


 悪いとは思ったが、少し調べさせてもらった。あの事故に関して、不自然な部分があったからだ。

 海で溺れた陸少年を救出しようとして、離岸流に足を(すく)われてしまった――というのが、あの事故の全体像だ。大城の行動と、その後の不運に関しては、とりあえず納得がいく。おかしいのは、陸の行動に関して、である。

 彼は、何故海で溺れていたのだろうか。

 現場は数キロに渡って砂浜が広がっていて、誤って足を滑らせるような崖や岩場など、どこにも存在していない。さらには、当日はほぼ無風状態だったらしく、何かが風で飛ばされて、それを取るために海に飛び込んだ――という状況も考えられない。

 つまり彼は、自分の意思で海に入っていったということになる。 しかも、彼は着衣の状態で溺れていたという。小学五年にもなって、服を着たまま、それも一人で水遊びをするなんて、到底考えられない。となると、考えられるのは一つだけ――入水自殺だ。

 陸の通う学校を訪ね、同じクラスの児童に何人か質問をぶつけてみたりもした。結果はビンゴ。

 彼は、いじめられっ子だったのだ。

「……だって……」

 彼の視線が再び下を向く。小さな黒目が泳いでいる。必死で言い訳を探しているようにも見える。

「だって、生きてても辛いことばっかりで……逃げ道もなくて、誰も助けてくれなくて、だからしょうがなくて……」

「しょうがなくて、死のうとした訳だ? そんな君を助けようとして、先輩は命を落としたんだ?」

 知らないうちに、意地悪な口調になっていた。別段、腹を立てた訳ではない。子どもの言うことにいちいち目くじらを立てていたら、警察官など勤まらない。だけど、


「――僕なんか、助けなくてもよかったのに――」

 

 その一言で、何かが切れた。

 頭が芯から冷え、冴えていくのが分かる。怒りを感じると、逆に冷静になってしまうタチなのだ、自分は。同僚からは、声音が冷たくなって、余計に怖いと言われているが。

「見てごらん」

 陸の肩を掴み、葬儀が行われている室内を見るように体の向きを変える。この前まで明るい雰囲気に満ちていた大城家は、今や読経とすすり泣きで、暗く沈んでいた。

「みんな、悲しんでいるよね。先輩の早すぎる死を悼み、嘆いている。人にもよるだろうけど、親しい人を亡くした疵ってのは、そう簡単に癒えるものじゃない。特に家族ともなれば、その疵と一生付き合っていかなくてはならなくなる。死ぬってのは、そういうことだ。分かるよね?」

「……ごめんなさい……」

 叱責されていると感じたのか、陸少年は消え入りそうな声で謝罪の言葉を吐いている。

「いや、別に怒っている訳じゃないんだよ? ただ一つ、絶対に分かってほしいんだ。君が死んだら、君の家族や君の友達も、同じように、嘆き、悲しみ、疵を負うんだ――ってことを」

「……友達なんて……」

「うん?」

「……僕には、友達なんていません。みんな、僕が死ねばいいと思ってる」

「おや、おかしいな。昨日、機会があって君のクラスの子たち何人かの話を聞くことができたんだけど――みんな、心配していたよ? 君が海で溺れて、それでこの二日間学校を休んでるんだって知って、みんな驚いてた。早く元気になってほしいって、みんな口を揃えて言ってたよ」

「……その『みんな』って誰ですか? 嘘ばっかり……」

「嘘じゃないよ。何なら、一人ずつ名前挙げていこうか?」

「……いいです。それが本当だとしても、どうせ、苛め相手がいなくなってつまんないとか、そういう理由でしょうから」

 ある程度予想していたこととは言え、陸少年のネガティブ思考は思った以上に重症のようだった。自分の周囲は悪意に満ちていて、かつ、自分は生きるに値しないつまらない存在なのだと思い込んでしまっている。同年代の子たちと比べて、なまじっか真面目で頭が良いだけに、始末に負えない。


「――君は、大城先輩の死を無駄にするつもりなの?」


 だから自分も最後の札を切ることにした。そもそも、このことが言いたくて、このことを伝えたくて、彼に話しかけたのだ。

「……え?」

「私はね、『意味のない人間』などいないと考えている。生まれてきたからには、必ず何らかの意味があり、意義ある――ってね。もちろん、その全てに『価値』はないのかもしれない。こういう仕事だからね、本当にどうしようもない人間ってのを、嫌でも目にするんだ。……いや、これは余談だったけど……。

 本題に戻ろう。君は大城先輩の死という犠牲を乗り越えて、今生きている。それは紛れもない事実だ。先輩の死を無駄にしてはいけない。いつまでも自分を責めて、いつまでも『自分には価値がない』なんてイジけて――そんなの自分の勝手だと思うのなら、それは違う。そんなの、先輩が望む訳がない。君は先輩に救われて、それで生きているってことを、忘れちゃいけない。

 難しいことは抜きにして、もっとシンプルに考えてみようか。

 君は先輩に助けられた。つまり、君には意味があって、意義があって、価値があるってことだ。君は今までの経験から、自分がみんなに嫌われてるって思い込んでいるようだが――確かに、実際問題としてクラスで苛められていたかもしれないが――さっきも言った通り、誰一人として、君に死んでもらいたいなんて思ってはいないんだよ。

 君は、救われた人間なんだ。

 そのことに対しては、罪悪感ではなく、誇りを持ってほしい。前向きに、希望を持って生きてほしいんだ。それで――いつか、誰かを救える人間になってほしいんだよ」

 我ながら、随分と必死になっているという自覚はある。だけど、必死にならなくてはいけないのだ。罪悪感と絶望から塞ぎ込み、この先もずっと後ろ向きにネガティブに生きるのでは、先輩の死は無意味になってしまう。神谷陸というこの少年だけは、絶対に救われなければならない――そのためには、いくらでも必死になるつもりだった。

「……でも」

 こちらの言葉が通じているのかいないのか、陸少年は尚も悲愴な視線をこちらに投げかけている。事情を知らなければ、睨み付けているようにしか見えない。十中八九、この目付きのせいで苛められたのだと思うのだが、本人にその自覚はあるのだろうか。

「僕は、あの人たちからお父さんを――大城さんを奪ったんですよ? 僕の、せいで……。人の家を不幸にしておいて、自分だけ救われるなんて――そんなの、許されないし……」

「『不幸になった』なんて、決めつけちゃいけないよ」

 考えるより先に言葉が出ていた。

「確かに一家の大黒柱が亡くなったのは、これ以上ない不運で、これ以上ない悲劇だけど――それで、あの一家が今後もずっと不幸なんて、そんなの君が決めていいことじゃない。みんな、幸せになるために努力するんだ。そのために、生きているんだ。それに、あの家族を支える人はたくさんいる。俺だって、奥さんや洋子ちゃんや海人くんが幸せになれるよう、出来る限りのことはするつもりだしね」

 一人称が『私』から『俺』になっていることに、言ってから気が付く。

「第一、まだ小学生の君が、そんなことまで心配するもんじゃない。子どもは子どもらしく、取りあえず今は自分のことだけ考えていればいいんだよ。どうしても罪の意識が消えないのであれば――今度は君が、あの家族を救える存在になればいい。今は、まだ無理だろうけどね」

「……僕が……」

 口の中で呟き、陸少年は再び俯いてしまう。彼は今、どんな表情をしているのだろう。こちらの言葉は、思いは、願いは通じているのだろうか。これだけ言葉を尽くしても、それが『美辞麗句を並べ立てただけの欺瞞』と受け止められてしまっては意味がない。万が一そうなったら、こちらにはもう打つ手がなくなる。祈るような気持ちで、少年の横顔を見つめていた。


「……あ」


 と、不意に何か思い出したかのような声を上げる陸。

「どうしたの?」

「あの、これ……」

 と言いながら、半ズボンのポケットから何かを取り出し、こちらに見せる。ペンダントだった。

「あの時、思わず掴んじゃったみたいなんです。大城さんの、ですよね……?」

 見覚えがある。いつだったか、交番で彼に自慢されたことを思い出す。愛娘の作ったヘッドが特徴的で――

「これ、何に見える?」

 思わず、意地悪な質問をぶつけていた。

「ヒトデですか」

 答えた少年の頭頂部にチョップを振り下ろす。

「――ッ!?」

 充分に手加減したつもりだったが、こちらの行動の意味が分かる筈もなく、その鋭い目に大量の疑問符を浮かばせている。

「ゴメンゴメン。痛かったかな? いや、この質問を受けて『ヒトデ』って答えた人間は、チョップを喰らう決まりらしいんだ。俺も大城先輩に喰らったことがあってさ」

「……決まりって言われても……」

 慌てて弁明するも、少年は納得してない様子。それはそうだろう。我ながら大人げなかった。

「風車なんだってさ。とてもそうは見えないけどね。まあ、四歳の女の子が紙粘土で作ったものだからしょうがないよね」

「女の子って――あの子のことですか?」

 陸少年の視線の先には、黒いワンピースを着て大人しく座っている洋子ちゃんの姿。

「そう。弟の海人くんもそうだけど、先輩はとにかく子ども好きでね――仕事中によく自慢されたもんだよ」

 それも今となっては遠い思い出だ。

 おもむろにペンダントを手に取り、ヘッド部分を弄る。ロケット構造になっているそれは上向きに開き、中に納められた写真を露出させる。

「ほら、洋子ちゃんの写真が入ってるでしょ? 本当は海人くんの写真も一緒に入れたかったらしいんだけど――先輩は、これを仕事中に見るのが好きだったんだ」

「……じゃあ、やっぱり返さないといけないですね。そんな大事なものなら……」

 そう語る少年は、どこか残念そうだ。案外気に入っているのかもしれない。試しに言ってみる。

「欲しいんだったら、頼んでみたらどうだい?」

「――ッ!? そんなの、ダメに決まってるじゃないですか!」

「頼んでもないうちから、何で分かるの?」

「そんなの……だって、僕は大城さんを死なせた人間だし……」

「まだ言ってるのかい? 小学生がそんなことを気にしなくてもいいって、さっき言ったばかりなんだけどな」

「でも、絶対に怒ってますよ……」

「そんなことはない。いや、これは気休めで言ってるのではなくてね――少なくとも奥さんは、君のことを怒ったり恨んだりなんかはしていないよ。先輩は、自分の意思で君を救ったんだ。その結果は悲劇になってしまったけど……だけど、それで君に恨みを持つような女性ではないよ。そのことに関しては、俺が保証する」

「……でも……」

「だったら、面と向かって謝ればいいじゃないか。絶対に許してくれるから。一人で行くのが怖いのなら、俺も一緒に行くし」

 本来なら、このペンダントは大城家に返却すべきなんだろう。だけど、何となく陸少年に持っていてもらいたかった。大城先輩の形見を手にすることで、自分が救われた存在であることを覚えていてほしかったのだ。

「……ありがとうございます」

 ギリギリ聞き取れるレベルの声でお礼を言う陸少年。相変わらず下を向いているため、どんな表情をしているか推し量ることはできない。だけど――少なくとも、最初に比べれば随分と明るくなった気がする。

 是が非でも、この子には生きていてもらいたい。

 ――それが、あの人の意思だと思ったから。

 変なところが抜けていて、変に頑固で変にマイペースな人で、振り回されることも多々あったけれど――だけど、それでもあの人は自分の恩人なのだ。自尊心と自己愛ばかりが強くて、頭でっかちで甘ったれだった自分を一人前の警察官にしてくれたのは、あの人だ。礼など言い尽くせないし、恩は返しきれない程ある。全て、これから――だったのに……。

 あの人はいなくなってしまった。

 ならば、せめて。

 あの人の遺した意思だけは――あの人の救った命だけは、大事にしようと、思った。だからこうやって、沈んでいる少年にも声をかけた。柄にもなく、何とか希望を持ってもらえるようにと、饒舌に言葉を重ねた。神谷陸を救うことで、逆に自分自身をも救おうとしていたのかもしれない。いずれにせよ、後は陸少年の気持ち次第だ。勿論、今後も彼の支えにはなるつもりだ。もう二度と、『逃げ場がない』『自分には価値がない』なんて言わせない――

 そう、思った。

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