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SPACIA X ROAD  作者: Kanra
第一章 
4/4

第3話 SLの車内

 前述のように、東武のSL列車の客車の編成は特急用客車の14系客車と急行用の12系客車の混結3両編成だ。

 この3両編成の客車は茶色(ぶどう色)と青色の2組あり、今日は青色客車だ。


 ちなみに、茶色客車は現在、12系客車改造の展望車が車検を受けているため、その間、JR北海道の夜行急行列車「まりも」「はまなす」で使用されていた「ドリームカー」という客車が代車として連結されているが、この車両については、今は割愛する。


 とにかく、ルナは2号車の12系客車に入ったのだが、いつもと何かが違う。


(あれ?ボックスシートのビロードの色、緑だったかな?それに、照明もなんか暗めの橙色で、いつもより暗い?)


 ルナは首を傾げる。

 そして、1号車よりのデッキには、カウンターや東武のSL列車に関する映像を流すテレビモニター、パンフレット台等を設けたフリースペースがあり、このフリースペースでSL観光アテンダントが沿線の見どころ等のガイドをしているのだが、そのSL観光アテンダントはクリーム色のジャケットを基本にした制服姿なのだが、今日は妙な事に大正時代の女学生のような服装なのだ。


(そういえば、あの紅い着物の女の子もこんな―。)


 とりあえず、自分の座席に荷物を一旦置き、展望デッキに出てみる。


「あれっ?」


 と、首を傾げる。

 東武日光駅から下今市駅までは、DE10が先頭となるSL「大樹ふたら72号」だが、3両編成の客車なのだから、展望車の2号車の前には当然、3号車が居るはずだ。だが、そこに3号車が居ない。3号車の居る場所に、蒸気機関車が居るのだ。

 そして、そこから列車の後を見てみる。

 東武日光駅を出た直後、列車は右へ左へとカーブを進むので、列車の後が見えるのだ。


「あれっ?」


 なんと、どういうことかこの列車は3両編成の客車で変わりなく、12系と14系の混結編成なのだが、最後尾の蒸気機関車が居ない。


(この列車も変だ。)


 と、ルナはアテンダントに聞こうとしたが、


「少し落ち着いたら?」


 と、展望デッキから客室に戻ったところで、紅い着物の女の子と鉢合わせになった。


「-。」

「さぁっ。」


 紅い着物の女の子は、ルナの座席を指した。

 仕方がないので、自分の座席に腰掛ける。


「窓は開けるのですよね。」

「-。ええ。」

「お父様もお母様も、貴方の事がすっかりお気に入りで。今日は鬼怒川温泉で日帰り入浴しか出来ずですが、私が鬼怒川温泉駅で見送りますので。あぁ、これはお母様がルナに。」


 と、紅い着物の女の子は切符を渡す。

 ルナの帰りの列車の切符は、ルナ自身で確保してあるのだが―。

 奇妙に思いながら、スマホで自分の確保した帰りの列車の切符の情報を確認すると、どういうことかキャンセル払い戻しされたことなっていた。

 目の前に差し出されたのは紙の切符。

 それを摘まみ上げて見ると、特急「スペーシアX6号」のボックスシートの物だった。

 だがルナは納得していなかった。

 第一に、なぜ勝手に自分で手配した切符がキャンセルされているのか。

 一応、払い戻しと言う形にはなった上、どこの誰か知らないが帰りの列車の切符を確保してくれたのだから、実質的にタダ乗りだが、ルナが元々手配していたのは「スペーシアX」のプレミアムシートだ。料金の差こそ僅かだが、ボックスシートの方がプレミアムシートより僅かに安い。


(どこの誰か知らねえが、勝手に何してくれる。どうせなら、コックピットラウンジか、コンパートメントにしろ!)


 と、ルナは思う。


 第二に、今乗っているSL「大樹ふたら72号」が本来と異なる状態で走っている事はどういうことか。

 そもそも、東武日光駅で機関車の付け替えは出来ないから、SL「大樹ふたら72号」は蒸気機関車とディーゼル機関車のプッシュプル運転であるのだが、なぜ今、SL「大樹ふたら72号」は蒸気機関車C11が先頭なのか、そして、反対側になぜ機関車が居ないのか分からない。


 最後に、そもそも論として、今、この状況はなんだという事、そして、目の前に居る紅い着物の女の子は誰だという事。

 こうした事が分からなければ、SLの旅も楽しめない。


(こうなったら、こいつがどこの誰か探ろう。)


 と、ルナは頷いた。


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