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SPACIA X ROAD  作者: Kanra
第一章 
2/5

第1話 到着・東武日光駅

 すっかり眠り込んでしまった。

 気が付いた時には、下今市駅さえ通り過ぎ、東武日光駅の場内信号機を通過したところだった。


(やらかしたぁ。)


 と、ルナは思う。

 せっかく旅に出たのだから、そこへ着くまでの景色も見たいのだが、半分以上の区間で眠ってしまったのだ。


(まぁ、夜行列車に乗ったと思うか。)


 そう思いながら、「スペーシアX」を降りて、駅前の土産物屋の2階の飯屋に入って昼食にする。

 もりうどんに刺身湯葉と、日光名物を取り入れた昼食だ。

 駅前は外国人の姿も多い。

 そして、東武の資本が入っているのであろう土産物店やらで、賑わいを見せていた。


「お隣失礼。」


 と、隣に座ったのは、紅い着物を身に纏う女性だった。


「ええ、いんです。」

「他人行儀なれど―。」


 ルナは(なんだこいつ?)と思う。


「そこも魅力的な方。」


 と、彼女は微笑んだ。

 薄気味悪い思いをしながら、ルナは昼食を平らげると席を立った。

 土産物屋を出て、東武日光駅に戻ろうとしたが何かが変だ。

 最初は、何が変なのか分からなかったが、駅前に保存されている路面電車に乗り降りしている客の姿が見えるのだ。


(あれは確か、中に入れないはずだ。中を見せて貰えるのだろうか?)


 首を傾げながら、100型電車に近寄ろうとすると、大通りを明らかにおかしい物が通過する。

 それは、ED600型電気機関車と貨車だったのだ。


(いや、おかしい。)


 流石にこれは変だと思う。

 確かに、ED600型電気機関車、元国鉄ED40型電気機関車は東武に貸与、後に譲渡されていた事がある。しかし、それは、東武日光軌道線という1910年から1968年まで、日光に存在した東武の路面電車での活躍だ。

 だが、そんな線路は2025年の今、存在しているはずはない。

 更に、ED600型の元であるED40など、日本のどこの鉄道を探しても現役で走ってなどいないのだ。


(まぼろしか?あるいは、日頃の不摂生さで逝かれたのか?)


 と思いながら、ED600型にカメラを向けてシャッターを切った。

 ファインダーから目を離すと、一瞬、町全体が古ぼけたものに見え、外国人の姿はおろか、2025年の服装の日本人観光客の姿も消え、歩いている人の姿もどういうことかおぼろげに見え、おぼろげに見える人は皆、一昔もふた昔も前の和服や着物を着て歩いていた。

 そして、その中で一人だけ、先ほど、ルナに話しかけて来た紅い着物の女性だけがはっきりと見えた。

 彼女は東武日光駅の入口で微笑んで、ルナを待っているように見えるのだ。

 瞬きをすると、その世界は消え、元の世界になる。


(やはり疲れと、不摂生で逝かれたのだろう。)


 と、ルナは頷くと、自動改札機を通った。



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