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デスタウン  作者: 天園風太郎
第1章 自由の夜明け
38/40

第38話 味方

皆様、お久しぶりです!回想の続きです!

 約2週間後、祖父ロンから驚くべきことを知らされた。

 既にルシファーは街を出て行っていたことを。

 彼女は、「遠い親戚のもとで女優を目指します」という内容の置き手紙を残していた。

 警備会社を設立する資金を稼ぐためという説明も書かれていた。

 何故黙って行ってしまったのか?街で資金を稼ぐ道はなかったのか?

 ジョシュアは複雑な気持ちになった。



 それから約6年後の1965年2月11日。

 ルシファーが「休養のため」にお忍びでデスタウンへ帰ってきた。

 その頃、ジョシュアはロンのもとで聖職者になるための修行をしていた。

 資金を稼ぐのをルシファーだけに任せる訳にはいかず、ジョシュアとサイモンも表向きの仕事を探し始めていたのである。

 ジョシュアは聖職者を、サイモンは工場で働いて経営者に出世することをそれぞれ目指していた。

 ジョシュアがルシファーと再会したのは広場で炊き出しをしている時だった。


 「久しぶりね。ジョシュア」

 「その声・・・・・・、まさかルシファー!?」


 ルシファーは変装していたが、ジョシュアにはすぐにわかった。


 「ジョシュア、お手伝いしているの?」

 「ああ。これも修行だ」

 「修行?」

 「聖職者になるために必要なことだ。信者の心の支えになって頑張り続けるじいちゃ、いや、おじい様を見て、俺も聖職者を目指すことにしたんだ。おじい様の力になりたい」

 「そうなんだ・・・・・・」


 何度も撃退を繰り返している内にドゥールー教徒のグループの襲撃は減ったが、無くなった訳ではない。

 ソドム区の住民達は疲れてきており、キルス教の「心の支え」としての役割がより重要な時代になっていた。


 「あれ?俺、手紙に書かなかったか?」

 「あ、ごめんなさい。忙しくて・・・・・・」

 「あー、人気者になったもんな!仕方ないさ」


 ルシファーは女優として売れ始めており、一部では熱狂的なファンもできていた。

 ジョシュアはそれを知った時、嬉しかったのを覚えている。

 ルシファーと手紙のやり取りを始めたが、返事が返ってくることはほとんどなかった。

 やはり、忙しかったのか?


 「私も手伝うわ」

 「助かる!」


 ルシファーは炊き出しを手伝ってくれた。

 この時、彼女は何を考えていたのだろう?


 炊き出しが終わると、ルシファーが帰ってきたことを祝ってロンの家でパーティーが開かれた。

 パーティーにはジョシュアとロン、ルシファー、レイラ、サイモンもいた。

 家族だけの小さなパーティーだ。

 サイモンはカメラを抱えながらルシファーに近づいた。


 「よう、ルシファー」

 「サイモン?」

 「元気だったか?」

 「まあまあかな」

 「そうか・・・・・・。6年前は悪かったな。ルシファーの気持ちも考えずに酷いことをした」


 実は、ルシファーが出て行く前日、サイモンとルシファーは喧嘩してしまっていた。

 その後、仲直りできないままお別れになったことを、サイモンはずっと気にしていたのだ。


 「ううん。私もごめんなさい」


 ルシファーは笑顔だった。

 いつの間にか冷たい眼差しではなくなっている。


 「仲直りしよう。写真良いか?」

 「写真?」

 「ああ。アルバムに貼る」


 サイモンはそう言った。

 父親達に複雑な気持ちを抱いていたサイモンだが、いつからかあのアルバムに思い出の写真を貼るのに熱心になっていた。

 以前その理由をきくと、「使わなきゃもったいないだろ?」と言っていたが、本当だろうか?


 「そっか。綺麗に撮ってちょうだい」

 「任せろ!」


 サイモンはルシファーの写真を撮った。

 その時のルシファーは、昔のように微笑んでいた。

 その後、皆で集合写真も撮り、幸せな時間を過ごした。


 パーティーが終わると、ジョシュアはルシファーに話しかけられた。


 「ジョシュア、ちょっと良い?」

 「ああ」


 ジョシュアとルシファーはソファに座り、少し話をした。


 「どうした?」

 「えっと・・・・・・、私がいなくなった後、大丈夫だった?迫害者の襲撃とか」

 「え?ああ、大丈夫だ。あの後、ミハイルに頼んで、協力してもらっているからな」

 「ミハイル?あの傭兵の息子?」


 ルシファーは目を丸くした。

 ミハイルは、ジョシュア達の幼なじみだ。

 子供の頃、ボロボロの姿で川を渡って来た少年である。

 キルス教徒によって保護された後、彼は「俺は伝説の傭兵の息子ミハイルだ!」と名乗った。

 大人達はミハイルについて調べたが、わからないことが多く、彼の言っていることが事実か確認できなかった。

 そのため、彼がどこかの勢力のスパイではないかと疑う者も少なくなかった。

 しかし、彼は得意な槍で迫害者達を追い払うことで信用を勝ち取っていき、大人になってからは、戦力の低下で困っていたジョシュア達に協力することで自分を認めさせることに成功していた。


 「あいつのおかげで、ゾンビも迫害者も上手く倒せている」

 「私がいなくても大丈夫そうね」

 「何を言う」


 ジョシュアは首を振った。


 「いてほしいに決まってんだろ!」

 「!?」

 「でも、ルシファーの道を邪魔するのもおかしいから、皆で頑張ることにしたんだ。本当は辛いけどな!」

 「ジョシュア・・・・・・」

 「黙って出て行かれた時、俺がどんな気持ちだったかわかるか?俺達はそんなに信用できないか?ルシファー、約束してくれ。もう2度と黙ってどこかへ行かないと」

 「わかったわ。・・・・・・でも、ジョシュアも約束してほしいわ」

 「何だ?」

 「何があっても、私の味方をしてくれるって」

 「当たり前だ!昔からそうだったろ?」

 「ハハハ。そうだったね」


 ルシファーはジョシュアの答えを聞いて、笑っていた。

 あの笑顔は、本当の笑顔だったのか。

 今はわからない。


 翌日、また迫害者のグループがソドム区を襲撃し、ジョシュアとミハイル、自警団は、彼らと戦った。

 ジョシュアは自警団と連携しながら、小学校のバリケードに飛びかかるドゥールー教徒達を蹴り落としていった。

 その時、誰かの声が。


 「ジョシュア様!右!」


 右を向くと、大柄なドゥールー教徒が投げたゾンビの死体がジョシュアの方へ飛んできていた。

 よければ、小学校が危ない。

 ジョシュアは腕をクロスして耐えようとしたが、その直後、後ろから槍が飛んでゾンビの死体の胸を貫いた。


 「槍の味はいかがかな?」

 「ミハイル!」


 ゾンビの死体が反対の方向へ落ちた直後、ミハイルがジョシュアの隣に立った。


 「ありがとう、ミハイル」

 「恩を返しただけです。ところで、奴らしつこいですね。仕事とかしてないんでしょうか?暇人?」

 「迫害してくる奴らの考えなんてわからんよ。そんなことより、今日も頑張ろう」


 サイモンは既に勤務先のライト区の工場へ行ってしまった。

 ルシファーも疲れたのか、寝たままだった。

 そこにいる皆だけで、防衛するしかない。


 「俺達の居場所は、絶対に奪わせない!なあ?」

 「ええ」


 ミハイルはうなずくと、バリケードに隠していた予備の槍を出して構えた。

 ジョシュア達は全力で抵抗し、いつものように迫害者達を撃退した。


 戦いが終わり、解散した後、ジョシュアとミハイルは世間話をしながら歩いていた。

 途中まで一緒に帰るつもりだったのだ。

 しかし、その帰りの道中に女性が足を怪我して座り込んでいるのを発見し、2人は青ざめた。

 ジョシュアは慌てて駆け寄り、彼女を手当てした。


 「だ、大丈夫か?」

 「はい。ありがとうございます」


 その女性は笑顔を浮かべてお礼を言った。

 彼女は金糸のように煌めく金髪を持っており、容姿端麗だった。

 ジョシュアは、彼女と目が合った瞬間、ときめいてしまった。

 しかし、


 「!??」


 その時の彼は恋愛関係のことについて鈍く、自分の気持ちに気づくのはもう少し後になった。


 「何でしょう?」

 「え!?あー、その。あ!ここで何をしていたんだ?最近は減ったが、ここは迫害者共がよく通るルートだぞ」

 「取材に来ました。私は記者なので」

 「記者?」

 「申し遅れました。私は、メイ・スー。デスタウン新聞社の記者です」


 その女性――メイ・スーは、あの『デスタウン新聞』の記者だった。

 デスタウン新聞は、中立の立場で報道をする新聞であり、『楽園新聞』と並んで、デスタウンを代表する新聞だ。

 しかし、ドゥールー教徒の味方ばかりする楽園新聞よりもはるかに信用されていた。

 そんな新聞社の記者が、何の取材に来たのか?

 気になったが、そこできくのは危険すぎた。


 「話を後で聞かせてもらうぞ」

 「あの、あなたは?」

 「ああ、俺はジョシュア・キルス。聖職者になる男だ」


 ジョシュアは、2人で話している間に近くで襲撃者が来ないか警戒していたミハイルを呼び、3人で教会まで移動した。


 「スーさん」

 「メイで大丈夫です」

 「・・・・・・メイ。何故取材に来たか聞かせてもらって良いか?」

 「はい」


 メイは、取材に来た理由を話した。

 何と、犯罪組織がこの地区に集まり、ニューボーンウイルスのウイルス液を取引するというタレコミを受け、確かめるためだという。

 ジョシュアとミハイルは衝撃を受けた。

 新たな危機が、ソドム区に迫っていた。


 メイによると取引は3月だというが、油断はできない。

 それまで以上に警戒しなければならなかった。

 ジョシュアはメイを連れてその危機をロンに報告した後、もう遅かったため、彼女を安全な宿まで案内した。


 「ここなら、安全だ。今夜はここに泊まると良い」

 「ありがとうございます、キルスさん」

 「俺のことも、名前で良い。呼び捨てで」

 「え、でも」

 「良いから」

 「・・・・・・ジョシュア」

 「何だ?」

 「その・・・・・・」


 メイは何か言いたそうにしていたが、言えないようだった。

 メイが何を言おうとしているかわからず、ジョシュアは首をかしげた。


 「何だ?」


 メイは息を整えると、ジョシュアの目をまっすぐ見た。


 「・・・・・・また会える?」

 「・・・・・・!もちろんだ!」


 ジョシュアはニコリと笑って言った。


 ジョシュアはメイと別れた後、家に向かって歩いた。

 何故かわからないが嬉しくなっていた。

 すると、その時、ミハイルがジョシュアの背後から突然現れた。


 「うわああ!??」


 ジョシュアは驚いてしまった。

 途中から気配が消えていたと思ったら、そんなところにいたのか。


 「嬉しそうですね」

 「か、顔に出ていたか?」

 「はい」

 「そ、そうか」


 気をつけよう。

 ジョシュアはそう思った。


 「危機が迫っているというのに、何やってんだって話だよな?ハハハハハ・・・・・・」

 「ジョシュア様・・・・・・」

 「心配するな。いつものように、最善を尽くすさ」


 ジョシュアがそう言うと、ミハイルは真剣な顔で言った。


 「ジョシュア様、いざという時に集中して下さるなら大丈夫です。しかし、それよりも、ご注意を」

 「注意?」

 「ルシファー様の前では、絶(・)対(・)に(・)そんなお顔は見せないで下さい」

 「は?何故今ルシファーの名前が出てくる?」

 「ジョシュア様!絶対に!」

 「わかった!わかったよ!」


 ジョシュアは、迫ってくるミハイルに約束した。

 これが何を意味するのか、ジョシュアは気づいていなかった。

次回で回想はラストです!

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