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デレ婚!!~男女8人婚活ストーリー~  作者: 猫本猫美
婚活・恋愛実践編
31/35

29話 人生初のデートは、伊吹ちゃんと。



 「ごめんなさい、待ちました?」


 ……で、でたよ、でたよこれ、~ごめんなさい、待ちました?~デートの始まりと言えば、まずはこれだ!!

 七瀬は顔を真っ赤にさせ、「いや、今来たとこ」。

 本当は40分待ったのだが、それは早く来すぎたせいだ。

 彼女の予定もあり遅めの午後一時、今にも雪が降ってきそうな空気の冷たさの中、ぴったりの時間に訪れた伊吹と七瀬は会った。


 雪平伊吹は白いワンピースに水色のセーターを羽織、その上に白いもふもふしたコートを着ている。ピンクの頬とグロスで艶めいた唇が、彼女の猫のような可愛さを引き立てていた。


 「じゃあ、行こうか」

 「はい、えぇっと、動物園でしたよね?」

 「うん。もし嫌なら、別の場所でもいいんだよ」

 「いえ、動物園、大好きで。嬉しいですよ」


 と伊吹は言ってにっこりとした。


 (可愛い……)


 七瀬はいちいちそう思わざるをえない。


 「寒いね。雪でも降ってきそうな」

 「そうですね、はらはら振ってきたら、ちょっと素敵なんですけどね」

 「…そうだね」

 「あ、私、動物園に着いたら、まず見たい動物がいるんです」

 「見たい動物?今行くところはホワイトタイガーとパンダが有名なんだよね」

 「そう、そうなんですよ。私、猫科の動物が大好きで。カッコいいですよね。カッコいいだけじゃなく、可愛いんですよ。知ってます?ホワイトタイガーといえども猫科なので、ダンボールが好きだったりするんですよ。前にネットで見かけて、可愛くて可愛くて。ダンボールでごろごろしちゃうホワイトタイガー」

 「あぁ、猫ってダンボールの中とか好きだもんね。僕も実家に居た頃、飼ってたんだよ。白黒と、三毛なんだけど」

 「ほんとですか!?猫ちゃん、可愛いですよねぇ。あんなに可愛い動物は他にいませんよ。神様の最高傑作です!」

 

 (本当に猫が好きなんだな…)

 猫の話になったとたんヒートアップした彼女は心底楽しそうに見える。

 七瀬は思わず微笑んだ。


 「そうだね、確かにあの耳と尻尾と肉球は神様の作品の中でもピカイチだね」


 七瀬がそう言うと、心から嬉しそうに、伊吹も微笑んだ。




***




 「わぁ、パンダですよ!七瀬さんっ」


 動物園の中に入るなり、彼女は子供のようにはしゃいだ。

 入ってすぐ左側には鳥類が、右側にはパンダがいた。そして目の前にはゾウ、トラやライオンはパンダ側の通路の奥にいるようだ。


 「かぁわいいっっ」


 目を細めて、まるで蕩けるような美味しさのスイーツでも食べたような顔をしている。

 いや、可愛いのはあなたですから!七瀬は心の中でそう叫んでいたが、見た目は冷静を装っていた。

 自分の選んだデート場所を喜んでくれた、それがこんなに嬉しいものだったなんて――。七瀬は産まれて初めての得体の知れない幸せで胸がいっぱいだ。


 その時、


 「ね、七瀬さん、ホワイトタイガー、あっちですよね?行きましょっ」


 そう言って、伊吹は七瀬の手を取った。


 手……? 手…… 手ぇぇぇ!!!


 そして小走りをする伊吹に手を引かれ、七瀬も小走りをする。

 

 デ……これは、まるで本当のデートじゃないか……!


 七瀬の心臓は今にも飛び出しそうなほどドキドキ音を立てている。


 「キャーッかっこいいっっ!! 見て下さい七瀬さんっあの顔つき、堂々とした姿、大きな手、なでなでしたいですぅ」


 彼女の右手と七瀬の左手は繋がれたまま、彼女は柵に掴まり恋人でも見るような愛しい目で、ホワイトタイガーを見ていた。

 そして暫く酔いしれるように無言で見た後、


 「夏だったらソフトクリーム、食べたかったんですけどね」


 そう言って伊吹がホットコーヒーを買いに行こうとしたので、七瀬が「自分が」と言って、買いに行く。


 フラミンゴのコーナー前のベンチに座り、二人はホットコーヒーを飲みながら話をした。


 「あったかい……」

 「……だね。……あの、伊吹ちゃん、さ」

 「なんですか?」

 「改めて、聞きたいんだけど……いくら猫に似てたといえ、なんで僕なんか……」

 「僕なんか?」

 「こんな、ブサイクでデブで金もないような男とデートなんか……」

 「そんな。私、初めて会った時、言いましたよね?男の人って、そんなに容姿関係あると思いますか?って。正直言って、私は男の人に容姿は関係ないと思ってます」

 「それはないよ。ほら、物語の主人公はいつだって、イケメンで切れ者で」

 「それは、目立つ場所に居る人が目立ってるだけですよ。目立たない場所で光ってる人だって、きっといます」

 「目立たない場所で、か……」

 「……私は、収入や外見じゃなく、どれだけ正直に生きてるか、愛を持って生きてるか、って言う所に惹かれるんです。…そういう人は、他人から見たら不器用なのかもしれませんけどね。それに私……やっぱり、猫っぽい人じゃなきゃ無理、で」


 猫……。 やっぱり、南沢の言った通り人間以外に興味を抱くタイプなのだろうか。


 「猫っぽい人、って、猫に似てる人、ってこと?」

 「そうですね。上手に説明しろと言われてもできないんですけど。猫っぽい、人です。だから、私七瀬さんの事……本当に、タイプなんですよ。ブサイクって自分でよく言ってますけど、私は可愛いと思います」

 「そ……そうかな……」

 「だから七瀬さん、私のこと……真剣に考えてみて下さいね」

 「でも君みたいな可愛い子、もっと金持ちでかっこ…」

 「もう、しつこいですよ!七瀬さんみたいな努力家なら、お金の心配はいりませんってば。大丈夫です!愛がある人は、愛する人を幸せに出来る人なんです!それが、私の中では一番ですから」

 「伊吹ちゃん……」


 七瀬は、涙が出そうなほど感激していた。


 「さっ、次は、ペンギンさんですよーっ」


 そう言って、また手を繋いでくる。

 

 その時、


 (あれ?なんだあの黒服の男……こんな場所に似つかわしくないな。有名人でも来てるのか?)


 黒づくめにサングラスの男が目に入り、七瀬は不思議に思ったが、すぐにその違和感は消え去った。

 なぜならば、


 「七瀬さん」


 繋いだ手を引き寄せて、彼女が抱きついてきたからだ。


 「な……ど、どうしたの……」

 「あったかい……ちょっとだけ、こうしていて下さい……」


 通り行く人々の目が気になったが、七瀬は棒のように固まり立っている事しかできずにいた。







 








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