9話 フリータイム②体育教師、若狭颯太。
この婚活パーティーの目玉であろう美女4人全員が愛葉七瀬と南沢洸地の元へ集まったからさあ大変だ。それについて他の男連中もぞろぞろと集まってきた。まあ無理もないだろう。今逃したら二度と手に入らない幻の魚が4匹も目の前を泳いでいるようなものだからな。と、七瀬は思い、これであまり相手しなくて済むだろうとホッとして、ジンフィズのおかわりを取りに行った。
すると、一人の男性が話しかけてきた。
爽やかな好青年だ。
宅急便の仕事がよく似合いそうな。そして、七瀬と正反対の。
「あの……みんな、あの、綺麗な人たち、あなたとお話したいと言っているんですけど……」
「そうみたいだな。からかってるんだろうけど」
「まさか、こんな場所でからかうって事はないと……一体、どうやったんですか?」
「どうやったって?」
「テクニックですよ。きっと、上手なんでしょう」
「そんなものないよ。僕はそもそもやる気がなかったんだ」
「そうか……そうか、逆にそれが良かったのか」
「は?」
「ギラギラしてないっていうか、こういう場では、そんな雰囲気が安心できたのかもしれないです」
「なんだ? 君はあそこにいる南沢という精神科医より精神科医らしいな。職業はそれ系なのか?」
「いえいえ、私は中学校の教員、やってまして」
教師か、なるほど。
この爽やかさは納得だ。
「体育教師?」
「わかります?」
「わかるよ。逆にそれ以外思いつかないし」
「ふふふ……あ! 名前教えて下さい。僕は……あの、これ」
そう言って、彼は名詞を渡してきた。
【若狭颯太】
ああ、名前も裏切らない爽やかさだ。と、七瀬は妙に納得し頷いた。
「26歳か、僕の2つ年下だね。もう結婚したいの?」
「……はい。ちょっと、結婚願望が強くてですね」
「そうなんだ。男の癖に珍しいね」
「そうですかね?結構居ると思いますけど」
「教師って出会い少ないって言うもんな」
「そう、そうなんですよ。ほんとに、なくて」
「気になる子、いた?」
「はい、あの、……星宮さんが……」
意外だ。 彼がクールビューティー星宮を選ぶなんてな。お似合いだと思うのは猫カフェ店員の雪平伊吹だが。
「クール美人がタイプなんだ」
「いえ……彼女なら、満足させてくれそうだ、っていうか。激しそうじゃないですか」
「???」
何を言ってるんだこの男は、と、七瀬は思った。
下ネタ……いやまさか、いきなりこんな好青年が、それはないだろう。
カミサン女房タイプが好き、ってことかもしれない。
「実は私……セックス依存症なんです。だから性欲強い奥さんを貰いたくて。そうしたら治るかもしれない、って……」
「………!!!」
さすがの七瀬もこれには絶句するしかなかった。
いやまさか、まさかまさか、とてもそういう風には見えないぞ。
N○Kの体操のお兄さんみたいな爽やかさだぞ?!これじゃあウサギの皮を被ったライオンじゃないか!!無理がある。そして僕にいきなりそんなカミングアウトしてきた彼の神経を疑う。
七瀬は混乱した。
「すみません、突然こんなこと告白されても困りますよね……あの、なんていうか、友達になっていただきたいんです。なんか、愛葉さんとは親近感が沸く、というか……安心してなんでも話せそうな気がして」
「そ……れは……別に……いいけ、ど……」
「ほんとですか?!良かったぁ!連絡先交換しましょう」
この嬉しそうな顔……女子は皆この笑顔に騙されるのか……。
恐るべし若狭颯太。
屈託なく笑う颯太に、七瀬はなんだか未知の生物に遭遇したような気がしていた。




