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ある日の午後  作者: ラゼル
番外編
31/72

Love is mussing up someone’s hair

番外編のおうちでの朝の日常風景。


これ、誰得? な芽衣と彼方の姉弟のお話。

芽衣さんブラコン全開です。ご注意くださいませ。

「なぁ、お姉。これ変じゃない?」

 お姉、かぁ。あんたお姉ちゃんって呼んだり、芽衣って呼んだり、ホントばらばらだね。

 さすがに冗談で芽衣お姉さまって言われたときには鳥肌立てて絶叫しちゃったけど……。


 私も通っていたウチの学区では2番目の学力を誇る進学校に通う弟の彼方が尋ねてくる。

 彼は受験生で私とは違って理系の特進コースに在籍している。なので私が大学がお休みの土曜日も午前中の授業へ参加することが義務付けられている。なのでただの学ランのはずだから特に聞くことも無いと思うのだけど……、とソファーでごろごろ本を読んでいたが首をくるりと声のする方向へ回して彼の姿を目に入れる。


…………。


「あー! これ私が夏休み前にセールで買ったヤツ!

やぁっと着てくれたのか。というか合わせやすいやつなんだから早く着てよぅ」

 とソファーの上でじたじたと手を動かしながらも、つい感情に任せて言う。

 彼は白いワイシャツに胸元にクロスの刺繍が施してあるロックテイストのカーディガンを羽織っている。うーん、我ながらナイスチョイス。ぐっじょぶ、私。うむ、可愛い、可愛い。


「可愛い!」


「チャラくないか?」

 と恐る恐るこちらを窺う……あんたチャラいの範囲広すぎないか?

 ちょっぴりオシャレしたら=チャラい がお前の思考のデフォルトか。思春期は繊細だな。

 大丈夫だ。あんたは基本的に甘めの可愛い顔しているし、髪も染めてなくて黒いままだし、最低限の品も持ち合わせているから、よっぽどじゃなきゃチャラくみえることはない。


 しかし、ちょっと足りない。


「ただ、胸元ボタン空けすぎ。なんかバランス悪い。1つか2つにしとけ空けるの、そのカーデ羽織る時は」


「わかった」

 とボタンを1つすぐにとめる。うむ、こういうときだけだよなお前素直なん。可愛いヤツめー。


「うん。完璧 格好いい」

 親指をぐっと立てて褒めてやる。うむ、ナイス見立て。


 ……まぁ、可愛いの方が大きいんだけどね、ホントは。でも彼は“カッコイイ”と言われる方が嬉しいようだ。男の子だねー。

 でも可愛いは女の子にとっては愛す()きってことで。それは愛してるよーって感情を示す言葉で単にかわいらしい雰囲気ということを示しているわけではないとおもうんだよね、この言葉を使う時。

 ”かっこいい”よりもずぅっと愛情こもった表現だと思うんだよ、これ。漢字って、言葉ってホントよく出来てるよね。


 人の(ため)と書いて「(いつわ)り」、女三人と書いて「(かしま)しい」

 昔の人は偉大だ。よく出来てるわ。


「なぁ、これネクタイつけたくなるな」

 ほう、格好いいといわれて調子に乗ってきたな。まぁ、確かに。


「私的には黒い細い紐でリボン付けて欲しいがな」

 うん。可愛い。超可愛い。今度用意してつけてもらおう。


「でも、学校だから付けらんないけど」

 ですね。普段着のシャツでトライしろや。


「というか、紺色って校則OKだったっけ?」

 それ中学校の校則だろ、たぶん。あそこはなぜか黒オンリーだったよな。別にいいじゃんカーディガンの色ぐらい何色でもさ。グレーだろうがピンクだろうが。だって私ピンクしか持ってなかったから買い足しにいかなきゃならんかったんだから。だって寒がりなんだから、それにニットは愛すべきアイテムだ。いいよね、ふんわりとした雰囲気も。異素材ってけっこう他の服とあわせるの楽しいんだよね。秋になってニット解禁です。


「大丈夫だろ。紺色だし」

 そうそう、そう目立つ色じゃないから教師も目くじら立てないだろ。


「というか袖は黒なんだな」


 ん……?


「マジで!?」

「……気づいてなかったのか? ホレ」

 とカーデを脱いで目の前に出して見せてくれる。


「おおー! 凝ってるな。でも可愛い」

 そして、またいそいそと着直す彼方。


「お、可愛いじゃない」

 とは廊下から歩いてきたお母さん。よかったね、お墨付き貰えたよ。


「でしょー! 夏にセールで買ってきたの。」

 ほほほー! 弟に似合うものを見つけるのは任せとけと胸を張る私。

 それを生暖かい目で弟が私の方を見つつも登校準備を終わらせる。むう、なんだその目は。


「あぁ、さんきゅ。じゃあ学校行くわ」


 ……ん?


「なぁ、それって海老」

「もしかしなくても海老。お寿司の」


 彼が背負ったリュックには海老のお寿司のストラップがチャックについていた。

 ピンクと白のボーダーのリュックに海老ですか……。


「なに、お寿司屋さんでもらったの?」


「いや、友達が”これやる”ってくれた」

 どんなチョイスだ。弟のお友達。


「見間違えかと思った」

 えぇ、ホントに。


「紛れもなくお寿司の海老だ。ピンクと白で同じだからつけてみた」

 とドヤ顔。うう、アホなとこも可愛い。


 そして私はによによと頬を緩ませて言う。


「いってらっしゃい。気をつけてね 彼方」


「……いってきます。お姉ちゃん」




――そんな日常の朝の一幕。

ふふふ。書くのはすっごい楽しかった。1時間掛からなかったよ。

はい、芽衣さんはブラコンです、重度の。そして年々愛は増しております。


タイトルは日本語だと“愛って誰かの髪をくしゃくしゃにすること”

絵本から拝借しました。

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