プロローグ:魔法使いども
魔法。それは1200年前、ヨーロッパのとある国の魔女が生み出したとされる、人類最古にして最強の武器。
最初は誰もが使う事ができ、いつの間にか生活の一部になっていた。だが時が経つにつれ、魔法を扱うものの力量も上がっていき、そして最後には……、1つの国を滅ぼすほどの大事件を起こした。
魔法ができて200年がたった頃、世界中で魔法の使用が全面禁止された。そして一部の人間にだけ魔法が許可された。
そしてその魔法を使う者たちを【世界魔法協会】と魔法使いたちは名付けた。
世界魔法協会は世界中を回り、悪霊の類や怪物にのみその力を振るった。
これが魔法使いの歴史であり、どこにも乗らない、世界を守り続ける集団の全てである。
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日本東京都国会議事堂の一室、そこは監視カメラもなければ、窓もない、完全な密室だ。
中には男2人が、部屋の真ん中に置かれた机を挟むようにして椅子に座っている。
片方には、現日本国の内閣総理大臣、吉沢敦久、もう片方には、一人の男が資料と思われる紙を何度も確かめるように読んでいた。
男は白髪の老人で髪は白髪のオールバック、ひげが少しだけ顎の下に少しだけ生えており、顔はシワが深く、目つきは鋭い。
男が机に資料を置くと、椅子に深く座り込み、総理大臣のほうを向く、目つきの鋭さは一層増し、突き刺すようなその視線は、吉沢を緊張させる。
吉沢の額から冷や汗が垂れる。なぜなら目の前にいるこの男こそ、今の世界魔法協会の頂点であり、最高司令官の、ゼルネ・シヴァンセなのだ。
彼の気分1つで国を滅ぼすことなんて容易いだろう。そう、今や日本の命運はこの男によって決まるのだ。
日本を救うために、必ずこの人と契約を結ぶためにも総理大臣は恥じらいも、プライドも全て捨て、ゼルネの前で土下座をした。
「お願いです!!日本には今や魔法使いたちの力が必要不可欠なのです!どうか日本を救ってはくれませんか!」
総理大臣の土下座にゼルネは目を見開き、呆然としていた。
「やめてくれ、君はこの国のトップなのだろう?」
さっきまでの鋭い目つきは消え、総理大臣へ駆け寄る。
「すまない、顔が怖いせいで勘違いをさせてしまったかもしれない……。私は協力するつもりだ」
ゼルネが総理大臣の手を取り、目を逸らさずに言い切る。
吉沢総理はいつの間にか子供のように泣きじゃくっていた。この一言が、この国にどれだけの希望を与えることになるか……。
4月25日、日本は世界魔法協会と手を取り合った。このことは一般には知らされることはなく、魔法協会の人間と政府の一定の人間にのみ教えられることとなった。
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なぜ日本が魔法協会に助けを求めたのかについてだが……。今、日本は世界で唯一、幽霊と共生しているのだ。昔、とある科学者によって作り出された機械によって、日本の生活はガラリと変わった。
日本中の怪異が実体を持つようになったのだ。
だがその機械にはとある欠点があった。まず幽霊には善霊と悪霊の2種が存在する。
悪霊は善霊が人の負の感情に触れ続けるとなってしまう存在であり、心のうちに秘めた欲望や殺戮願望をむき出しにする。
そして悪霊となった霊にはほとんどの攻撃が通用しないのだ。故に悪霊に対する対抗手段を人々は持っていない……。
そう、機械によって悪霊すらも実体化されてしまうので、日本は増え続ける悪霊の始末に追われていたのだ。
だがどれだけ攻撃を重ねようが、悪霊が死ぬことはない……。
「それで……日本は魔法協会に助けを求めたわけね」
空港に1人、アタッシュケースすら持たず、この時代には珍しいガラケーを耳に当てる少女がいた。
飛行機を眺めながらガラケーを耳に当てている。
「そのとおりだよグレイ、でも説明は最後まで言わせてくれ、ムズムズしちゃうからさ」
「安心しなさいマーリン、私が来たからには、ここらの悪霊を絶滅させてやるわ」
「ギャグをフル無視とは、ひどいな君は。まぁ……その、善霊まで絶滅させないでくれよ?」
マーリンは自分の考えた渾身のギャグを無視されたことを悲しみながらもグレイに言葉を返す。
「大丈夫よ!なんとかなるわなんとか」
マーリンの説教が始まる前にグレイは通話を切り、空港を出た。
「それにしてもひどいわよね……私だけ飛行機って、みんなマーリンの転移魔法を使ったのに……。まぁいいわ、ここにいる悪霊全員ぶっ殺して!ゼルネから金をむしり取ってやるわ!!」
辺りに響き渡るほど大きな笑い声を上げながらグレイは街の奥へと入っていった。




