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フレンドは荊姫のお母さん

 

 うちのクラスにはとんでもない美少女がいる。

 伊原綾香。通称荊姫。男子に棘があるので、男子は嫌いなのかもしれない。だけど、彼女の容姿に引かれて告白する男子は後を絶たず、我が校の風物詩になっている。

 長い髪は絹の様に美しく、髪質の柔らかさがうかがえる。くりっとした大きな瞳に目の下の泣き黒子が特徴的で、とても可愛らしい。当然、俺も男子だから可愛いと思うのだけど、男子に対する棘がものすごいでの、正直話したいとは思わない。

 まあそもそも俺は友達すらいないんですが。そもそも俺は学校での友達作りを諦めている。コミュニケーションがあまり得意じゃないし、オタク気質な俺と話が合う人間もそうそういない。

 だが、俺には俺の世界がある。俺はネットでオンラインゲームを嗜んでおり、そこのフレンドと仲がいい。ハンドルネームはたまる。俺の苗字の田丸から取った安直なネーミングだ。そして、そんな俺と仲良くなってくれたのがハムスケさん。一年以上同じゲームをプレイしており、チャットでなんでも言い合える関係になっている。ハムスケさんとはもはやマブダチと言っても過言じゃないだろう。

 今日も、ハムスケさんとチャットをしながらゲームを遊んでいた。


「そういえばもうすぐたまるとフレンドになって一年だね」

「もうそんなに経つか」

「せっかくだし、オフ会やらないか?」

「オフ会? おもしろそうだな」


 ハムスケさんとはなんでも言い合える友達だ。俺としては実際に会ってみたい。俺はハムスケさんとどこで会うかを話し合う。すると、ハムスケさんは同じ地域に住んでいることがわかった。次の休日に俺はハムスケさんとオフ会をすることになった。


 そして迎えた休日。俺はハムスケさんと待ち合わせのカフェに来ていた。お店はハムスケさんが指定してきたので、それに合わせた。店に入ると店員さんが奥から出てくる。


「どうしてあなたがここにいるの」


 そうジト目で俺を見てくる店員さんはなんと荊姫こと伊原綾香さんだった。まさか伊原さんがバイトしているなんて夢にも思わず。


「ここは女性が多いカフェなのに、どうして男子の田丸くんが来るの」

「いや、俺も待ち合わせをしていて」


 まさかハムスケさんが指定したカフェが女性客が多いカフェだなんて思わなかった。俺は額に冷や汗を浮かべながら、苦笑する。


「まあいいわ。席に案内する」


 伊原さんはそう言って俺を席に案内してくれる。周囲を見回すと、本当に女性客しかいない。店内の雰囲気はおしゃれな感じで、いろんな装飾品が飾られている。音楽も落ち着いた感じの曲が流れており、リラックスできる。

 そうしてハムスケさんを待っていると、スマホにハムスケさんからメッセージが届く。


「今店内に入った」


 俺は入り口を見る。すると、そこにはとんでもない美人が立っていた。ロリ顔で髪は長く、ゆるふわのパーマがかかっている。身長は低く、可愛らしい女性だ。

 俺は思案する。このカフェを指定した時点でなんとなく察していたが、ハムスケさんは女性なのだろうか。そうなると話は変わってくる。俺は女の子が苦手だ。しゃべったこともほとんどないし、視線が泳いでしまう。

 とりあえず俺は女性に向かって手を上げる。女性は俺を見つけると破顔した。


「たまるくん?」

「そうです。たまるです。ハムスケさんですよね」

「そうよ~。よろしくたまるくん」


 チャットの時と明らかに口調が違う。俺は緊張をはらみながらハムスケさんを見る。


「まさか女の人だとは思いませんでした」

「あら~。というか、いつもみたいにため口で話しましょ。私たちの仲じゃない」

「そうだな。つい緊張しちゃって」


 俺は頬を掻く。正直、こんな美人が相手だとどう接したらいいのか戸惑うけど。それでもハムスケさんがタメ口でいいと言ってくれたので少しは喋りやすい。

 俺たちに注文を聞きにきた伊原さんが俺たちを見て固まる。そして物凄い剣幕でハムスケさんに詰め寄った。


「ちょっと、ママ、これどういうこと⁉」

「え、ママ?」

「そうなの。娘の綾香よ。可愛いでしょ」


 そう言ってウインクしてくるハムスケさん。いやいや。伊原さんのお母さん? 

 とてもそうは見えないのだが。いや、確かによく見ると顔が似ているけど。


「失礼なんだけど、おいくつなの?」

「今年で三十三よ」

「三十三歳⁉」


 とてもそうは見えない。大学生ぐらいかなと思っていたので、その年齢に驚く。それよりも驚いたのはハムスケさんが伊原さんのお母さんだということだ。今年で三十三歳ということは伊原さんが今年で十五歳だから十八歳の時の子供ということになる。


「そうじゃなくて、どうしてママと田丸くんが一緒にいるのよ!」

「マブダチなの!」


 そう言ってハムスケさんが俺の方に移動してくる。そして、俺の首に手を回すと抱き寄せる。ふんわりとした香りが鼻腔をくすぐり、俺は思わず赤面する。


「どういうことよ⁉ そんなの私認めないからね!」

「店員さん、ちゃんとお仕事しなきゃダメよ」


 ハムスケさんに指摘され、伊原さんが唸る。


「……ご注文は、いかがなさいますか?」


 歯噛みしながら伊原さんが俺たちに注文を聞いてくる。


「とりあえず今日はオフ会楽しみましょう」


 ハムスケさんがそう言ってメニューを開いた。

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