人がひとり生きていくために必要なもの
今の人が1年かけて食べるお米は1俵。
「今の若い人はパンも食べるから昔ほどは食べなくなったのよ。江戸時代は一人2俵半っていわれてたりしたのよ。朝白いごはんを3膳おかわり、なんて当たり前だったらしいわ」
中学生のときにいった田舎の農家の人が教えてくれた。
1反の土地から約8俵のお米がとれるという。
1反は300坪。1坪が畳2畳分なのでつまり畳75枚分の広さの土地が人が一人1年間食べるのに必要なお米を育てる広さだという。
「5人だと畳375枚分…、いや、パンとかも考えたら半分だけど、そもそもパンのための小麦はどれくらい収穫すれば…」
朝ご飯の後、今後のことを考えて紙とペンを持ちながら考え事をしていたが、
「とりあえず、やるしかない!」
なんとなくの数字をみてもピンとこないので、とりあえず、動くことにする。
の前に…。
「リン、ラン、ルー、水浴びして着替えしよう」
ボロボロの白い長いシャツみたいなものを着ただけだった3人に、自分の洋服タンスからいくつか見繕う。
季節的に初夏に近い春とはいえ、朝と夜は冷えるし、そもそもこれからいろいろな作業をするのに不向きすぎる格好だ。
水浴びをする前に、どうせ汚れるなら、とサンダルだけ3人に貸して、表庭の野菜畑に連れてくる。
「この畑をみんなで大きくしようと思うんだ」
それぞれの野菜を指さして、説明をしながらそれくらいの広さにしたいか、説明をする。
たま、リン、ラン、そして一番小さいルーもきちんと聞いて頷いてくれた。
僕の家は都心のいわゆる一等地にあったが、住宅街のため、近隣は比較的大きな家が多くて、庭もそこそこ広かった。
僕のアイデアとしては、表の庭はお試しの畑で、本格的なものは裏に作ろうとおもっている。
自宅の裏庭はいまは草がボウボウになっているけれども広さとしては60坪くらいあって、南向き。隣の家の垣根をとっぱらって、右隣、裏の家の庭、左となりの家の庭をくっつけると200坪くらいの広さになる。
200坪なら畳400枚分。
この広さでお米だけ作ってもいいし、いろいろな野菜も併せて作ることもできる。
とりあえず、家の目の前を畑にして、まずは自分達の食い扶持を育てよう、そう考えた。
本当は隣接している家を壊してもっと広くすることもかんがえたけれども、家を壊すための機械や道具を考えるととりあえず庭のエリアだけでなんとかしたほうが現実的な気がした。
リン、ラン、ルーに
「まずはいろいろな道具を仕入れに行こう」
というと、車へと案内する。
たまは何度かのドライブで慣れているが、この3人は車自体見るのも初めてのようだった。
後ろの座席に3人を座らせると、エンジンをかけて走り出す。
最初はびっくりしていた3人だが、動いていく景色を眺めて興奮しているうちに、あっという間に目的地につく。
何度もお世話になったホームセンターだ。
今回は野菜の種、苗、スコップなどの作業用のものなど、5人で来てしまったので前ほどは荷物を運べないなあ、と思いながらいろいろ物色していると、たまが何かを見つけたらしく服の裾をひっぱりお目当ての場所へと連れて行く。
そこは車の専門店ほどではないがカー用品が取り扱われているところで、これこれ、と指を指しているのが「ルーフキャリア」と呼ばれる、車の屋根につけて荷物を載せる場所をつくるものだった。
「これなら、5人で車に乗ってもいろいろ運べるね」
たまも5人で乗ってきたら、運ぶものが少しになるんじゃないかと思っていたようだ。
まずはそれを車に設置して、次に野菜の苗やタネ、肥料をいれたBOX、スコップ、芝刈り機など作業用品をいれた少し大きめの収納BOX、あとは探していてみつけた米、パスタなどの食べれそうな食糧と調味料を大きなプラスチックのBOXにいれて、車の上に積み、ヒモできちんと固定する。
さあ出発だ、というときに思い出して、寝具うりばだったところで掛け布団、あとタオルなど袋にはいったままでなるべくきれいなものを少し多めに持ちだして、トランクに入れた。
建物の外を出ると日が高くなってきたので、一旦家に帰ることにした。




