6日目
ウサギの耳を付けた子供3人を保護した翌朝。
まだ明るくなるぎりぎり前のそんな明け方に目が覚めた。
とはいえ、日没後は明かりもないため直ぐに寝てしまう。
いまが体感で5月くらいだとすると日の出が5時くらいで日没が7時前だから、7時間か8時間は寝ている計算になる。
良く寝てすっきりとした頭でベッドから出ると、たまも起き出す。
そっと足音を立てないように下の階にいくと、リビングでは昨日の3人が寄り添うようにまだ眠っていた。
『ヨクネテルネ』
たまがそう言っているので、僕は人差し指を唇の前にたてて「しー」というと、朝ご飯の準備を静かに始める。
ウサギ耳の彼らはウサギと同じように草食なのだろうか、それとも肉も食べるのだろうか?
昨日のカップラーメンには肉のようなものが入っていたけれども、気にしないで食べていたので、というかそもそもカップラーメンを普通に食べていたので、おそらくは大丈夫だろう、と考え、朝ごはんは昨日作ったばかりの鶏小屋から卵を拝借し、温泉のときに持ってきていた野菜を使ってスープを作る。
庭で発電機を使って調理をしようとおもったが、発電機の音で彼らが起きてしまうと可哀想なので、昨日倉庫でみつけた炭とバーベキューコンロで調理をする。
本当はパンが食べたいところだけれども、非常食の缶詰のパンもあけてみたらダメだったのでなんとか食べれそうな乾パンを添えてみる。
久しぶりにカップラーメンじゃない料理にしたのには理由があって、5人分のカップラーメンがもうないからだった。
スープができあがり、お茶の準備をしているとウサギ耳の彼らの鼻がひくひく、と動きぱっちり、と目が開いた。
「おはよう」
丁度のタイミングでリビングにスープを持っていくと、一瞬ビクリ、とおびえたようにカラダをこわばらせた彼らだったが「朝ご飯、食べない?」そういうと毛布から抜け出して、リビングのテーブルにたまとともに席についた。
「いただきます」
僕が手を合わせると、たまも真似して、さらにウサギの彼らも真似をして挨拶をする。
卵と野菜のスープは起きたばかりのカラダにしみわたり、乾パンも久しぶりに食べるとこれはこれで美味しいな、と思える味だった。
ある程度ご飯がすすんだのでたべながら、僕は彼らに幾つか質問をした。
「名前は?」
と聞くと、一番年長の男の子がリン、次に大きい女の子がラン、そして一番小さい男の子がルーという名前だった。
「どこから来たの?」
この質問には三人とも顔を見合わせ、上をみたあと、首をかしげて「わからない」と首を振る。
気が付いたら3人は知らないところにいて、見たこともない建物の間を彷徨っていたら、見たこともない生き物に吠えられて立ちすくんでいるところを僕に声かけられたのだという。
「犬、みたことないの?」
「いぬ?」
『昨日吠エラレテイタ生キ物ノコト』
たまが知らないの?というように教えているが、たまも「犬」という言葉を昨日知ったので、そんなに得意そうにしなくても良いのではないかと思う。
ただ、この3匹も地球にいた者たちではなさそうだ、ということはなんとなく把握できた。
「君達は、これからどうするの?」
そう問いかけると
「どうしよう…」3人とも迷子になった子供のような顔になる。
たまは「ココニイチャダメナノ?」
という顔をするが、簡単に決めるわけにもいかない。
ちなみに3人は気が付いたら一緒にいただけで、兄弟でも家族でもないらしく、またここにいる前の記憶が全く思い出せないという。
たまは最初の1日目は何か知っているようなそぶりだったが、詳しく聞こうとしたが1晩寝たら、何もかも忘れてしまっていたという。
物忘れのウイルスか何か蔓延しているのだろうか、と思ったが、僕の記憶はそのままだったので、そういうものではないのかもしれない。
そんなことを考えていたら、リンが僕の顔を見て「迷惑だと思うけれども、ここにいさせてください」そういって、頭を下げた。
残りの2人、ランとルーもあたまを下げる。
いろいろ考えていたのが迷惑だからと思われたようだ。
「いてくれるのは全然かまわないよ。むしろ小さな子が外でなにかあったら僕も嫌だし」
ただ、と付け加える
「2人から倍以上の5人になったってことはその分ご飯の心配をしなくちゃいけなくなる。みんな、手伝ってもらうことになるけどいいかな」
そういってたまと3人を見渡すと、みんなが深くうなづいてくれたのだった。