エピローグ「創生の庭に、祝福を」
建国から、十年。
アヴァロン連邦は、大陸で最も豊かで、平和な国として、その名を知られるようになっていた。
かつて忘却の荒野と呼ばれた不毛の地は、今や見渡す限りの緑の沃野と化し、様々な種族が暮らす美しい街が点在している。
俺、カイ・アヴァロンは、アヴァロンの初代国王として、今もこの国の象徴である、最初の開拓地に住んでいた。
もちろん、丸太小屋は昔のままだ。
「カイ様、お茶が入りましたよ」
縁側で書類仕事をしている俺に、優しい声がかかる。
声の主は、少し大人びた雰囲気になったルル。彼女は、俺の最初の国民であり、そして今は、俺の妻でもある。
「ああ、ありがとう、ルル。……ん?」
俺の膝の上で、すやすやと眠っていた小さな子供が、もぞもぞと身じろぎした。
俺とルルの間に生まれた、娘だ。
銀色の髪に、ぴょこんと生えた小さな兎の耳。俺の指を、小さな手でぎゅっと握っている。
「お父様が大好きなのね」
「当たり前だろ。俺の娘だからな」
そんな親バカな会話をしていると、家の向こうから、もう一人の声がした。
「二人とも、いつまでいちゃついているのかしら。会議の時間が近いわよ、カイ国王陛下?」
呆れたような、でもどこか楽しそうな声。
アヴァロンの宰相として、俺を支えてくれているエリナだ。彼女もまた、俺の生涯のパートナーであり、もう一人の妻である。
ちなみに、ドーガンは工部大臣として、今も元気に国中のインフラ整備に飛び回っている。
「はは、悪い悪い。今行くよ」
俺は立ち上がり、愛しい二人の妻と、可愛い娘の寝顔を見つめた。
十年前、たった一人でこの荒野に放り出されたときには、想像もできなかった光景だ。
スキル『創生の庭園』。
女神様は言っていた。『使い方次第で、世界すら創り変えるでしょう』と。
その言葉は、本当だった。
俺は、自分の世界を、この手で創り変えたのだ。
空は青く、風は優しく、畑には黄金の作物が揺れている。
遠くの街からは、様々な種族の子供たちの、楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
これこそが、俺が作りたかった楽園。
俺だけの、そして、みんなの、アヴァロン。
俺は、愛する家族と共に、どこまでも広がるこの創生の庭を、これからも守り、育てていく。
この幸せな物語が、永遠に続くことを願いながら。




