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役立たずと追放された生産職の俺ですが、覚醒した『土いじり』スキルでエルフやドワーフと最強の楽園を創ります  作者: 黒崎 隼人


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第1話「役立たずの烙印と、無限の荒野」

「カイ・アサノ。お前は今日限りでパーティーを追放だ」


 冷たく、一切の感情を排した声が、しんと静まり返った酒場に響き渡った。

 声の主は、聖剣に選ばれし勇者マクレフ。輝く金髪を揺らし、整いすぎた顔を歪ませながら、俺を見下している。その隣には、聖女やら賢者やら、きらびやかな仲間たちが同調するように冷ややかな視線を向けていた。


(ああ、やっぱりこうなるよな)


 俺は静かに視線を落とす。

 ブラック企業で過労死した俺が、女神様のご厚意で転生させてもらったこの世界。

 そのときにもらったユニークスキルが『創生の庭園ジェネシス・ガーデン』。

 名前だけは壮大だが、要は『土いじり』のスキルだった。

 土を耕したり、植物を育てたりすることに特化した、戦闘とはおよそ無縁の生産系スキルだ。

 魔王討伐を目指す勇者パーティーにおいて、俺の存在が浮いていたのは百も承知である。

 荷物持ちや野営の準備など、そんな雑用ばかりを押し付けられてきた。


「俺のスキルが、戦闘向きじゃないのはわかってる。けど、食料の調達とか、野営地の整備とかで、貢献してきたつもりだ」


 未練がましく、最後の抵抗を試みる。だが、そんな言葉が彼らに届くはずもなかった。


「貢献? 笑わせるな。我々が背負っているのは、世界を救うという途方もない重圧だ。一瞬の判断ミスが万の命を奪う戦場に、戦闘能力を持たない才能なき者を連れて行く恐怖が貴様にわかるか。貴様が育てた不味い芋など、何の足しにもならん。我々が必要としているのは、一撃でオークを屠る魔法や、ドラゴンを切り裂く剣技だ。土いじりなど、安全な後方で農奴の仕事でもしていればいいだろうが」


 マクレフの言葉は、鋭い刃のように俺の胸をえぐった。

 不味い芋、か。確かに、この世界の調理法は煮るか焼くかが基本で、お世辞にも美味いとは言えなかった。それでも、みんなが腹を空かせないようにと、必死で育ててきたつもりだったのに。


「もういいだろう、マクレフ。こんな男に構っている時間も惜しい」


 賢者と名高い魔術師が、扇子で口元を隠しながら言った。


「そうね。カイさんがいると、パーティーの平均レベルが下がってしまいますもの」


 聖女が慈悲深い笑みを浮かべながら、口元を冷たく歪める。

 そう、俺のレベルは一向に上がらなかった。戦闘に参加させてもらえないのだから当然だ。


「というわけだ。これまでの駄賃だ、受け取れ」


 マクレフが、革袋をテーブルに投げつける。コツン、と鈍い音がして、中からこぼれ落ちたのは、道端で拾ったようないびつな石ころと、腐りかけの不味い種芋だった。数ヶ月間、身を粉にして働いた対価がこれか。


「そして、今後の身の振り方だが……王都から西へ行った先に、『忘却の荒野ぼうきゃくのこうや』と呼ばれる土地がある。魔物が跋扈する不毛の地だが、主もいない。そこなら、お前が好きなだけ土いじりができるだろう。せいぜいこの不味い芋でも食って、魔物の餌にでもなるんだな」


 それは追放というより、ほとんど死刑宣告に近かった。忘却の荒野。その名の通り、一度足を踏み入れたら二度と帰っては来られないと言われる魔境だ。


 俺はもう何も言わなかった。言うだけ無駄だと悟ったからだ。

 投げつけられた石ころと種芋を拾い集めると、一瞥もくれずに酒場の扉へと向かった。背後で上がる嘲笑を背に、俺は木製の扉を重く押し開けた。

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