第138話 キョウの本能
魔王の八つ当たりによって、チョットツが満足気に血反吐を吐く。そんな混沌とした玉座前の広間で、魔王が膝を抱えて地面を見つめていた。
(なにやってんの、あいつ?)
「キョウがモテてるのを見ていじけてるだけニャ。チャンスだニャ」
その時、狂戦士の本能が爆発した。チョットツが吐いた血を見て、キョウが興奮したのだ。
興奮したキョウは、高らかに雄叫びを上げると、「オレにも殴らせろ」とばかりに、魔王に向かって猛進した。
「ウガァァァァ!!!」
シュンッ!!
(よし! 『ムッキムキクソゴリラ』モードだ!)
激突する直前に、京介がステータスを切り替えた!
(いっけぇぇぇぇぇ!!!)
「これでやっと終わりだニャ!」
トンッ。
(えっ?)
「「「「えっ?」」」」
誰もが魔王を倒したと思ったその時。キョウが、魔王の肩にそっと手を添え、皆が見守るなか、魔王との対話を開始した。
「ウガ(そんなに落ち込むな)」
「ウガ夫、そんな慰めなどいらん!」
「ウガガッ(誰にでもモテ期が来るさ)」
「そうかな? オレにも来る?」
「ウーガ!(もちろんさ!)」
「マジで! そうか! オレにも来るか! ありがとうウガ夫!」
(なんか慰めてるんだけど!? お前達親友かよ! 戦えよ! 魔王もお礼を言うんじゃねぇぇ!!!)
「京介、そう言うな。友情っていいもんなのニャ。見ていて微笑ましいのニャ」
ポヌルが、荒ぶる京介をなだめている中、キョウと魔王の会話は続いていた。
「ウガーガ!(まぁ、それでも俺のほうがモテるけどな)」
「ウガ夫、貴様ぁぁぁ!!!」
「ウガァァァァァ!!!」
(あ、一瞬で友情が崩壊したぞ)
「仕方ないのニャ。それが思春期ってやつなのニャ」
魔王とキョウは同時に拳を振り上げ、お互いの顔面に向かって振り下ろした。
ドゴオォォォォォンンンン!!!!!
双方の拳が、ほぼ同時に相手の顔面を捉えた。
『攻撃力特化』のキョウが与えるダメージは絶大。しかし、防御力の心もとないキョウもまた絶大なダメージを受けるのであった。
魔王【ダメージ 9999】
キョウ【ダメージ 2609】
(あぁぁぁぁ!!!! 瀕死じゃないか! せっかくラブリーが回復してくれたのに!!! あっ、そうだ! ラブリー、もう一回回復して下さい! でへへ)
「エロモードはやめるニャ! よく見るニャ! 魔王も瀕死なのニャ!」
魔王とキョウが、同時に膝から崩れ落ちた。どちらも瀕死、先に一撃食らった方が負けるという、少年誌のボス戦でよくある状況になっていた。
そんな中、先に動き出したのは魔王だった。魔王は、ふらふらしながらゆっくりと立ち上がると、何やらぶつぶつと呟き始めた。
「闇を照らす地獄の業火よ――」
(ヤバい! さっきの付与魔法だ!)
「ヤバいのニャ! 今度は剣だから燃え尽きないのニャ!」
魔王に絶大な魔力の渦が集まり、周囲の温度が上がっていく。
失われていく湿度から、魔法の発動まで時間が無い事が分かった。
(動け! 早く動けよ、キョウ!!)
キョウがふらふらと立ち上がったその時、魔王の剣が漆黒の炎に包まれていくのが見えた。
(よし! 『お通し』モードだ!)
京介がステータスを、速度特化に切り替えると同時に、立ち上がったキョウが行動を開始した。
シュンッ!
目的地は魔王。
京介が激突寸前に、『クソゴリラ』に切り替える!
「これで終わりだ! ウガ夫!!!!」
(これでお仕舞いだ、魔王!!)
「ウガアァァァァァッ!!!」




