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ネズミ族が人間の集落を発見


洞窟の拠点生活が安定し始めた頃、ある夜、ネズミ族の偵察隊が興奮した様子で帰還した。彼らが持ち帰ったのは、我々にとっても衝撃的な報告だった。


「リーダー!聞いてくれ!俺たち、地上の北東に人間の集落を見つけたんだ!」


「人間の集落か…!」と俺は目を見開いた。人間が近くに住んでいると知っただけで、色々と心がざわつく。地上に出てからしばらくは、我々はほとんど独立して生活をしていた。人間がどのような生活を送っているか、どういった物資を必要としているかなど、一切気にしていなかった。


「それで、集落の様子はどうだったんだ?」と、早速、詳しく尋ねた。


ネズミ族のリーダーは、思い出しながら話し始めた。「集落は十数軒の小さな家が並んでいて、畑もいくつか見えた。でも…なんだか活気がないというか、皆が少し疲れているように見えた。」


「活気がない…?」俺はその言葉にひっかかりを感じた。


「そう。畑もあんまり豊作って感じじゃないし、収穫している人間たちもあんまり元気がなかったんだ。それに、夜になると集落の外れで何か薬草らしきものを探しているみたいだった。」


「薬草?」その言葉を聞いて、俺はさらに興味を引かれた。


「そう、薬草だ。どうも、治療や食料の保存に使えそうなものを必死に探しているみたいなんだ。実際に集落内で少し様子を見てみたけど、彼らの間では、病気が流行っているらしくて、薬草が足りないんじゃないかって話していたよ。」


「なるほどな…」俺は腕を組みながら考え込んだ。薬草が不足しているということは、人間たちにとって大きな問題になっている可能性が高い。この状況を利用すれば、我々と人間の間で有益な関係を築くことができるかもしれない。


◇◇◇


「リーダー、それと、食料も不足しているみたいなんだ」と、ネズミ族の一匹が補足してきた。


「畑は少しずつ手入れされているけど、どうも土がやせているらしくて、作物の成長も良くないみたいだ。人間たちの顔色もよくないし、疲れ切った様子だった」


この情報に、俺はますます興味を持った。食料と薬草の不足で集落が困窮している…これは交渉の糸口になるかもしれない。


「よし、ひとまずネズミ族の皆で調査を続けてくれ。特に、彼らがどの薬草や食料を必要としているのか詳しく知りたい。人間に気づかれないように気をつけながらな。」


「了解!任せといて!」ネズミ族は元気よく答え、再び集落へと向かって行った。俺は彼らが持ち帰る情報に期待しつつ、自分たちの生活も着々と進めることにした。


◇◇◇


それから数日後、ネズミ族の偵察隊が再び戻ってきた。今回は疲れた表情ながらも、どこか満足げな様子だ。


「リーダー、帰還したよ。ちょっと面白いことを見つけたんだ。」


俺は身を乗り出し、彼らの話に耳を傾けた。


「人間たちは、どうやら集落の近くの山から薬草を探しているみたいなんだけど、最近は収穫量が減ってるらしくて、治療や保存に使える薬が足りてないみたいなんだ。」


「なるほど…それで?」俺は続けるように促した。


「それでな、その不足した薬草を代わりに乾燥保存して、しばらく使い回しているみたいなんだ。でも、乾燥させすぎて効き目が弱くなっているみたいで、効果が薄くなっているとかで、人間たちは困っている様子だったよ。」


薬草を乾燥保存して使い回す…これはなかなか厳しい状況だ。人間たちもこの土地での生活には苦労しているのがよくわかる。


「リーダー、それとね、人間たちは村の周辺で新しい薬草を栽培しようとしているみたいなんだ。けど、まだうまく育たないみたいで、村の中で困っている人たちが増えている様子だったよ。」


「なるほど…薬草の栽培か。俺たちが持っている薬草の一部を提供することで、人間たちとの関係を築けるかもしれんな。」


俺は考えを巡らせていた。もし彼らが薬草や食料を切望しているのなら、我々がその一部を提供することで、何らかの取引ができる可能性がある。そうすれば、我々の存在も人間たちにとって脅威ではなく、協力関係へと発展するかもしれない。


◇◇◇


その日の夜、俺はネズミ族のリーダーと相談しながら、どうすれば人間たちとの接触を図れるかを話し合っていた。


「リーダー、人間たちがあれだけ苦労しているんだったら、もし薬草を渡すことができれば、俺たちの存在も受け入れてもらえるかもしれない。もっとも、ゴキブリ族が薬草を持って現れたら驚かれるだろうけど。」


俺は苦笑しながら、「まぁ、そりゃそうだが、きっと人間たちも薬草が手に入るならば、姿形なんて気にしなくなるはずさ」と言って、自信満々で返した。


「それに、もし食料も少し分け与えることができれば、人間たちは俺たちを拒むことはないだろう。むしろ、歓迎してくれる可能性もある。」


ネズミ族のリーダーもその考えに賛成し、もう少し慎重に準備を整えた上で人間たちに接触してみることになった。


◇◇◇


次の日、俺たちは薬草と簡単な食料を袋に詰め、ネズミ族と一緒に集落の様子を確認しに出かけた。夜陰に紛れて、ネズミ族が慎重に集落の様子を確認し、少しずつ人間の警戒が薄い場所に向かって進んでいく。


「よし、今だ。」俺は人間たちの集落の近くまで進み、そっと薬草を見える場所に置いてみた。


「これで、きっと人間たちは薬草を見つけてくれるだろう。」俺はネズミ族の仲間に目配せをし、彼らと一緒に物陰に隠れて様子を見守った。


◇◇◇


次の朝、人間たちが薬草を見つけたのか、少し騒がしい声が聞こえてきた。俺たちは息を潜めながら、その場の様子を見守った。


「おい、これ見てくれよ!ここに新しい薬草があるぞ!これはありがたい、薬不足が少しでも解消されるかもしれん!」


人間たちが薬草に気付いたようで、彼らの顔には安堵の表情が浮かんでいた。


「これは…誰かが置いていったのか?それとも奇跡が起きたのか?」と、一人が不思議そうに首を傾げながら呟いている。薬草が彼らにとってどれだけ大切なものであるかが伝わってくる場面だった。


その後、人間たちは薬草を丁


寧に拾い上げ、集落の中心部へと持ち帰っていった。俺たちは影からその様子を見届け、今後の展開に期待を寄せながら、その場を後にした。


◇◇◇


俺たちは帰り道で、次の手について話し合った。


「リーダー、人間たち、ほんまに薬草が必要そうだったね。」とネズミ族が興奮気味に語る。


「あぁ。だが、薬草だけではなく食料も渡してみると、さらに彼らと接触する機会が増えるかもしれん。」


こうして、俺たちは次なる接触に備え、さらに薬草や食料を用意して人間たちとの関係を築く準備を進めることにした。

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