ゴキブリとしての最初の成長
「はぁ、やっと逃げ切った…でも、毎回こんな目に遭うのか?」
俺はネズミ族との死闘から何とか逃げ延び、廃材の陰で一息ついていた。ゴキブリとしての俊敏さと知恵を駆使して何とかやり過ごしたものの、もう限界だった。体はボロボロ、足は痺れ、全身に痛みが走る。
「くっそ、やっぱり弱肉強食って厳しいな…でも、逃げ切れたのは奇跡だよな。」
自分を褒めてやりたいところだが、残念ながら褒める余裕もない。この世界で生き延びるためには、まだまだ多くの試練が待っている。しかも、俺はゴキブリだ。強いモンスターに挑んだり、派手な魔法をぶっ放したりする勇者とは違う。俺にできるのは、ひたすら逃げること。そして――生き残ること。
「でもさ、俺、結構頑張ってるよな? ゴキブリのくせに。」
そんな自己満足に浸っていると、ふと腕に鋭い痛みが走った。見ると、ネズミ族との戦いで引っ掻かれた傷が深く抉れている。血が滲み出て、腕がひどく腫れているじゃないか。
「うわぁぁぁ、マジかよ! こんなんで戦ってたのか…俺、超頑張ったじゃん!」
いやいや、自分を褒める場合じゃない。これじゃあ、次に襲われたら動けなくなる。今は地下迷宮のど真ん中、助けなんて誰もいないし、治療なんて望むべくもない。
「はぁ…このまま死んでしまうのか…いやだ、まだ死にたくないぞ! なんとかならないのか、この体!」
ゴキブリの体を持つ俺に、再生能力があるのかどうかはまだ知らなかった。だが、転生してゴキブリになった以上、何かしらの特殊能力があるはずだ。期待を込めて自分の体をじっと見つめると――なんと傷口が徐々に塞がり始めた。
「え? マジで!? これが…再生能力ってやつか?」
確かにゴキブリってやたらしぶといイメージはあったけど、ここまでとは思わなかった。腕に開いた大きな傷がゆっくりと閉じていき、痛みも和らいでいく。これは、かなりのアドバンテージだ!
「いやいや、すごいじゃん!ゴキブリの再生能力って、こういうことだったのか! これは使える!」
なんか急に自信が湧いてきたぞ。これなら、どんな怪我をしてもそのうち治るってわけだ。戦うための力はなくても、生き延びるための能力はバッチリあるってことじゃないか。
「ふふ、これで俺も安心だな。ま、転生するならゴキブリも悪くない…いや、やっぱり悪いか。」
でもまあ、これで少なくとも、普通の人間じゃありえないような耐久力を手に入れたことは確かだ。これからはもっと積極的に生き延びる戦略を考えていくべきだろう。
再び襲撃される――だが今度は違う
「さて、再生能力がわかったし、これからどうやってこの地下で生き抜こうかな…」
そう考えながら通路を進んでいたその時、俺の触角がピクピクと反応した。また何かが近づいてくる。しかも、さっきのネズミ族とは違う。何だ? どんな奴だ?
「ちょっと待て、またかよ! 次から次へと本当に勘弁してくれ…!」
俺が愚痴る間もなく、視界に巨大な影が飛び込んできた。そいつは巨大なムカデだ。全身を硬い外骨格で覆われ、鋭い顎で何でも噛み砕きそうな奴だ。
「うわ、ムカデかよ!おいおい、これも結構な強敵じゃん!」
ただ逃げるだけじゃまた追い詰められることは明らかだ。ここは知恵を使うしかない。ムカデは足が速いが、ゴキブリの俺だって素早さには自信がある。だが、それ以上に重要なのは、このゴキブリの再生能力をどう活かすかだ。
「そうか、今度は逃げながら知恵を絞るってわけだな。俺、少しずつ頭良くなってきてる気がする!」
俺はムカデの動きをじっくり観察し、そいつがどのタイミングで突っ込んでくるかを見極めた。そして、一気に動いた。
「こっちだ、こっちに来い!俺が餌だぞ、ムカデ野郎!」
ムカデは俺の挑発に乗って突進してきた。その勢いを逆手に取って、俺は狭い隙間に飛び込んだ。ゴキブリ特有の素早さで、小さな隙間に滑り込むことはお手の物だ。
「よし、これなら追いつけないだろ!」
ムカデはその巨大な体が災いし、狭い通路をすぐには追いかけられない。これが俺の作戦だった。自分の小さな体を活かして、敵の巨大な体を逆に足枷にする作戦だ。
「どうだ、これが知恵ってやつだ!俺、ちょっと賢くなってきたな!」
ムカデは必死でその巨体をねじ込もうとするが、やはり隙間には入れず、俺が手の届かない場所にいることにイライラしているようだ。俺はその様子を見て、ちょっとした勝利感を味わった。
「ふふ、でかけりゃいいってもんじゃないんだよ!」
だが、俺の慢心もつかの間。ムカデは自分の長い体を使って、通路の先をぐるりと回り込み始めた。まさか、俺を別の角度から追い詰めるつもりか? いや、あれはただの本能の動きだろうが、それでも危険だ。
「おいおい、何してんだよ!そんなに俺を食いたいのか!?」
しかし、俺にはゴキブリの驚異的な再生能力がある。仮に少しやられたとしても、俺はすぐに回復できる。そう思った瞬間、少し強気になった俺は、ムカデが通路を回り込むのを待たずして、自分から飛び出した。
「よし、今度は俺が攻める番だ!」
再生能力のおかげで自信が湧いてきた俺は、狭い隙間から一気に飛び出し、ムカデの胴体に飛びかかった。もちろん、俺にそんなに大きな攻撃力があるわけじゃない。だが、俺はそのままムカデの体にしがみつき、ギリギリのところで逃げ出した。
「よし、これで十分にダメージを与えたはずだ!」
実際、ムカデは少し怯んだようだ。だが、俺はこれ以上戦うつもりはない。逃げながら知恵を使うのが、俺の新しい戦略だ。俺は再びムカデが身動きできない場所に素早く潜り込み、今度は完璧に逃げ切ることに成功した。
知恵と再生能力での成長
「ふぅ…なんとか逃げ切れたな…」
俺は冷や汗をかきながらも、ゴキブリとしての成長を実感していた。再生能力のおかげで傷もすぐに癒えたし、何より今回は知恵を使ってムカデに対抗できたのが大きい。
「これなら、俺もこの世界でやっていけるかもしれない…ゴキブリだけどな。」
再生能力を活かして、今後もっと大きな敵とも戦っていけるかもしれない。戦いというよりは、いかに生き延びるかが重要だが、少なくとも今日の俺は一歩成長した気がする。
「よし、次はどんな敵が来ようと、俺の知恵と再生能力でなんとかしてやる!」
俺はそう決意し、再び地下の冒険を続けるのだった。