地下の暗闇に隠れ住む他の生物たちとの遭遇
「ふぅ…とりあえず、腹は満たせたな…」
初めての食料を手に入れた俺は、ようやく地下での生き延び方のコツを掴み始めていた。とはいえ、ゴキブリとしての生活は決して楽ではない。何せ、俺の身の回りには、俺よりも遥かに強力な生物たちがうじゃうじゃいるのだ。
「まさか、異世界でこんな弱肉強食を体感するなんてな…」
ゴキブリとして転生した俺は、弱者としての立場を痛感していた。人間だった頃のように、力や知恵で他人を支配することなど夢のまた夢だ。この世界では、自分よりも強い者に食われるか、弱い者を食うかしかない。
「こんな世界、もうちょっとゲーム的に楽しめればよかったんだけどなぁ…」
ため息をつきながら、俺はさらに地下の奥へと足を進めていた。少しでも安全な場所を探すためだ。だが、この迷宮のような地下では、どこへ行っても危険がつきまとう。さっきのような昆虫ならまだいいが、もっと大きな獣や魔物に遭遇したら、今度こそ俺の命はないだろう。
「しかし、こんなところに他の生き物なんているのか…?」
そう呟いた矢先――俺の触角がピクリと反応した。何かが近くにいる…それもかなりの数だ。周囲を警戒しつつ、俺はその気配に向かってゆっくりと進んでいった。そして、ついにその姿を捉えた。
「え、ネズミ…?」
俺が目の前で見たのは、巨大なネズミたちの群れだった。いや、ただのネズミじゃない。人間と同じくらいのサイズの、二足歩行のネズミたちだ。彼らは暗闇の中で何かを探しているようだったが、すぐに俺の存在にも気づいた。
「おい、あいつだ!あいつ、食い物だぞ!」
「え? ちょ、待て待て!俺は食い物じゃない!」
「・・・ってしゃべれるのかよ!???????」
どうやら、ネズミ族は俺を自分たちの餌だと認識したらしい。数匹のネズミがこちらに向かってくる。しかも、彼らの目は完全にハンターのそれだ。逃げるしかない!
「やばい! こんなのに捕まったら、俺、ネズミの夕飯にされちまう!」
俺は全力で逃げ出した。だが、相手は俺よりも大きいし、足も速い。狭い通路を駆け抜け、何とか彼らから距離を取ろうとするが、背後から迫ってくる足音がどんどん大きくなる。
「くそっ!ここで捕まるわけにはいかねぇ!」
ネズミ族の追撃戦
俺は地下の通路を全速力で駆け抜け、廃材や崩れた壁をすり抜けながら、必死に逃げ続けた。だが、ネズミ族も簡単には諦めてくれない。彼らの足音はどんどん近づいてくる。
「おい、待てよ!食い物なんだから、そんなに逃げるなよ!」
「だから俺は食い物じゃねぇってば!」
ネズミ族の声が背後から聞こえてくる。どうやら彼らは、俺を完全に餌と見なしているようだ。ゴキブリの俺にとって、これは正直言ってシャレにならない。俺はゴキブリに転生したばかりで、こんな巨大なネズミたちに勝てるような力は持っていない。
「とにかく逃げるしかない…!」
俺はさらに足を速め、細い隙間や廃墟の間を縫うようにして逃げ続けた。だが、ネズミ族の数は多いし、彼らはこの地下世界の住人だ。俺よりも地理に詳しいに違いない。
「おい、こっちだ!逃がすな!」
「くっそ、あいつら…!」
彼らの指示が飛び交うのを聞き、俺はますます焦ってきた。どうやらネズミ族は組織的に俺を追い詰めようとしている。これでは、いずれ逃げ場を失ってしまう。どうにかして、反撃する方法を見つけなければならない。
「ちょっと待てよ…反撃?俺が?」
自分が何を考えているのか、自分でも驚いた。相手は俺よりも遥かに大きいネズミだ。反撃なんて、無謀もいいところだ。だが、何もせずに捕まるわけにはいかない。俺はゴキブリとしての本能に従い、地下の薄暗い廃材の間に隠れることにした。
隠れながら考える
俺はひっそりと廃材の陰に身を潜め、ネズミ族の動きをじっと観察する。彼らは俺を探して周囲をうろうろしているが、まだ俺の正確な居場所には気づいていない。この状況をどう利用するか…ゴキブリとしての俺には、隠れることと素早く動くことが唯一の武器だ。
「よし…ここからどうやって脱出するか…」
俺は頭の中で計算を始めた。彼らの動きは、どうやら少しずつバラけ始めている。全員で固まって行動するわけではなく、数匹ずつがそれぞれの方向に散らばっている。これはチャンスかもしれない。
「奴らがバラけた瞬間に…」
俺は、ネズミ族の動きを見計らい、少しでも隙ができたら一気に反撃する覚悟を決めた。もちろん、俺が正面から戦えるわけではない。だからこそ、このゴキブリとしての素早さを活かし、相手の不意を突いて逃げるしかないのだ。
そして――
「今だ!」
俺は隠れていた場所から一気に飛び出し、最も離れていた一匹のネズミに向かって突撃した。ネズミは俺の動きに気づく間もなく、驚いてその場で立ち尽くす。
「うおおおお!食われるくらいなら、俺が先にやってやる!」
俺は全力でネズミの足に噛みついた。ゴキブリの俺にとって、それがどれほど効果があるのかはわからないが、やらなければ確実に食われる。必死の抵抗だ。
「痛ぇぇぇっ!なんだこいつ!」
ネズミは驚きとともに叫び声を上げ、その場で飛び上がった。その瞬間、俺は一気に反転し、ネズミの視界から離れるように全速力で逃げ出した。
「今しかない…この隙に逃げる!」
逃走成功、そして再び…
俺はネズミ族からなんとか逃げ切ることに成功した。廃材の陰に隠れ、彼らが遠ざかっていくのを確認する。心臓がバクバクと音を立て、全身に冷や汗が流れている。
「はぁ…はぁ…なんとか…助かった…」
今回の出来事で、俺はこの地下世界の厳しさを改めて実感した。ここは弱肉強食の世界だ。俺が何もしなければ、確実に食われて終わる。だが、逆に言えば、俺も生き延びるためには他の生物を利用するしかない。
「俺だって、ただ食われるだけの存在じゃない…」
この地下には、まだまだ他にも危険な生き物がいるだろう。だが、俺はゴキブリとしての本能を信じ、この世界で生き延びる方法を見つけるしかない。これから先、どんな敵と遭遇しようとも、俺は負けない。
「ふふ…ネズミ族も大したことなかったな!」
そう俺は自分の心に強がった言葉を言い聞かせながら、次の目的地に向かって再び歩き始めた。まだまだこの地下の探索は終わらない。次は一体どんな敵が待ち受けているのだろうか――。