再出発
2日後の朝、3人はここ連日そうしているようにエリーゼの墓の前に立っていた。
「母さん、俺たち今日帰るから」
「また来ます」
「形見の人形に移ってくれてるとは思うが、寂しいだろうな。でも安心だけはして欲しい」
息子たちも頷く。
「俺、もう大丈夫だよ。父さんと兄さんがいるから大丈夫。いっぱい勉強して、いつか父さんの会社で働けるようになるから。しっかり見てて」
「それは頼もしいな」
「僕も負けてられないね」
誰ともなくクスクスと笑い始める。
「次は今より良い報告が出来るように、私達3人支え合って生きていくよ」
「待っててね……あれ?兄さん?」
隣で1人何か考え込んだ顔をして黙る兄を見る。フラットは何やら呟いた。
「今より良い報告……ね」
「……???」
アルトは訳が分からないという顔をするが、テセウスは何かを察したように黙って微笑む。
フラットは構わず腕を大きく伸ばして深呼吸した。
「さて、行こうか」
「うん、そろそろ出発した方がいいな」
「???兄さん??」
フラットはわざとらしく無視してスタスタと歩いていく。アルトは不審そうな目で兄を見ながらついて行く。
「ねえ何今の!何か隠してる?ねえ!兄さん!無視するなよ!ねえってばー!」
そんな息子たちの背中を見てテセウスは笑いが堪えきれない。
「ふふっ……いや、すまないね。君も気になるかもしれないが……いや、君なら察しているかな?まあ本人はもう少し隠しておきたいようだから、待っていて欲しい」
少し呼吸を置いて、改めて挨拶をする。
「じゃあ、またな。エリー」
『行ってらっしゃい』
「……!」
テセウスは目を丸くした。
今、かすかに……気のせいだろうか?
テセウスは何かを言いかけたが、押し留め、穏やかに
「ああ、行ってくるよ」
そう言って手を振りながらエリーゼの墓を後にした。
また少し後ろ髪を引かれそうになるも、グッと歯をかみ締めて歩みを止めるのをやめない。
(行ってらっしゃいと言われたんだ。帰ってはいけない。私は君との息子達と共に往く)
テセウスは一歩一歩を踏みしめる。
朝露でぬかるんだ土の感触すら今は愛おしい。
子ども達は随分前で待っていて、アルトは大きく手を振ってテセウスを呼んでいる。
「ああ、今行くよ!」
テセウスは少し早足になって息子たちの元へと歩を進めていく。




