表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
響く海 (旧題;見知らぬ兄と1ヶ月)  作者: 揚羽もちよ
49/49

再出発

2日後の朝、3人はここ連日そうしているようにエリーゼの墓の前に立っていた。


「母さん、俺たち今日帰るから」

「また来ます」

「形見の人形に移ってくれてるとは思うが、寂しいだろうな。でも安心だけはして欲しい」


息子たちも頷く。


「俺、もう大丈夫だよ。父さんと兄さんがいるから大丈夫。いっぱい勉強して、いつか父さんの会社で働けるようになるから。しっかり見てて」

「それは頼もしいな」

「僕も負けてられないね」


誰ともなくクスクスと笑い始める。


「次は今より良い報告が出来るように、私達3人支え合って生きていくよ」

「待っててね……あれ?兄さん?」


隣で1人何か考え込んだ顔をして黙る兄を見る。フラットは何やら呟いた。


「今より良い報告……ね」

「……???」


アルトは訳が分からないという顔をするが、テセウスは何かを察したように黙って微笑む。

フラットは構わず腕を大きく伸ばして深呼吸した。


「さて、行こうか」

「うん、そろそろ出発した方がいいな」

「???兄さん??」


フラットはわざとらしく無視してスタスタと歩いていく。アルトは不審そうな目で兄を見ながらついて行く。


「ねえ何今の!何か隠してる?ねえ!兄さん!無視するなよ!ねえってばー!」


そんな息子たちの背中を見てテセウスは笑いが堪えきれない。


「ふふっ……いや、すまないね。君も気になるかもしれないが……いや、君なら察しているかな?まあ本人はもう少し隠しておきたいようだから、待っていて欲しい」


少し呼吸を置いて、改めて挨拶をする。


「じゃあ、またな。エリー」


『行ってらっしゃい』


「……!」


テセウスは目を丸くした。

今、かすかに……気のせいだろうか?

テセウスは何かを言いかけたが、押し留め、穏やかに


「ああ、行ってくるよ」


そう言って手を振りながらエリーゼの墓を後にした。

また少し後ろ髪を引かれそうになるも、グッと歯をかみ締めて歩みを止めるのをやめない。


(行ってらっしゃいと言われたんだ。帰ってはいけない。私は君との息子達と共に往く)


テセウスは一歩一歩を踏みしめる。

朝露でぬかるんだ土の感触すら今は愛おしい。

子ども達は随分前で待っていて、アルトは大きく手を振ってテセウスを呼んでいる。


「ああ、今行くよ!」


テセウスは少し早足になって息子たちの元へと歩を進めていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ