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第9話

私は……ずっと独りだった。

別に独りが好きだったわけじゃない。だけど、それが一番いいんだと……ずっとそう思ってた。


私は厄介者だった。私がそばにいるとみんなが迷惑するから、誰とも関わらないようにしてた。でも、それは言い訳だったんだと思う。みんなが私を怖がって遠ざけたんじゃない。私が自分から遠ざかったんだ。周囲の人たちが交わす、上辺だけの会話……気持ちと言葉が噛み合っていない会話を耳にする度……みんながひどく不気味な存在に見えた。そのままそこにいると、みんなを嫌いになっちゃいそうで……だから私は独りの世界に逃げ込んだ。


それは本当に……正しかったのかな……


========================================


(なんだかあったかいな……あれ、私何してたんだっけ?)


「お、落ち着いたか?き、気分とか悪くないか?」


裏縫が泣き止み、悠里の胸から顔を上げると、すぐ目の前にオロオロしている悠里の顔が映った。

裏縫は悠里に抱きつきながら泣いたことを思い出し、恥ずかしさで動揺して顔を赤らめたが、悠里が狼狽している様子を見て、なんだか逆に落ち着いた。


「ふふっ……うん、もう大丈夫。その……ありがとう」

「お、おう、別にいいよ。それより…本当に大丈夫か?」

「うん。大丈夫。心配してくれてありがとう」

「そ、そうか。なら良かったよ」


裏縫が表情豊かとまでは言えないが、先ほどに比べ幾分か柔らかい微笑みを浮かべているのを見て、今度は悠里が動揺した。


「ちょっと悠里。なに芽依を泣かしてんのよ」

「いやいやいやいや、俺何もしてねえよ!」


木原が悠里をジト目で見ていた。


「芽依………?」

「あ、私あなたと仲良くなりたくて……。えっと、ダメだった?」

「だ、ダメじゃない!!あ……む、むしろこっちから頼みたいくらい」


裏縫がチラチラと顔を伏せた状態から、木原の顔色を伺うようにしていると、木原が額を抑えながら、へなへなと座り込んだ。


「おい、どうした?大丈夫か?」

「なにあの可愛い生き物……」


木原も裏縫の可愛さにやられたらしい。


「おい、お前が返事をしないから裏縫が不安そうにしてるぞ」


よだれを垂らしながらあまり人に見せられない顔をしていた木原は「はっ!」と声を上げた後、裏縫いのそばまで行って話しかけた。


「じゃあ決まりね!これからよろしくね、芽依」

「う、うん、よろしく。……あ、杏里」

「はうっ!」


木原は胸を押さえた後、崩れ落ちた。とても幸せそうな気色悪い笑顔を浮かべていたので、悠里は無視することにした。


「えっと……他のみんなも、これからはもっと話しかけてくれると……嬉しい」

「おう、改めてこれからよろしくな裏縫」

「うん、よろしくね。裏縫さん」


悠里と朝比奈が返事をした以外、全く返事が聞こえてこなかったので、疑問に思った悠里がクラスメートの方へ振り返ると、全員が木原と同じ類の笑顔を顔に浮かべて倒れていた。


ーーーこのクラスはもうダメかもしれない


悠里の口から長いため息が出た。


========================================


話を進めるために藤野が全員を叩き起こした後、赤い髪の男子が話し出した。


「うし、じゃあ次は俺だな。名前はもう言ったが、改めて。火神和也だ。能力名は「炎の魔手(フレイムハンズ)」だ。見てろ」


火神は言葉を切るなり掌を上に向けたまま悠里の前に差し出した。すると一瞬だけ、ゴウッ!っと手から火柱が噴き上がった。


ーーー何それカッコイイじゃねーか!!羨ましい!


「すげぇカッコイイな!そういう能力は憧れる!」

「へへっだろ?」


悠里が手放しで褒めると火神は満更でもなさそうな顔をした。


「ただこれ、手からしか出ないし、炎出すと自分も熱いんだけどな。ははっ」

「そうなのか、ははは……は?え、どういうこと?意味分からないっていうか叶うならあまり分かりたくないんだけど」

「調子に乗って使いすぎると手が火傷するってことだな」

「ふぅー………やっぱ使えねえ!!!」

「へへっだろ?」

「へへっだろ?っじゃねえよッ!!なんでさっきと同じ反応なんだよ!何その自己犠牲?攻撃の度に命燃やしてんのか?そんなもん危なっかしくて使えたもんじゃねえよッ!」


相手を攻撃する前に自分を攻撃してちゃ世話ない。


「(やべえマジで使えない奴しかいないんだけどどうしよう)」

「ふっふっふ…そこの編入生君。誰か忘れていないかい?」


悠里が振り返ると、机の上に仁王立ちする人影があった。


「えっと……誰だっけ?」

「はああ!?何忘れてんの!?このクラスで一番初めに自己紹介したじゃん!主に二話で!」

「あ、思い出したよ。たしか平崎だったな。悪い悪い」

「全然違うっていうか一文字もかぶってないんだけど!?よく言い切れたね!?しょうがないなぁ……じゃあまた名前から言うよ。出席番号4番如月花音。能力名は「瞬速(ソニックムーブ)」。今度はちゃんと覚えてよ?」

「ああ、如月だよな?もちろん覚えてたよ。………なんだその目は?覚えてたよ。……覚えてたっつってんだろ。さっきのは……あれだよ、俺なりの冗談だよ、場を和ませるための小粋なジョークってやつだよ…………ごめんなさいすみませんガチ忘れでしただからその目をやめて」


周囲から降り注ぐジト目の嵐に悠里は耐えきれなかった。


「じゃ、じゃあ詳しい能力の説明も頼む」


あからさまな話題転換に如月は深くため息をついた後、口を開いた。


「今度はその役立たずな耳でよく聞いて脳みそに刻み込んでね?私の能力は名前の通りすごく速く動ける能力だよ。欠点は、動きが速すぎて全く制御できないことだね」

「制御できない?急に止まったりできないってことか?」

「うーん、そうだね。後は思った通りに曲がれなかったりするかな。曲がろうと思った瞬間にはもうその場所通り過ぎてるんだよね……」

「なるほど、なるほど……つまりやっぱゴミ能力ってことだな」

「ご、ゴミって言うな!この能力結構凄いんだよ?校門前の直線に入った瞬間に使うことで何度遅刻をくぐり抜けてきたことか………」

「まず、そんな使い道が一番に思い付く時点でゴミなんだよ!」

「ま、またゴミって言ったぁ!うぅ……なら、そういう君のゴミ能力は一体なんなのさ!」

「ゴミって決めつけてんじゃねえ!そ、それはまた俺の番になったら言うよ」

「ふーん、わかった。今は見逃してあげるよ」

「じゃ、次は私の番ね」


木原は、机に軽く腰掛けながら悠里に話しかけた。

次話投稿は未定です

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