第20話「"鬼"炎万丈、交錯する拳」
なんかわざわざツイ垢作ったりとかしてやってましたが(大して動かしてないのは申し訳)大変長らくお待たせしました、ですかね。とりあえず、読んでいただければありがたいです。
拳を構えた俺を見た鬼の口元が笑みの形に歪む。それを見る程度の時間はあった。
前に出した左足の先から魔力を一瞬放出し、土煙を巻き上げる。俺と鬼、双方の視界が覆われると同時に足を踏み込んだ。
魔力や空間の揺らぎから俺を察知したであろう鬼が、紫炎を纏った拳を腰を捻りながら振り上げ、俺を迎撃せんとする。地を這い飛び上がるかのように突き出されたその拳は、狙い通り俺の胸の位置を強かに打ち付ける。
「?!」
そう思っていたであろう鬼は己の拳が土煙だけを切り裂き虚空に踊った事に一瞬の困惑を浮かべたようだった。その困惑も次の瞬間に発生した後頭部への強い衝撃で掻き消されたようだったが。
「まずは1発、察知能力自体はずば抜けてる訳でもないようだな」
鬼の背中側から跳躍し蹴りを放った俺は奴の能力を分析しつつ、動きを注視する。
攻撃の方向と自分の感覚との差異に若干の戸惑いを見せつつも、晴れた視界を前に次は逃さないと言わんばかりに体に纏う魔力が高まっていく。
「魔力感知は逆効果だと思うけどな……『日暈』!」
俺の手元から放たれた魔力光が空気中の塵に乱反射し、ダンジョンの中に太陽の如き輝きを一時的に顕現させる。
この光は全て俺が放った魔力光だ、この光の中で俺を魔力感知するというのは余程の魔術師でない限り無理だ。そしてこの鬼は不運にもそうではない。
「ーーーーーーー!!!!!!」
視力、魔力器官、この世界での戦闘において多くを占める知覚脳力を一瞬にして塗り潰され、声にならない叫び声を鬼は上げる。反射した光の波が鬼へ向かうのに紛れて駆ける。
背後から迫ったより大きな魔力に反応し、紫炎を散らしながら裏拳を虚空に打ち込む、1度目の経験からこれを予測していたのであろう奴は、ブースターのようにさらに紫炎を噴射し加速しつつ裏拳を一回転させる。
バキン、と鬼の拳が当たった場所から確かな質量を持った破砕音が発生する。
刀剣生成をベースにした実体を持った魔力塊、それを殴り飛ばした腕が伸び切った所を狙い、肘関節部に胴回し回転蹴りを放つ。
「ガアァァァァァァッッッ!」
二度も攻撃を避けられ、おまけにカウンターを貰った怒りもあるのだろう、明らかな怒声。
油断はしない、薄まった光の中でどうやら感覚が戻って来た奴と視線が交わる。
一歩。俺に先手を取らせはしないと、鬼が足を踏み出した。
二歩。彼我の距離は10mを切る。次の一歩が衝突の合図になるだろう。
───三歩。
「ッ……!」
一瞬前まで前方にいたはずの巨体が背後に現れ、拳を突き出す。悠長に振り向いての迎撃や防御が間に合うタイミングではない、残された選択肢はそのまま殴られるか、回避のみ。
素直に殴られてやる理由もない。
「『バックブラスト』」
背中から発生した魔力はその反動で俺を前に押し出すと共に、鬼に爆風のごとく炸裂する。鬼の能力でダメージこそ負いはしないが仕切り直しには十分な間隙だ。
「『虚踏』か」
ウィズの力でスキルの効果自体は分かっている、実際に対峙した時にどうするかを予め想定できるのは大きなアドバンテージだな。
再び正面から睨み合い相対する俺と鬼。
今の一撃でも有効打を与えられ無かったことで、出し惜しみをするという事をやめたのだろう。鬼の背から延びていた3,4本目の腕が姿を揺らめかせ消える、タイマン仕様と言ったところか?さらにその体から滲み出ていた魔力が静かに収まり、やがてその身体と重なり合う。
スキル『纏魔』、その能力は身体の表面に纏った魔力で自身の肉体を強化するというシンプルなもの。同系統の一般的なスキルに『身体強化』が存在するが、この『纏魔』はその領域の遥か上に位置するある種の到達点とも言えるものだ。
纏った魔力は使用者の動きに合わせ、自在に各部位への最適な強化を及ぼす。地を踏め込めば足に、拳を突き出せばその拳先に、無論重点強化場所以外への魔力も、肉体全てへのバランスを突き詰めた理想の形に姿を変える。そして攻撃にもその特性を活かして対応する。
さながら反応装甲のように。
鬼の重心が僅かに沈み、敵である俺を打ち倒すための1歩が踏み出された。同時に音をさえ置き去りにしその姿が僅かな尾を引くように掻き消えた。
『纏魔』の使用、それによる動きの高速化、鬼は凡その人間がその動きを捉えられる限界の速度を越えたのだ。
あるいは、相手がこの眼を持つ俺で無ければ。
そう考えずにはいられない程の速さ、そしてその攻撃の鋭さだった。
「『克時眼』」
それは流れ続ける時をすら切り取り、ひとつの瞬間として認識する速度特化の眼、その力。
これを持ってしてかかればそれこそ俺を死に体にしたあの化け物女や、単純な速度だけじゃない攻撃で無ければ有効打にすることさえ叶わないだろう。
問題があるとすれば俺の身体の速度自体は変わらないことと1秒につき1万ものMPがコストとして必要になることか。
だから次に俺自身の速さをどうにかする。
「『疾風迅雷』」
疾く迅く、風雷の如き激しさを持って。
互角というわけにはいかない、2割落ち程度の差がまだ俺と奴にはある。
だがそれがどうした、相手の動きを全て読む事ができる俺にその差はハンデとして働かない。
極まった一打はそれだけで奥義足り得る、ふとそんな言葉が脳裏に浮かんだ。
小細工一切無し、正面からの水月を突く拳撃だった。
物語の勇者なら真正面から受け止めるのだろうか、そんなことを考えながらその拳の殺傷範囲からほんの少しだけ身を後ろに引いた。少なくともこの身で正々堂々と受け止める気にはならない脅威は感じた。
ただの攻撃じゃこいつには通用しない事はわかっている、有効打を当てるその為に高速領域までこいつを引き摺りこんだんだ。
後ろに下がると同時に俺が構えていた拳が象るは、矛。ただ無骨な暴力の気を纏う拳だ。
無論鬼の方も俺の動き自体には気がついている。だが分かっているだけじゃまだ足りない、その身体は必殺の一撃を放つ為に必要な道程を歩み始めているから。
止まる訳にはいかないだろう、多大な隙を晒すのは明らかだ。
さらに踏み込むか、否。必殺の一撃は凡百の拳に成り下がる。
己が全てを賭けたその行く末を信じ振り抜くのみ、鬼にの殺された道は1つ。
詰みだ。
『貫迎』
最高効率のカウンターは拒絶ではなく、まるで迎い入れるかのようにその威力の全てを利用し。反転、貫く。
腹の一寸先で振り切られた鬼の拳、それに秘められた威力は触れてもいない俺の服を正面から弾き飛ばし、拳から生じた風で土煙さえ巻き上がる。
正真正銘一撃必倒の絶技であったことは疑うまでもない。
だが相対する敵を穿ったのは俺の拳だ。
「自分の技を信じて振り切ったのは決して間違いじゃなかったよ、相手が悪かったな。真っ当に打ち合ってお前に勝てるやつはそういないさ」
「グガ……ガァア……ァ……」
崩れるように倒れた鬼は、全く力の篭もっていない握り拳を俺の胸に押し付けてどこか澄んだ顔で消えていった。
決着だ。鬼は俺に1歩及ばず、俺はその1歩を手にしただけの、単純な話。
「まったく、ちょっと調べて様子を見ようと思ってただけなのになんでこうなるかねぇ……ん?」
鬼が消えたその場所に光る物を見つけ、身を屈めそれを拾う。
鬼のレリーフが付いたリストバンド……?ウィズにアクセスしそれを視る。
『拳鬼のリストバンド』
生涯を己が肉体の修練に費やした鬼の魂が込められたリストバンド。『拳鬼』のスキルを装備者に付与する。さらに格闘攻撃によるダメージに補正極大。
『拳の行く末に栄光を』
「……は?」
なにこのチート装備は。
《レベルアップしました》
追い討ちか?
「とりあえず、今日は帰るか」
他になにか周囲に変わったものは無いか確認し、俺はリオンの待つ宿へ向かうのだった。
ブクマとか評価お願いします!って言うのハードル高いなと思ったけど他の人の読んでたら結構みんな書いてたので僕も書きます、投稿遅いですけど良ければそこら辺お願いします
自分のやついじくりつつ他の方の作品とかも結構読んでるんですけど、毎日更新してる人って本当偉いですよね。
自分なんかはテンション気分で全然書ける文字数が変わりますし、高校出てから本当に脳が文を吐き出す能力が落ちた気がします。
次もまたお待たせするかも知れませんが(そこは早く書け、と言ったところですが)他の面白い作品読みつつこんなのあったなくらいに待ってもらえれば全然いいので、ええ。
それはそうとアクセス解析を久しぶりに確認したらPVが27万でアクセスは10万越えててちょっとビックリでした。結構読んで頂いてるんですよね……ほんとなんかありがとうございます。
とりあえず、また更新するのでその時お会いしましょう!




