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『戦闘力ゼロのテイマー、なぜか神様に気に入られながら気づいたらギルド最強になってた』~ハズレ職だと笑われた俺、神獣を仲間にしてしまった件~  作者: akaike


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第115話「Stray Wolves初戦」

陸は、神獣たちを引きつれて、観客席の一角に腰をおろした。


眼下の試合場では、Stray Wolves の五人と柚希が、ちょうど入場してくるところだった。宗介が、剣を肩に。大和が、大盾をかまえて。雪乃、静、ハル、そして柚希が、それぞれの得物を手に、堂々と歩いてくる。


「がんばれー!」陸が手を振ると、宗介が、こちらに気づいて、にっと笑い、軽く手をあげた。


反対側の入場口からは、対戦相手の“月夜の梟”が、姿をあらわした。ローブをまとった、落ちついた雰囲気の一団だ。同じノクターン連邦の、中堅ギルド。決して、弱くはない。むしろ、連携のとれた手堅い戦い方をすることで、知られているらしかった。


「さあ、予選一回戦! 東の陣営、Stray Wolves 対、月夜の梟!」実況の声が、会場に、響きわたる。「両者、位置について……試合、開始ぃっ!」


どおん、と 開始を告げる、光の狼煙があがった。


先に動いたのは、月夜の梟のほうだった。前衛がじりじりと間合いをつめ、後衛の魔導師たちが、いっせいに詠唱をはじめる。手堅く、陣形を組んでの、じわじわとした攻めだった。


だが。


「悪いな。うちは、そういうの、待ってやる柄じゃないんだ」


宗介が、地を蹴った。


ザンッ――! 神速の一閃が、月夜の梟の前衛を、あっというまに切り崩す。かまえる間も、与えなかった。


「なっ……速い!」


動揺する敵陣へ、すかさず、大和が突っこむ。竜の紋様の浮かぶ大盾で、正面から魔法をドゴォッと受けとめ、味方の壁になる。その堅さは、まるで、動く城壁だった。


「静! いけるか!」


「……もう、撃ってる」


静が、ぼそりとつぶやいた、その瞬間。無詠唱の爆炎が、ドドドッと、敵の後衛をまとめてなぎ払った。詠唱に頼らないその一撃は、あまりに速く、あまりに静かだった。


「う、うそだろ……後衛が、一瞬で……」


月夜の梟が、あきらかに、浮き足だっていた。手堅いはずの連携が、Stray Wolves の圧倒的な速さの前に、まるで追いついていない。


観客席では、どよめきが、広がっていた。


「なんだ、あのギルド……つよっ」


「あれが、噂の Stray Wolves か……」


陸は、そんな声を聞くともなしに、聞きながら。ただ、うんうん、とうれしそうにうなずいていた。みんなが、生き生きと戦っている。それが、なにより、うれしかった。


「みんな、すごいなあ」


肩の小夜も、まるで我がことのように、得意げに尻尾を振っている。


試合場では、ハルが、影のなかをするりと移動し、敵の退路を次々と断っていた。逃げ場を失った月夜の梟が、じりじりと、追いつめられていく。そして、その傷を、雪乃の回復が、片っぱしから消していく。もはや、勝負は、見えていた。


とどめは、柚希だった。


高台の一角に陣どった柚希が、すう、と息をとめる。そして、三本の矢を同時につがえ、放った。ヒュンッ――! 三条の光が、敵の残った三人の、それぞれの武器を正確に射抜く。得物を失った敵は、もう、なすすべがなかった。


「……そこまでッ! 勝者、Stray Wolves ぅっ!」


わあっ、と会場がわいた。


あざやかな、圧勝だった。開始から、いくらも経たないうちの、完璧な勝利だった。


「よし、柚希、ナイス!」宗介が、拳をあげる。


「今のは、みんなのおかげだよ」柚希も、うれしそうに、弓をおろした。


観客席の陸も、立ちあがって、精いっぱい手を振った。


「みんなー! すごかったぞー!」


その屈託のない声に、宗介たちが、こちらを見あげて笑い、手を振りかえす。陸は、心の底から、しあわせだった。自分は、まだ、一戦もしていない。それでも、仲間の勝利は、自分のことのようにうれしかった。


だが、そんな、あたたかい観客席の空気は。


すぐそばの、他のプレイヤーたちにとっては、また少しちがって見えていたらしい。


「……おい。あの、応援してる兄ちゃん」


「ああ。神獣、六体、連れてる……」


「あれが、“調整中”の、例の一人ギルドだろ……あんなの、どうやって相手すんだよ……」


ひそひそと、そんな声が、あちこちでささやかれていた。だが、当の陸は、まるで気づいていない。ただ、勝った仲間に、うれしそうに手を振りつづけていた。


こうして Stray Wolves の初戦は、鮮やかな勝利で幕を閉じた。お祭りの熱気は、まだまだ、冷めそうにない。次の試合を、待つ、会場のざわめきのなかで。陸は、のんびりと、次はどの屋台に行こうかと、考えていた。



ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


いよいよ、初めての試合。今回も同じお祭りの日の続き(ログアウトなし)で、Stray Wolves の初戦をゆっくり描きました。陸は観客席から応援、宗介たちと柚希の見せ場です。


手堅い連携が持ち味の中堅ギルド、月夜の梟。でも、Stray Wolves の圧倒的な速さの前には、連携を組む間もなく。宗介の神速、大和の鉄壁、静の無詠唱、ハルの影、雪乃の回復、そして柚希の三射でとどめ。あざやかな圧勝でした。


そんな仲間の勝利を、自分のことみたいに喜んで、精いっぱい手を振る陸。……ですが、その足もとには神獣が七体。まわりのプレイヤーは「あの“調整中”の一人ギルド、どうやって相手すんだよ」と、別の意味で青ざめていたり。当の本人は、まったく気づかず、次はどの屋台に行こうかと考えているのでした。


次回も、ゆっくり。個人戦のほう(柚希の弓部門)にも、そろそろ足を運んでいきます。星マークとブックマークで応援していただけると、とても励みになります。

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