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『戦闘力ゼロのテイマー、なぜか神様に気に入られながら気づいたらギルド最強になってた』~ハズレ職だと笑われた俺、神獣を仲間にしてしまった件~  作者: akaike


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第109話「受付でさえ、無双する」

串を食べ終えるころには、みんな、すっかり上機嫌になっていた。


「いやあ、まいったな」大和が、腹をさすりながら、しみじみと言う。「ゲームの飯で、こんなに満たされる日が来るとは」


「食べすぎだよ、大和くん」雪乃が、笑う。「まだ、お昼みたいなものなのに」


味がわかるようになっただけで、この世界は、まるで色が変わったようだった。屋台のあいだを歩くだけで、次から次へと、うまそうな匂いが鼻をくすぐってくる。焼きたてのパン。甘く煮つめた果実。香ばしい、なにかの揚げもの。そのどれもが、いまや本物の味を、約束していた。


「これは、太るな」ハルが真剣な顔でそんなことを言うので、みんな、また笑った。


そんなふうに、ひとしきり、お祭りを堪能したあとで。


「そろそろ、受付、行ってみるか」宗介が、言った。「参加登録しておかないとな」


会場の一角に、参加受付の窓口が、ずらりと並んでいた。ギルドで出る者、個人で出る者。それぞれが、思い思いの列に並んでいる。


陸たちが列に加わると、前後のプレイヤーが、そっと道をあけた。うしろに神獣をぞろぞろ従えた一団だ。無理もない。だが陸は、それも“お祭りだから、みんな親切だな”くらいにしか、思っていなかった。


「俺たちは、ギルド登録だな」宗介が、Stray Wolvesの一同を、見まわした。「陸も、それでいいか?」


「うん、まあ……」陸は、少し、考えこんだ。


自分の場合、どうなるのだろう。ギルドで出れば、宗介たちと、いっしょに戦うことになる。だが、そうすると、うしろにいる神獣たちやガロード、シィラは、どういう扱いになるのか。


「なあ」陸が、受付の係員に、たずねてみた。運営が用意した、案内役の存在だ。「俺、このみんなと、いっしょに出たいんだけど。神獣とか、この人たちも込みで」


その言葉に、係員が、陸のうしろへ目を向けた。


そして――固まった。


七体の神獣。老騎士のガロード。古の術師シィラ。それらが、当然のように、陸のうしろにずらりと控えている。ひとりのプレイヤーの後ろに従える戦力としては、あまりにも、常軌を逸していた。


「……し、少々、お待ちください」


係員の声が、あきらかに、うわずっていた。


しばらくして。受付の奥から、別の係員が、あわてた様子で飛んできた。どうやら、上のほうに、確認を取っているらしい。ひそひそと、なにやら、深刻そうに話しこんでいる。


「……なんか、もめてるな」大和が、首をかしげた。


「陸くんの登録、そんなに、ややこしいの?」雪乃が、心配そうに、様子をうかがう。


当の陸は、きょとんとしたまま、その騒ぎをながめていた。ただ、みんなといっしょに出たい。それだけの、ささやかな願いのはずだったのに。


やがて、係員が、意を決したように戻ってきた。


「お客さま」係員は、慎重に、言葉を選んだ。「たいへん申し上げにくいのですが……お客さまの、その戦力は……一般的なギルドの規定の範囲を、大きく超えておりまして」


「はあ」陸は、いまいち、ぴんとこない顔だ。


「ですので……その、運営で、あらためて判断させていただく、かたちに……」


しどろもどろの説明を、陸は、ふんふんと聞いていた。要するに、なにか手続きが、ふつうとはちがうらしい。


「まあ、なるようになるんじゃないか」陸は、あっさりと、そう言った。「急いでないから、ゆっくりで、いいよ」


その、のんきな返事に、係員は泣きそうな顔になった。


「相変わらず、陸のまわりだけ、大ごとになるなあ」宗介が、こらえきれずに、笑いだす。


「うちのリーダー、受付でさえ無双するのか」ハルも、げらげらと笑った。


まわりで順番を待っていたプレイヤーたちも、この一部始終を見て、ざわめいていた。あのソロっぽいのは、いったい何者なんだ、と。噂の“正体不明のギルド”の正体が、じわじわと、この会場に、広まりはじめていた。


陸は、なにがおかしいのかよくわからないまま、みんなにつられて、へへ、と笑った。


一方、遠く離れた開発室では。


「三浦さーん!」こはるの、悲鳴のような声が、響いていた。「例の子、受付で、システムがフリーズしかけてます! 一プレイヤーの戦力欄に、神獣七体と規格外の同行キャラクターが二体、ぶらさがってて……登録の判定が、追いつかないんです!」


三浦は、モニターの前で、頭を抱えていた。だが、その口もとは、なぜか笑っていた。


「……だろうな。あいつは、いつも、そうだ」三浦は、ため息まじりに、つぶやいた。「わかった。あの子だけ、特別枠を、用意しよう。一人で、ひとつのギルド扱いだ。……そうでもしないと、システムが、もたん」


その言葉が、のちに、どんな騒ぎを引き起こすことになるか。


このときの陸は、まだ なにも知らなかった。ただ、お祭りの熱気のなかで みんなと笑って、次の屋台の匂いに鼻をひくつかせているだけだった。



ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


今回も、同じお祭りの日の続き。ログアウトは挟まず、会場の中をゆっくり歩いています。


味覚アップデートのおかげで、屋台の飯が本物のごちそうに。大和はさっそく食べすぎ、ハルは「太る」と真剣な顔。……そんなのんびりした空気のまま、参加受付へ。


そして案の定、陸のところで、受付が固まります。神獣七体に、老騎士と術師。一プレイヤーの戦力としては、どう見ても規格外。開発室ではこはるが悲鳴、三浦は苦笑いで「あの子だけ、特別枠を用意しよう。一人で、ひとつのギルド扱いだ」。……“一人でギルド”の始まりです。当の本人は、なにが起きてるのか、まるでわかっていませんが。


急がず、ゆっくり。次回も、このお祭りの中を、のんびり歩いていきます。星マークとブックマークで応援していただけると、とても励みになります。

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