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最終話 明日

 もう二度と手に入らぬ朔が過ぎ去った後、繰り返された鐘の音で皆が席に着いていた。


 そして、遡行さながら13番が立ち上がる。


「先生ェ!」


「はい。13番、どうされました」


 だが、反骨精神が粉々に打ち砕かれたのか、酷く従順な猿擬きが高々と腕を突き上げ、

新たなる仮面に薄ら笑いを貼り付けていた。


「構いませんよ、廊下は走らずにお願いしますね」


「有難う御座います‼︎」骨の髄まで吸い取られた生ける屍は後腐れなく姿を消していった。


 そのまま教師は無意識に駆り立てられた、14番の机上へと引き摺るように足を運んだ。


 火種にも呼べる魂を儚く風に揺らがせて。


「差別は無くなりましたか?」


 犬一代に狸一匹の本来、相容れぬふたりは巡り合わせを立て続けに果たし、交差する。


 瞳で見つめる教師と魂を感知する生徒が。


 一縷の淡い光が灯された虚ろな一目には、

己が肉体にほんの僅かな影響も及ぼさぬ映像だけのつぶさな雫をとめどなく溢れ落とし、痛いげな仔猫ながらに溢れんばかり円な眼差しを上目遣いで向け「滅んでしまいました」


 そう依然として手を拱いて、告げられた。


「原因はわかったのかい?」


「先生の助言通りに遍く人々を特殊な施設に収監させ、自分は敢えて一部の人間の管理下で順に分け隔てなく一人一人の皮を剥ぎ、目を抉り取り、声帯を奪い取って、あらゆる武器を削ぎ落とし、延命させる道を選びました」


「ほう」


「ですが……生命の渇望が失われてしまい」


「『絶滅してしまったと』」


「はい」


「――――な、なん、何千年も、何千年も必死に、必死に築き上げてきたのに、っっ!」


 途切れ途切れに掠れた機械的な声を強く震わせ、その余波を全身に染み渡っていった。


「大丈夫さ。まだ新しいのがあるから、今度こそ、理想を叶えた世界を創り直せばいい」


「他の方々の中には、色や見た目などの主な差別の対象とされる固定概念や個々の特徴を平等に完全に抹消させた後、子どもたちのみが存在する世界に棲まわせるなどの大胆な対策を取り、安寧を保っているを聞きました」


「そうだね、そういった考えもあるんだ。でも14番がどう選ぶかは14番が決めればいい。正解とは必ずしも一つとは限らないからね」


「とても……勉強になります。ですが、今回のことで一つだけわかったことがあるんです」


「差し支えなければ、訊いてもいいかな?」


「はい、それは――――」


 この世ではごく頻繁に生じるただの日常、そう自然と神秘に満ち溢れた両天秤の上で。




 で、でぇっ、でで、&/?)"?"_€°#==○○^:。


「どうだ? 取れたか?」


「えぇ、少々苦労しましたが」


 私に命を与えた親と呼ぶべき存在達が告ぐ。


「にしても、俺らが動物様と同程度とはな。お偉いう、いや、神との待遇が雲泥の差なのは解るが、機械人形とも然程、変わらんとは」


「あまり、そういった言動をされますと異端審問に掛けられますよ」


「なぁに、気にすることはない。我々以外に、この会話を聞く者はいないんだからな」


「し、しかし!」


「そんなに堅くてはこの仕事は務まらんぞ」


「っ、……はい」


「長くいれば、お前もいずれわかるさ」


「そうはありたくないものですね。それで文はどうでした?」


「やはり差別的表現も多く、常用するにはまだまだ試行錯誤も足らんし、費用も無駄に掛かる。これではとても使い物にはならんな」


「そうですか」


「まぁ、所詮は機械だからな」


 私は、私は、彼等に、人間に与えられた全ての仕事を完璧にこなしたのに、筈なのに、此奴に此奴等に出来損ないと踏み躙られた。


 ただ、機械だというだけで……。

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