灯火
「……よっしゃ!」
目的のファイルを見つけ出す事に成功した男は思わずガッツポーズをする。
「隊長! 見付けました!」
〈了解しました。では至急指示されたアドレスへ送って下さい〉
「了解」
イヤフォンから上官に相当する女性の澄んだ声が聞こえた。上官といっても彼よりはいくらか年下の少女である。
男は事前に知らされていたアドレスへファイルを送信した。敵軍———彼が今潜入している基地を有する敵対組織———の補給拠点がまとめられているリストである。これを入手出来れば、この戦争を有利に進められるのは間違い無い。
「送信完了であります」
〈了解。少し待っていて下さい〉
少女の指示の下、男はしばらくその場に待機した。彼の仲間は今この基地内と、少し離れた街の方で騒ぎを起こしており、敵兵はそれらの鎮圧に向かっているため基地内のあちこちには隙が生まれている状態だった。
やがて通信回線が再び開いた。
〈確認が取れました。ミッション・コンプリートです〉
「了解であります!」
〈それでは、これからすぐに私もそちらに向かいます〉
「よろしくお願いします」
これでもう安心だ。彼女が来れば数分の内にこの基地は壊滅するだろう。何せ彼女は戦場で無敵を誇るのだから。
五分も経たない内に彼女の爆撃が始まった。
「ひゃっほう! 勝利の女神が来てくれた」
まだ脱出途中だった彼は屋外にも関わらず思わず声を上げる。炎が何もかもを燃やしていく。空から降ってくる爆弾が、あらゆる物を吹き飛ばしていく。
「うわっ!」
目の前の建物が一瞬で崩れ落ちた。立ち止まっている間にも今度はまた別の方向で爆発が起こる。
「……ほ、ほんとに何もかもぶっ壊してんな……」
しかし今の爆発があった方向を見て彼はぞっとした。あちらには確か仲間の兵士が何グループか向かっていたはずだ。
すかさず男は通信を入れる。果たして繋がるかはわからないが。
「た、隊長!?」
〈……はい〉
繋がった。
「アルフレドであります! あの、作戦通りですと先ほど隊長が爆撃された辺りにはまだ友軍が残っている可能性があるのですが!」
〈ああ、まだいたのですね〉
「え」
〈その点は理解しています。それがどうかしましたか〉
「そっ、それがどうかしたかって……我々は……」
〈目的が達成され次第私が爆撃をしかけるという作戦内容だったはずです〉
「だっ、だから我々は……」
〈あなた方の帰還は本作戦において達成条件には入っていません。上層部もそれは承認しています〉
「なっ……!」
〈それでは、生きていたらまたお会いしましょう。OVER〉
「ふっ……ふざけんな……」
直後、彼の視界は白い光で満たされた。