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そして、お姫さまは
森の片隅に小人族が暮らしていました。古くて大きな木のうろにあれこれと細工を施した立派なお城もありました。
お城に住むお姫さまはお年頃で、よその森にすむ小人族の王子さまたちから結婚を申し込まれることもありました。お互いに会ったこともない者同士です。王子さまたちは、虫や鳥や動物たちからどこどこの森に年頃のお姫さまがいると聞いて、結婚を申し込んでくるのでした。
けれどもお姫さまには心に決めた人がいました。王子さまではないけれど、とてもとても大切な人です。
王さまとお妃さまもその少年に会うのを楽しみにしています。
ころころころころ……
お城の廊下を石ころの転がる音が響きます。
王さま、お妃さま、そしてお姫さまが待つ大広間へむかってきます。
お茶の時間です。お花の紅茶と果実のケーキが大きなテーブルに並んでいます。
お姫さまはもう狭いところに入りたがったりしません。だって、怖いものなどないのですから。あの石ころと、あの石ころを作った少年がいてくれるのなら。
大広間の扉が開かれました。
——さあ、お茶の時間です。
* おしまい *